血糖値スパイク(グルコーススパイク)は非常に個人差が大きいので、糖質をどれくらい摂ったらどれくらいのスパイクが起きるかは予想できません。
例えば上の図で、Eは赤い線がグルコース、緑の線がパンを食べたときの血糖値の変動を表しています。上のグラフと下のグラフはそれぞれ違う人の結果です。そうすると人によってグルコースの方が血糖値が上がりやすい人もいれば、パンの方が上がりやすい人もいます。
また、Gの黄色い線はバナナを食べたとき、青い線はクッキーを食べたときの血糖値です。ある人ではバナナで血糖値が上がるのに、クッキーでは反応がほとんどありません。またある人ではその逆です。
このように、人により非常に大きな差が認められます。今は死語になっているようですが、一時期GI(グリセミックインデックス)という言葉が良く使われました。これだけ個人差があるとGIなんて決められません。いかにGIが使い物にならない数値かがわかります。
食後血糖反応(PPGR)というもので比較してみても、個人差が非常に大きいことがわかります。
(上の3つの図はこの論文より)
上の図の青く塗られた部分の面積がPPGRで、食後2時間の血糖値の変動曲線の面積です。
(この下の図は全て原文より)
この研究では糖尿病のない327人の血糖値の反応を連続グルコースモニターで得られたデータを分析しています。Aの図はそれぞれ6人の人が同じ食事をしたときの血糖値の変動を2回測定したときのグラフです。同一人物であれば2回の測定において、同じような曲線を描いています。しかも人によってはピークの血糖値が20ぐらい違う人もいます。
しかし、それぞれの人の変動の仕方は全く異なっています。ピークの値も違えば、ピークを迎える時間も違います。
Bの図はPPGRと炭水化物量の相関を見ていますが、個々それぞれ違いが大きいことがわかります。
上の図は3大栄養素の割合とPPGRの関連を示しています。Aの横軸が炭水化物のパーセンテージ、Bの横軸がタンパク質のパーセンテージ、Cの横軸が脂質のパーセンテージ、Dの横軸が炭水化物とタンパク質の比、Eの横軸が炭水化物と脂質の比です。個々の血糖値の反応は様々ですが、平均してAに示すように、炭水化物が増加するとPPGRが増加しています。BやCに示すように、タンパク質と脂質とは関連していません。DやEに示すように、タンパク質や脂質に対して、炭水化物が増加すると、PPGRは増加しています。まとめると、単純にPPGRに関連するのは炭水化物だけであると言えます。当然ですね!
上の図のAとDは飛ばして、BとCを見てみます。Bの横軸が摂取エネルギー量、Cの横軸は炭水化物量です。エネルギー量が増加する、または炭水化物量が増加するとPPGRが増加すると単純に言えれば良いですが、このよう2つの図のように、ものすごい散らばりがあります。例えば炭水化物200gでPPGRが20くらいの人もいれば、炭水化物50gでPPGRが80の人もいるのです。
この研究者は血糖反応の予測ツールを開発し、それが優れているという内容を示したいと思うのですが、しかし、このツールは一般的に使用できないでしょう。
糖質を摂取すると血糖値は増加します。しかし、糖質をどれくらい摂ればどれくらい上がるかはわかりません。人それぞれです。また糖質を含む食材によっても違いますし、一緒に何を食べるかでも違うでしょう。
つまり、血糖値スパイクの程度は人それぞれ違うのです。だから、食後に自分の血糖値を測定する意味があります。自分なりにどれくらいの食事を食べたらどれくらいの血糖値になるかをある程度把握する意味があるのです。将来的にはAppleWatchなどやフリースタイルリブレよりももっと手軽な持続的に血糖値を測定できる機器が開発されるでしょう。そうすると、かなり自分の状態を把握しやすくなるでしょう。
しかし、現在はまだ難しい状態なので、できればときどき食後の血糖値を測定しましょう。できなければきちっと糖質制限をする方が良いでしょう。病院で1か月や数カ月に1回血糖値を測定することは全く意味がないとは言いませんが、血糖値スパイクについては全く何の情報も与えてくれません。
このスパイクが酸化ストレスとなります。自分でスパイクを小さくする努力をしなければなりません。
「Assessment of a Personalized Approach to Predicting Postprandial Glycemic Responses to Food Among Individuals Without Diabetes」
「糖尿病ではない個人における食物に対する食後血糖反応を予測するための個別化アプローチの評価」(原文はここ)