高齢者は安静にしすぎると、筋肉の回復が難しくなる

高齢になってくると当然筋肉が落ちてくるのは仕方がないことだと思います。しかし、だからと言って、休んでばかりいるとさらに筋肉の低下は進んでしまいます。若い人と比べて、一旦落ちてしまった筋肉を戻すことは非常に難しくなります。

人間は動物です。動物の世界では動かなくなったら、食料を確保できなくなったり、他の動物に食べられてしまったりします。動かないこと、食べないことは「死」を意味します。

「疲れた」、「膝が痛い」、「腰が痛い」など様々な理由はあると思いますが、これらの加齢に伴うような症状は安静にして改善するどころか、悪化することさえあります。安静にすればするほど筋肉は落ち、少し動くにもすぐに疲労しますし、膝や腰を支える筋肉も無くなれば、痛みは悪化するのです。

言い訳とは言いませんが、動かない理由をどんなに訴えても、動物の世界では無視されてしまうでしょう。しかし、人間は助けてくれます。ただ、助けてくれることを前提に自分から動かなくなってしまえば、「動けなく」なってしまいます。高齢になって「動けなく」なった体を動けるように戻すことは非常に難しいのです。

現在では、手術後であっても、ほとんど安静にしません。すぐにベッドから起き上がり、動くことを奨励しています。もちろん病気や症状によって安静が必要な場合はありますが、不必要なほどの安静は、逆に健康にとって害になります。

どんな年齢になってもできる限り動きましょう。動けばお腹が減ります。そうしたら食欲も出ます。動けば疲れます。そうしたら夜も眠れます。

今回の研究は2週間の安静後の筋力の低下とその後2週間の訓練で筋力が回復するのかを調べています。16人の高齢者(55-65歳)と7人の若年者(18-30歳)で行っています。55歳で高齢者と呼ぶのはかなり抵抗がありますが、仕方ないでしょう。

下肢の最大爆発力(上手い日本語がよくわからないので、変な言葉ですが、最大の瞬間的な筋力だと考えてください)は2週間の安静により、若年者でも高齢者でも低下します。しかし、その後の2週間の訓練後に若年者では安静前の状態にほぼ戻っていますが、高齢者では回復が十分ではありません。(図は原文より)

下の図の一番上の4つは遅い筋肉(遅筋)、真ん中が速い筋肉(速筋)の2A、一番下の4つが速筋の2X(2B)です。○が若年者、●が高齢者、◆が高齢者で認知訓練やタンパク質を補給した群です。若年者では遅筋はあまり影響を受けないかわりに、速筋が安静により萎縮をしています。2Aの筋肉繊維はその後の14日の訓練で比較的回復していますが、2Xの繊維は安静後の訓練後であってもさらに低下をしています。

高齢者はもともと速筋が少なく、遅筋の方が維持されていますが、その遅筋が安静によって萎縮し、その後の訓練でも回復が良くないことがわかります。

下の図は膝関節と足首の関節の筋肉の同時収縮を表しています。膝ではどの群も有意差はなかったのですが、足首では若年者は有意な変化はなく、高齢者は有意に同時収縮が増加していますし、訓練後でもさらに増加しています。これは脊髄からの運動の神経の機能の低下を表しているようです。

高齢者のサブグループにおいて、寝たきりの影響を軽減し、回復を改善するために、2つの異なる対策、認知訓練およびタンパク質補給を行いましたが効果はありませんでした。安静にすると、高齢者では若年者よりもタンパク質の同化抵抗(つまり、筋肉などのタンパク質を作りにくくなること)が高まるようです。つまり栄養だけでは筋肉の回復は難しいということです。使わないものはどんどん少なくなるのが生物の仕組みです。これは高齢者に限ったことではなく、若い人でも同じです。

もちろん、安静後の2週間の訓練にとどまらず、さらにリハビリを続ければ機能はさらに回復する可能性はありますが、非常に時間がかかるでしょう。だから、とにかく安静は「悪」です。できる限り動きましょう。

「Loss of maximal explosive power of lower limbs after two weeks of disuse and incomplete recovery after retraining in older adults」

「高齢者の2週間の不使用後の下肢の最大爆発力の損失と再訓練後の不完全な回復」(原文はここ

要約

筋肉の不使用により誘発された筋力の低下は、高齢者では有害であり、機能的能力を著しく損なう。本研究では、若い男性よりも高齢者で不使用の影響がより大きかったかどうかを評価し、そのような適応の原因を分析するために、14日間の不使用(ベッド上での安静)およびそれに続く14日間の再訓練によって誘導された下肢の最大爆発力(MEP)の変化を調べた。この研究には16人の高齢者(55-65歳)と7人の若年者(18-30歳)が参加した。8人の高齢者のサブグループにおいて、認知訓練およびタンパク質補給に基づく対応策がとられた。MEPは爆発力のエルゴメータで測定され、筋肉量はMRIによって決定され、運動制御は筋電図によって研究され、単一の筋肉線維は外側広筋の生検サンプルで分析された。

MEPは、若年者よりも高齢者で〜33%低かったが、筋肉量で標準化してもまだ有意に低いままだった(-19%)。ベッド上安静は高齢者でではMEPに有意に影響した(-15%)が、若年者では有意ではなかった。再訓練はMEPを増加させる傾向があったが、この介入は高齢者のベッド上安静前の値を回復するには十分ではなかった。足首の同時収縮(拮抗筋同士の収縮)は、高齢者のみベッド上安静後に増加し、再訓練後に上昇し続けた(+ 30%)。有意な筋肉の萎縮は、高齢者の遅い繊維(遅筋)および若年者の速い繊維(速筋)で起こった。再訓練後、筋繊維の厚さの回復は部分的であった。提案された対策は、筋肉量と筋力に影響を及ぼすには十分ではなかった。

不使用の影響が大きく、再訓練によってもたらされた回復が小さいことが高齢者で観察されたことは、高齢者に適したリハビリテーションプロトコルを設計する重要性を強調している。

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