新型コロナウイルスと血栓症 その8 肥満と血栓症

新型コロナウイルス感染において、肥満は非常に重症化と関連していると思われます。さらに血栓症も大きく関連しています。肥満と血栓症の関連は明らかです。Lancetのプレプリントの論文によれば、肥満では呼吸不全のリスクが4倍以上になり、死亡率も約3倍です。(図はこの論文より)

さらに、ドイツのある研究では内臓脂肪量と重症化のリスクの関連について分析しています。(図はこの論文より。プレプリント)

上の図はICU治療または人工呼吸を必要とする可能性について示しています。内臓脂肪面積(VFA)が1dm2(1dm2=100cm2)増加すると、ICU治療のリスクが22.53倍に増加し、人工呼吸器のリスクが16.11倍に増加しました。腹部周囲では、周囲1cmごとに、ICU治療のリスクが1.13倍増加し、人工呼吸のリスクが1.25倍増加しました。 皮下脂肪面積(SFA)またはBMIと新型コロナウイルスの重篤な臨床経過との有意な相関はありませんでした。

内臓脂肪は糖質過剰摂取(特に果糖)が原因です。

 

ある研究で、肥満と血栓症のリスクについて成人でのBMIとの関連を見てみると、次のようになっています。(図はこの論文より)

上の図を見ると、BMIが正常な人と比較して増加すればするほどリスクは高くなり、BMI35以上では3倍前後となっています。

他の研究では青年期のBMIがその後の血栓のリスクを高くするというものもあります。

1969年から2005年の間にスウェーデンで兵役に参加した1,639,838人の男性に関するデータに基づいた研究では、観察期間の中央値は28年で、入隊時(平均18.3歳)のBMIとその後の血栓リスクとの間に明確な関連性が見つかりました。(入隊後の体重変化についてはよくわかりませんが)BMIが高いと血栓症の発症がより早くなっていました。(図は原文より、表は原文より改変)

 

上の図は青年期のBMIとその後の静脈血栓塞栓症における生存率です。BMIが高いほど生存率が低くなっています。

ハザード比(95%CI)
肺塞栓症
15≤BMI<18.51.00(0.90〜1.10)
18.5≤BMI <201
20≤BMI<22.51.16(1.08–1.24)
22.5≤BMI <251.39(1.28–1.51)
25≤BMI<27.51.83(1.65〜2.02)
27.5≤BMI <302.20(1.91〜2.53)
30≤BMI<353.12(2.68〜3.64)
35≤BMI <605.18(3.97〜6.77)
深部静脈血栓症
15≤BMI<18.50.95(0.87〜1.04)
18.5≤BMI <201
20≤BMI<22.51.21(1.15–1.29)
22.5≤BMI <251.49(1.40〜1.59)
25≤BMI<27.51.89(1.74〜2.05)
27.5≤BMI <302.33(2.09–2.61)
30≤BMI<352.95(2.60〜3.36)
35≤BMI <604.84(3.87〜6.06)
がんによる死亡と骨折を除く肺塞栓
15≤BMI<18.50.93(0.83〜1.04)
18.5≤BMI <201
20≤BMI<22.51.14(1.05–1.23)
22.5≤BMI <251.39(1.28–1.52)
25≤BMI<27.51.82(1.63〜2.04)
27.5≤BMI <302.27(1.94–2.64)
30≤BMI<353.20(2.71〜3.78)
35≤BMI <605.12(3.82〜6.86)
がんによる死亡と骨折を除く深部静脈血栓症
15≤BMI<18.50.94(0.86–1.04)
18.5≤BMI <201
20≤BMI<22.51.22(1.15–1.30)
22.5≤BMI <251.53(1.42–1.64)
25≤BMI<27.52.00(1.83〜2.18)
27.5≤BMI <302.36(2.08–2.67)
30≤BMI<353.07(2.67–3.53)
35≤BMI <604.88(3.81〜6.24)
静脈血栓塞栓症
15≤BMI<18.50.98(0.91〜1.05)
18.5≤BMI <201
20≤BMI<22.51.19(1.13–1.24)
22.5≤BMI <251.45(1.37–1.52)
25≤BMI<27.51.86(1.74〜1.98)
27.5≤BMI <302.24(2.05–2.46)
30≤BMI<352.93(2.65〜3.24)
35≤BMI <604.95(4.16〜5.90)

