カロリー制限は閉経後女性の脂肪と筋肉だけでなく骨密度も減少させる

糖質制限ではなく、エネルギー摂取量を減らす、いわゆるカロリー制限の食事は様々な弊害があると考えられます。確かに体重は減少するかもしれませんが、他にもっと重要なものを失う可能性が高くなります。

今回の研究では、対象は閉経後女性101人で、参加者の平均年齢は58.0歳、平均体重は90.8kg、平均BMIは34.4でした。合計12か月(52週間)、推定エネルギー消費量に対して25%から35%の中程度の摂取エネルギー制限をする中程度群と、最初の4か月(16週間)またはBMIが20に到達するまでのいずれか早い方で、推定エネルギー消費量に対して65%〜75%の重度の摂取エネルギー制限を行う過酷群に分けました。過酷群は4か月を終了すると中程度と同じ25~25%のエネルギー制限となります。タンパク質の摂取量は1日1g /体重kg が維持されました。

そうすると結果はこうなりました。(図は原文より)

上の図はAが12か月の体重の推移を示しています。薄い色が中程度群、濃い色が過酷群です。Bは体重の変化の割合です。確かに過酷群の方が体重減少が大きいことがわかります。中程度群では約8㎏の減少で、過酷群では約15㎏の減少です。中程度群と比較して過酷群では、体重を10%以上減少させる可能性が2.5~3倍高くなります。

上の図はAが全身の除脂肪体重、Bが太もも(大腿)の筋肉の面積です。どちらの群も筋肉が減少していますが、特に過酷群の筋肉の減少は非常に大きくなっています。全身で3㎏以上の減少です。そして太ももの筋肉も過酷なエネルギー制限の4か月の間に非常に大きく低下しているのがわかります。非常に危険な食事です。

Cのグラフは股関節の骨密度、Dは全身の骨密度です。全身の骨密度は12か月の時点ではベースラインより低下していますが、推移は一度増加してからの低下です。股関節の骨密度はどんどん低下し、過酷群では非常に大きな低下を示しています。

Eは腹囲で、Fは全身の脂肪量です。こちらも両群で低下していますが、過酷群で大きく低下しています。

中程度のエネルギー制限と比較すると、虐待のような過去なエネルギー制限では、全身除脂肪量および大腿の筋肉が約1.5倍減少しました。総脂肪量も2倍減少しました。中等度群では、閉経後初期の股関節での骨密度喪失の年率同程度でした。しかし、過酷群では約3.3%の減少で、これは年間骨密度損失の2.4〜3.3倍でした。

両群で1日当たり1g/ 実際の体重㎏のタンパク質を摂取していたにもかかわらず、筋肉と骨密度は減少しています。

これはエネルギー制限そのものの有害性と、閉経後の女性のタンパク質摂取量として1g/㎏では少なすぎることの両方を示唆している可能性があります。骨粗しょう症のリスクの高い閉経後の女性ではカロリー制限を行ってはダメです。糖質を制限し体重を減少させ、タンパク質を1.5g/㎏程度は摂取すべきでしょう。

年をとってから一旦落ちた筋肉をつけるのは難しくなります。糖質制限では筋肉はで減少しません。(「糖質制限で筋肉は減らない その1 糖質制限、高タンパク高脂質食の糖新生」など参照)

閉経後の女性や高齢者にとって、粗食、野菜中心の食事は決して健康的な食事ではありません。野菜も良いですが肉、魚、卵を十分に摂りましょう。

 

「Effect of Weight Loss via Severe vs Moderate Energy Restriction on Lean Mass and Body Composition Among Postmenopausal Women With Obesity: The TEMPO Diet Randomized Clinical Trial」

「肥満の閉経後女性の除脂肪体重と体組成に対する重度と中程度のエネルギー制限による体重減少の影響 TEMPOダイエット無作為化臨床試験」(原文はここ

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