筋肉の低下を年齢のせいにしてはいけない

サルコペニアという言葉を聞いたことがあるかもしれません。明確な言葉の定義ははっきりしておらず、混乱しているようですが、一般的には「加齢による骨格筋量、筋力、それに伴う身体能力の低下」というように捉えられているのではないでしょうか?

つまり、加齢に伴い誰しも筋肉は衰えるもの、と考えるのが普通なのかもしれません。

しかし、本当に筋肉の低下は加齢によるものでしょうか?私は食事の質と量の低下と運動量の低下によるものだと思っています。加齢はほとんど関連していないか2次的なものと思っています。(写真は原文より)

上の写真は40歳のトライアスロンをしている人の大腿の断面です。グレーの部分が筋肉であり、その周りの白い薄い層が脂肪です。びっちり筋肉があることがわかります。では高齢者ではどうでしょうか?

上の図の上の写真は74歳で活動性の低い男性の大腿です。下の写真は70歳のトライアスロンをしている人の写真です。ほとんど同じ年齢ですが、活動性の低い高齢者の筋肉は非常に少なく、しかも霜降り肉のように筋肉の間にも白い脂肪の部分が認められます。筋肉の周りは大量の脂肪があります。トライアスロンをしている人の筋肉は先ほどの40歳のトライアスロンをしている人とほとんど変わらず、びっちりと筋肉があります。

恐らく大腿の太さは外から見れば、活動性の低い人もトライアスロンをしている人もそんなには変わらないかもしれませんが、中身はこれほどまでに違います。

加齢とともに食事の量が減る方が多いようですが、その食事の質は非常に悪いことが多いと思います。量が少ない上に質も低い。それでは筋肉も付きません。歳をとってきたら粗食が良いと誰が言ったのか知りませんが、高齢者の多くが非常に栄養価の低い食事を摂っています。主食は必要と思い込み、野菜は健康的と思い込んでいます。タンパク質を意識して食べている高齢者が非常に少ないのです。肉や卵は体に良くないと思い込まされています。脂質も体に悪いと思い込んでいるので脂質をできる限りカットしています。そうすると必然的に糖質と野菜がかなりの割合を占めることになります。

体を作るのに最も大切な栄養素はタンパク質です。そして脂質です。次に食物繊維を考えます。糖質は全く必要ありません。食事の量が少ないのに、必要なタンパク質は後回しで、ご飯と野菜でお腹いっぱいになって肉や卵を食べられないという状況です。

そして、運動習慣がない人であれば、筋肉が落ちていくに従い動くことが億劫になっていきます。それがさらなる筋力低下を招きます。最近はかなりの高齢者でも車を運転しているので、ほとんど歩くことさえ少なくなっています。野生の世界では自分で動けなければ死を待つばかりです。そして、生物の体は無駄と思われるものはどんどん少なくしてしまうようなメカニズムがあるようです。つまり、使わないものはいらないものと判断し、そこに大切な栄養やエネルギーを費やさなくしてしまうのです。

動かない人の筋肉は必要のないものとして判断されてしまうのでしょう。どんどん筋肉は低下します。そしてその人がやっと動ける最低限の筋肉量まで低下する可能性があります。筋肉が低下すれば体を支えるものが無くなりますので、体の様々なところが痛くなります。そして病気やケガなど何かをきっかけとしてさらに活動性が落ちると、ますます筋肉は無くなっていきます。そうすると最低限以下の筋肉となり、立ち上がることさえできなくなってしまうのです。

高齢で動けなくなったときに誰かが世話をしてくれるのは人間の世界だけです。他の動物は見放すでしょうし、自分でも悟るでしょう。やむを得ない事情で動けなくなることもあるので、そのような状況は別として、普段運動もせず、歩くこともせず、食事の質も気にせず、筋肉が低下することは加齢によるものではありません。簡単に防げることです。

40歳を過ぎて、活動性が低く、食事を気にしない方は、近い将来自由に動けなくなる時が来るかもしれません。高齢になっても筋肉は付きます。しっかりと意識して質の良い食事と運動をしましょう。

ちなみに、運動は何をしていますか?と聞いたときに「ストレッチをしています」と答える方がときどきいますが、ストレッチは運動ではありません。

 

「Chronic exercise preserves lean muscle mass in masters athletes」

「慢性的な運動は、マスターアスリートの筋肉量を失わないようにする」(原文はここ

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