上の表はそれぞれの血栓症とBMIとの関連です。全体としての静脈血栓塞栓症はBMIが18.5~20(かなりやせ型)までの人と比較してBMI30~35では約3倍、35以上では約5倍でした。(BMI20~22.5でもややリスクが1.19という結果は気になりますが…)

いずれにせよ、肥満は糖質過剰摂取による高インスリン血症で起こります。そして、高血糖や高インスリンは血栓を作りやすい体にします。

欧米の肥満率は高く新型コロナウイルスで血栓を作りやすいでしょうし、アジアのようにBCGワクチンも接種していない国も多いので、重症化リスクが高いのだと思います。

マスコミは新型コロナウイルスの恐怖をいいだけ煽りながら、一方で「巣ごもり」中の食事の情報で、甘いものや糖質たっぷりの食事などを垂れ流しています。肥満になること、高血糖になることに警鐘を鳴らすマスコミ、そしていわゆる「専門家」は皆無です。20代の力士が死んだとき(「相撲界は改革するか無くすべき?」参照)でさえ、病院をたらい回しなどの的外れな指摘ばかりで、糖尿病を持っていたことには少し触れたものの、彼が病的肥満であったことは何も指摘しませんでした。マスコミはこんな状況でも国民の健康よりもスポンサーが大事なんですね。

「外出自粛」よりも「糖質自粛」でしょう。

「stay home」よりも「stay thin」でしょう。

糖質過剰症候群 糖質制限

 

「Obesity in adolescent men increases the risk of venous thromboembolism in adult life」

「青年期の男性の肥満は成人期の静脈血栓塞栓症のリスクを増加させる」(原文はここ

4 thoughts on “新型コロナウイルスと血栓症 その8 肥満と血栓症

  1. マスコミの偏った報道にはホトホト呆れますが、これが商業主義だけならまだしも、背後に政治的(医学的?)な要素が絡んでいたら嫌ですね。
    私も全く同意なのですが、健康美人の岡江久美子さんは、例外か、隠れ高血糖か、遺伝子の差か、何なのでしょうね。

    1. 佐伯さん、コメントありがとうございます。

      背後はわかりませんが、様々なことがうごめいているでしょうね。
      亡くなった女優さんが健康だというのは思い込みだけかもしれません。実際にがんを患っていたわけですし。
      私は術後の抗がん剤によって血栓ができやすくなっていたのではないかと考えていますが、詳細がわからないので推測にすぎません。

  2. 数年前までご自身もジョガーでスマートだった「8割おじさん」の教え子は“肥満は伝染する”という肥満の数理モデルを構築した米国の肥満研究の第一線研究者だそうです。https://www.med.hokudai.ac.jp/graduate/research-archives/ra3/vol-17.html

    ご本人はここ数年で激太り(上2つが数年前、下記が最近の写真)されてますが、このシミズ先生のブログを教えてあげたいです。それともご本人がリスク・グループだから他人に8割自粛を強要したいのでしょうか?(個人の体系を揶揄するつもりは全くありませんが、他人に健康をアドバイスする専門化ならば、できる範囲で自らも健康体を維持するのが望ましいと考えます。)
    https://inabakanreki.jimdofree.com/
    https://jiji-trendy.com/celebrity/nishiura-hiroshi
    https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200423-10001199-bunshuns-soci
    https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200513-00000002-asahi-soci.view-000

    1. 糖質制限ランナーさん、コメントありがとうございます。

      のんきに「Yシャツがオーバーシュートしそう」とツイートしている人ですから。
      専門〇〇なんでしょうね?おかげで日本の経済は痩せこけそうです。

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