家族性高コレステロール血症から考える 高LDLコレステロールは心血管疾患の原因ではない その7 LDLよりもリスク因子として重要なもの

「家族性高コレステロール血症から考える 高LDLコレステロールは心血管疾患の原因ではない」シリーズの久々の記事です。これまで「その1」~「その6」まで書きました。

家族性高コレステロール血症(FH)という疾患は、遺伝的にコレステロール値が非常に高くなります。高LDLコレステロールは、FHにおける心血管疾患の主な原因として言われていますが、それについての疑問を示してきました。アテローム性動脈硬化症の程度は LDLコレステロールに関連していないですし、心血管疾患を伴わないFHのLDLコレステロールは、心血管疾患を有する同じ年齢のFHとほぼ同じくらい高いのです。

今回の研究ではFHヘテロ接合体の患者を分析しています。ヘテロは500人に1人以上いると言われています。ヘテロとは父親由来と母親由来の2つが一組になった遺伝子のうちどちらか片方に異常があるタイプです。

14,283人の患者のうち、合計1,310人(9.2%)がアテローム性動脈硬化イベントを経験していました。単変量解析では、男性の性別、年齢の増加、BMIの増加、喫煙、高血圧、糖尿病、高LDLコレステロールおよび中性脂肪値が、アテローム性動脈硬化イベントのリスク増加と関連していることがわかりました。HDLコレステロールは、心血管疾患リスクと反比例しました。多変量解析では、男性の性別、年齢の増加、BMIの増加、喫煙、高血圧、糖尿病、高LDLコレステロールおよび低HDLコレステロールが心血管疾患の独立したリスク因子であることが確認されました。(表は原文より改変)

FH(ヘテロ)患者の心血管疾患のリスク因子

 単変量解析多変量解析
OR95%CIpOR95%CIp
男性の性別1.721.53–1.92<0.0012.442.07–2.88<0.001
年齢1.081.08–1.09<0.0011.081.08–1.09<0.001
BMI1.131.12–1.15<0.0011.041.03–1.06<0.001
喫煙1.701.50–1.94<0.0011.591.36–1.86<0.001
高血圧8.027.08〜9.07<0.0012.382.01–2.82<0.001
糖尿病6.405.21–7.86<0.0011.371.03–1.820.03
HDLコレステロール0.550.46–0.65<0.0010.610.48–0.77<0.001
LDLコレステロール1.161.13–1.19<0.0011.081.04–1.12<0.001
中性脂肪1.761.59–1.94<0.001

性別は大きなリスク因子です。つまり女性よりも男性の方が心血管疾患のリスクが高いのです。それは女性はエストロゲンの動脈硬化抑制作用によって守られているからです。それは別として、単変量解析で見れば、最もリスク因子として関連しているのは、高血圧や糖尿病です。これらは糖質過剰症候群です。さらにLDLコレステロールよりも中性脂肪の高さやHDLコレステロール値の低さの方がリスクと関連しています。これも糖質過剰摂取で中性脂肪値は増加し、HDLコレステロール値は低下するので、糖質過剰と関連していると考えられます。

多変量解析ではさらにLDLコレステロールの関連は低くなっています。オッズ比が1以上なので関連がないわけではありませんが、BMIに続いて2番目に低いリスク因子なのです。糖質過剰摂取で小さな危険なLDL(sdLDL)や酸化LDLが増加すれば、当然LDLとの関連は認められるでしょう。LDLは質が重要です。

LDLよりも高血圧や糖尿病、喫煙、中性脂肪、HDLの方がリスク因子として重要なのです。

そうすると、糖質制限をしていて、喫煙しない女性のFHは心血管疾患を恐れる必要なんてないと考えられます。

アテローム性動脈硬化の原因がLDLにあるとすれば、LDLが高ければ高いほどリスクが高く、FHでもとんでもないほどアテローム性動脈硬化に関連するイベントが起きなければおかしいです。しかし、FHでさえLDLコレステロールとの関連は希薄です。FHではない人ではLDLコレステロールの数値自体はあまり意味がないでしょう。HDLが高く、中性脂肪が低ければ、LDLは問題を起こさない優良なLDLだと考えられます。

血中のLDLが高ければ、本当に血管壁を通り抜けて内膜に入り、血管の内腔を狭くするのでしょうか?血管の内皮細胞はそんなにスカスカなのでしょうか?血管のバリアがそんなに弱ければ血中の水分は漏れ漏れになり、人間はすぐに死んでしまうでしょう。

 

「Severe heterozygous familial hypercholesterolemia and risk for cardiovascular disease: a study of a cohort of 14,000 mutation carriers」

「重度のヘテロ接合家族性高コレステロール血症と心血管疾患のリスク:14,000人の突然変異キャリアのコホートの研究」(原文はここ

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