重い精神疾患の患者を強制的に入院させるかどうかを判断できる「精神保健指定医」の資格取得に不正の疑いがあるとして、厚生労働省は26日、医師89人の資格取り消し・停止の行政処分の審査を始めた。過去最多の処分となる見通しで、精神医療への信頼性が大きく損なわれるほか、患者や地域の精神医療への影響が懸念される。

 厚労省によると、行政処分の審議対象は、指定医の資格を不正に取得した疑いがある医師49人と、その上司にあたる指導医40人。89人が所属していた医療機関は都道府県単位で12自治体にわたる。このほか、資格の取得を新規申請中の医師5人にも不正の疑いがあるという。

 指定医の資格を得るには、医師として5年以上、精神障害の3年以上の診療経験があり、重い統合失調症や中毒性精神障害など8件以上の症例報告を出す必要がある。しかし、不正取得の疑いがある医師は、自分で診断・治療に十分関与していない患者の症例報告を出すなどし、指導医は十分確認せずに証明を示す署名をしていたという。

 聖マリアンナ医大病院(川崎市)で昨年、不正取得が発覚し、23人が資格を取り消された問題を受け、厚労省はほかにも不正取得がないか全国調査に着手。2009年1月から15年7月までに資格取得を申請した3374人が出した3万件を超える症例報告をデータベース化し、同じ期間に同じ症例を複数の医師が申請していないかを調べ、8月に98人から弁明を聞く「聴聞」を実施していた。うち9人は不正が認められなかったり、自ら資格を返上したりしたという。