先日、ある方に実業団の実情についてお聞きしたことがあります。それは食事についてです。その実業団は全国の駅伝大会に出場するようなチームです。トップ争いはできませんが、中堅どころかもしれません。そんなチームの食事は寮母さんが考えて作っているそうです。ただし、その寮母さんは栄養の知識はあまりないようです。選手はそれが良いと思っているのか、その料理を食べています。どんな栄養素が必要か?というのは素人に毛が生えたような人間が考えているのです。
特に女子選手にとっては貧血の問題があるので、鉄分の摂取が重要になります。現在陸連は鉄剤の注射を自粛するように警告しています。そこで、その実業団がとった行動は、毎日レバーを選手に食べさせることにしたそうです。もちろんレバーには鉄が豊富なので、一見良さそうですが、そこには大きな問題があります。ビタミンAの過剰摂取です。レバーには大量のビタミンAが含まれています。1日に焼き鳥のレバーを1~2本というのなら良いとは思います。1日量がどれぐらいかわかりませんが、たくさん摂れば良いと考えて毎日100gも摂っていたとしたら、非常に大きな問題が起きる可能性があります。ビタミンA過剰にはいろいろな問題がありますが、特にランナーにとって重要なのは、骨が弱くなることです。ただでさえ非常に長い距離を走ることを重要視している日本の練習や、痩せることでタイムが伸びるという安易な考えで摂取エネルギーが不足して、無月経になったりなどの影響で、疲労骨折が増加します。さらにこのレバーによるビタミンA過剰摂取で余計に骨が弱る可能性が高くなります。
私は実業団の現状を知りませんでした。ちゃんと栄養の管理をしている実業団の方が少ないのかもしれません。そんなにお金がないのでしょうか?それとも、栄養が重要とは考えていないのでしょうか?
日本の指導者は、まだまだ精神論が先です。そして、現在は陸連の指導が入ってどのようになっているかはわかりませんが、選手たちにすぐに鉄剤の注射をしていたようです。これが中学生であろうが高校生であろうが注射を何度も勧められてすることもあったようです。注射をする医者も医者ですが、勧める指導者も失格でしょう。選手を大事だなんて思っていないのです。自分のチームが勝つための道具に過ぎないと思っているからこんなことになるのです。
もちろん、鉄剤注射がすべて悪いわけではなく、必要なこともあります。しかし、単なる疲労の蓄積だけで鉄の注射に頼ったりする現状もあるようです。
今回はいつもと違って鉄のサプリの推奨ですが、必要ならば鉄のサプリメントを使うべきでしょう。もちろんその前に食事を変えることが第一ですが、すでに貧血になっている選手は相当な数いるはずです。長距離ランナーは必要量も多いので、食事で十分な鉄を補うことは難しい場合もあります。無理に食事からと考えると先ほど書いたように、毎日レバーを食べるということになってしまうのです。食事やサプリであれば、鉄過剰になることはまずありません。1回のサプリを飲んだ後は48時間経たないと吸収率が低下して元に戻っていないともいわれています。つまり毎日大量に飲んでも、胃腸に負担をかけるだけなんです。(「鉄のサプリメントとうんこの関係」を参照してください。)
定期的な血液検査で、必要な鉄を補うことは重要です。
日本の選手は月に1000km走ったりするようですが、それで強くなりましたか?先日のボストンマラソンの大迫選手は初のフルマラソンで3位に入りましたが、練習では35km以上走ったことがないんです。それでも良いタイムが出ます。要は練習方法でしょう。瀬古さんがトップに立ち、さらに距離重視の考えが強くなっています。
日本のマラソン界が再び浮上するのは相当先の話になるでしょう。