令和になり、日本中が不思議なほどお祭り騒ぎのようで、ちょっと違和感を感じていますが、天皇が亡くなっての改元よりも、このような明るい改元の方が良いのかもしれません。令和になり最初の記事はちょっと問題提起です。
必須脂肪酸として、オメガ3とオメガ6の多価不飽和脂肪酸があります。どちらも人体には必須なのですが、オメガ3は抗炎症性があり、健康的だと考えられています。一方オメガ6は炎症を促進すると考えられており、また、現在の食事ではこのオメガ6を摂取し過ぎていると考えられており、悪者扱いです。私も単純にオメガ6の過剰摂取は悪いと思っていました。
しかし、本当にオメガ6は悪いのでしょうか?(図はWikipediaより)
私の認識が正しければ、オメガ6はそこから合成されるアラキドン酸が炎症促進に関わっていることにより、オメガ6が悪者扱いだと思われます。しかし、アラキドン酸の手前のジホモγリノレン酸は炎症を抑制すると考えられています。
では、オメガ6の一番最初にあるリノール酸を大量に摂ると、アラキドン酸は増加するのでしょうか?
現在の食事では1日15g前後オメガ6のリノール酸を摂取していると考えられています。(図は原文より)
上の図はエネルギー摂取量におけるリノール酸(LA)の減少量(横軸)に対する、血漿/血清リン脂質のアラキドン酸(AA)含有量の変化(縦軸)を示しています。リノール酸を減らしてもアラキドン酸の量は変化していません。
上の図は先ほどと逆で、リノール酸の増加量とアラキドン酸の変化を示しています。これも先ほどと同じでリノール酸の摂取量を増加させてもアラキドン酸の変化はありません。一つの研究では6倍近くのリノール酸を摂取していますが、アラキドン酸は増加していません。ただ、3件の研究では、リノール酸の摂取量の12%〜110%の増加後にアラキドン酸の3〜20%の減少が報告されています。つまり、アラキドン酸を減少させるのには、リノール酸の摂取量を減少させることは逆効果である可能性もあるのです。
上の2つの図はリノール酸の増減に対する、赤血球のリン脂質のアラキドン酸含有量の変化を示していますが、先ほどと同様にこれも関連はありません。
上の図はリノール酸から合成される次の物質であるγリノレン酸の摂取量に対する、血漿/血清リン脂質のアラキドン酸含有量の変化です。γリノレン酸が増加するほどアラキドン酸は増加していますが、3g以上では曲線が緩やかになり、プラトーになっているようです。
上の図はアラキドン酸の摂取量に対する、血漿/血清リン脂質のアラキドン酸含有量の変化です。2~3g程度の摂取から曲線は緩やかになり、こちらもプラトーになっているようです。
成人におけるリノール酸からアラキドン酸への変換率は0.3~0.6%であるとされています。つまり、オメガ6として、リノール酸をいくら摂取しようと、ほとんどはアラキドン酸には変換されないということです。
そして、最後の図にもあるように、アラキドン酸そのものの摂取量の増加は確かに血漿/血清リン脂質のアラキドン酸の含有量を増加はさせますが、3g程度以上の摂取ではプラトーに達し、それ以上増加はしていません。つまり、人間の体の中ではアラキドン酸の量を制御してるのです。
そうであるとすると、オメガ6そのものを悪者扱いする必要はないのかもしれません。確かに、アラキドン酸は炎症を促進するでしょう。しかし、それは必要な時、感染症やケガをした時に起きる重要な現象です。通常であれば、体に何か問題が起きて初めて炎症が起きるのです。人間の実験的研究では、サプリメントを使用してアラキドン酸のレベルを上げても、不必要な、有害な炎症を引き起こさないことを示しています。
つまり、炎症はアラキドン酸の増加やオメガ6の摂取量の増加が起きれば、必ず起きるものではなく、他の要因があり、炎症を起こすべくして起きるのではないのでしょうか?慢性炎症の元である、糖質過剰摂取があって初めて、アラキドン酸の悪い作用が起きるのではないかと考えています。
では、植物性のオイル、サラダ油は問題ないのか?と言われると、やはり問題でしょう。それはサラダ油、植物性の油の製造過程の中で、非常に有毒な物質が生成されると考えられるからです。
アラキドン酸は炎症以外に非常に重要な役割があります。決して無駄な炎症を起こす有害な物質ではないと今は考えています。糖質制限を行っていれば、無駄な炎症は抑えられ、肉や卵などのアラキドン酸、オメガ6の摂取量は気にしなくても良いのではないかと思います。いかがでしょうか?
「Increasing dietary linoleic acid does not increase tissue arachidonic acid content in adults consuming Western-type diets: a systematic review」
「食事のリノール酸を増加させても西洋型の食事を摂取する成人の組織のアラキドン酸含有量は増加しない:系統的レビュー」(原文はここ)
オメガ6系脂肪酸や飽和脂肪酸が悪であっては困ります。
もし本当にそうなら食べるものが無いじゃないですか(笑)
単純に、人類生き残りの歴史を考慮しただけでも、つまり何を食べて生きてきたかを考えるだけでも”正しい”食の方向性は示されるはずですよね。我が国においてはたかだか数千年程度の米の歴史が重視すべき”伝統”であるなら、その数十倍はある現生人類の歴史はどうとらえるのでしょか。
10万歩譲っても超加工食品や食品添加物ではないと思います。やっぱり”原型”が見えなくなっている食材ほど好ましくないという基本原則は押さえておこうと思います。
あ、もちろん先生の新刊、予約してますからね(笑)
ねけさん、コメントありがとうございます。
もちろんオメガ6は完全な悪ではありません。しかし、世の中では炎症促進系の脂肪酸と捉えられています。
オメガ3との割合を考慮しなければならない、という主張があるのですが、もしかしたらこの割合も間違いではないかと思っています。
もう少し勉強します。
あ、拙著の予約ありがとうございました。
オメガ6が毒であるなら、これを豊富に含んでいる卵の黄身は毒物である、ということになってしまいます。
そんな訳ないだろう、ですよね?
身体に悪さを働く脂肪があるとすれば、マーガリン、市販のネギトロ、お菓子に使われているトランス脂肪酸ぐらいではないでしょうか?