血糖値スパイクは急性冠症候群後の予後を悪くする

通常、耐糖能異常は健康診断ではかなり進行するまで発見できません。それは健康診断の血糖値は空腹時で測定するからです。食後1時間値や2時間値を測定すればもっと早くに異常を発見できるはずです。

糖尿病になっても、その治療経過は通常HbA1cの値によって観察されています。しかし、このHbA1cは1~2カ月の血糖の平均値を反映するので、あまり敏感なマーカーではありません。

糖尿病の人は糖尿病の既往がない人に比べて心血管疾患のリスクが2〜3倍高いといわれています。急性心筋梗塞後の予後を考えたときに、HbA1cでは鈍すぎます。最近はフリースタイルリブレに代表されるように、24時間連続した血糖値や間質液のグルコース値を測定できるようになりました。このような機器を使えば血糖の変動が一目瞭然です。

今回の研究ではフリースタイルリブレとは違うもの(iPro2というメドトロニックス社のもの)ですが、連続的なグルコースモニタリングシステム(CGMS)を使って血糖変動、特に血糖値スパイク(グルコーススパイク)である食後高血糖の変動幅に注目して、急性冠症候群後の患者を評価しました。

血糖値スパイク(MAGE)の変動幅を分析し、3分位に分けて、MAGEの最も高い高MEGA群(MAGE = 52mg/dl)とそれ以下の低MEGA群の2つの群に分けました。冠動脈の再灌流を受けた急性冠症候群患者417例で経過追跡期間中に、66人の患者が主要な有害な心血管イベントおよび脳血管イベントを経験しました(心血管系の死亡5例、急性冠症候群の再発14例、冠動脈の再狭窄を伴う狭心症27例、急性非代償性心不全8例、脳卒中16例)。この心血管イベントおよび脳血管イベントは最も高い高MAGE群で23.5%と、より頻繁に起きました(低MEGA群は11.6%)。(図は原文より)

上の図は心血管イベントを起こさずに生存している人の割合です。青が低MEGA群、赤が高MEGA群です。図のaは患者全体のグラフです。明らかに高MEGA群の方が生存率が低下しています。bは糖尿病のある患者、cは耐糖能異常のある患者、dは耐糖能に異常がない患者です。

高MAGEは急性冠症候群後にこのような心血管イベントおよび脳血管イベントを起こすリスクが1.84倍という、予後不良の独立した予測因子でした。dの耐糖能に異常がない患者の場合には予後とは関連していませんでした。

酸化ストレスのリスクとなるのは、血糖の変動幅の増大、食後高血糖、空腹時高血糖の順だと言われています。今回の研究での血糖の変動幅は52以上を高変動幅と考えています。空腹時血糖を90としたら、食後の血糖値が142ということになります。耐糖能異常がなければ通常食後血糖値は140を超えないので、この140という食後高血糖の意味を裏付けたような形になっています。

通常の食事をしていると、少しでも耐糖能異常があれば、食後の血糖値は140を超えてしまいます。また、耐糖能に異常がない場合でも大量の糖質を摂取すれば140を超えてしまうこともあります。食後の血糖値スパイクを減少させる食事は糖質制限しかありません。

急性冠症候群でなくても、酸化ストレスを減少させるために糖質制限は必須の食事でしょう。

「Glycemic variability determined with a continuous glucose monitoring system can predict prognosis after acute coronary syndrome」

「連続グルコースモニタリングシステムで決定された血糖変動は、急性冠症候群後の予後を予測することができる」(原文はここ