モンゴル人において乳がんの発生率が非常に低いのはなぜなんだろう?

乳がんはエストロゲンなどのホルモンとの関連が非常に強く、初潮の年齢が若い人や閉経が遅い人、出産経験がないことなどによりリスクが高くなると考えられています。

年齢標準化された乳がん発生率(2008年)では、モンゴルで8.0 / 100,000人、中国で21.6 / 100,000、日本42.7 / 100,000、ロシア43.2 / 100,000、北アメリカ76.7 / 100,000、ヨーロッパ66.6 / 100,000です。

他のデータでも、 年齢標準化された乳がん発生率はイギリスでは95/ 100,000人、モンゴルでは9.4/ 100,000人 でした。

つまり、モンゴルでは比較的発生率の低いアジアにおいてもかなり低く、欧米と比較すると、8分の1~10分の1です。イギリスとの比較でも10分の1にもなります。

これは単に人種の差ではありません。アジア人がアメリカに移住すると乳がんの発生率が高くなります。移住して10年以上の場合、それよりも短い人と比較すると80%リスクが高くなるようです。(この論文参照)

そうすると、人種差というよりは環境による影響の方が高いと考えられます。最も影響するのは食生活でしょう。

今回の研究ではモンゴルの首都ウランバートルの中心部の小学生の母親と、ウランバートル郊外で、比較的最近農村部から移住してきた人の多い地域と考えられる小学校の母親、そして比較するためにイギリスの閉経前の女性を対象にしています。(図は原文より、表は原文より改変)

モンゴルとイギリスの食事の成分

モンゴル英国
サービング/日g / dサービング/日g / d
野菜(じゃがいもなし)3.583052.18185
フルーツ1.241051.21103
お肉1.641640.8888
0.0770.2323
牛乳1.844450.51124
ヨーグルト0.701700.1332
チーズ0.60230.3714
クリーム、サワークリーム、バター1.11330.6018

上の表はモンゴルとイギリスの食事の違いです。食事のアンケートでの数値なのでかなり不正確で大まかな数値と考えられますが、それでもかなりの違いを認めます。最も大きな違いはモンゴル人は魚をほとんど食べず、肉や乳製品の摂取量が非常に多いことがわかります。

上の図は青い線がモンゴル人で、黒い線がイギリス人です。モンゴルの女性の平均テストステロン濃度はイギリスの女性より18.5%低く、平均エストラジオール(E2)は19.1%高く、プロゲステロンは48.8%高くなりました。エストロン(E1)とアンドロステンジオンは差がありませんでした。

上の図はモンゴル人を都会の女性と農村部の女性で分けています。赤い線がモンゴルの農村部の人です。モンゴル人の都会と田舎の女性では違いはありません。

ということは、エストラジオール(エストロゲン)やプロゲステロンなどの女性ホルモンが高いことが乳がんの発生率が高いと仮説は矛盾しています。モンゴル人の方が女性ホルモンが高いのですから。テストステロンの低さが乳がんの発症の低さである可能性はあります。

しかし、私はやはり食事の違いが大きいのではと思います。モンゴル人は肉と乳製品の摂取量がかなり多く、中国や南アジアの人と比較してもシリアルの消費が少ないようです。つまり、肉や乳製品の脂質やタンパク質には乳がんの保護作用があり、シリアルをはじめとする穀類、炭水化物が発症に関わっているのでは?と思うのです。欧米諸国での女性ホルモンと乳がんのリスク上昇の関連はあくまで、糖質過剰摂取が前提であり、糖質過剰摂取がない場合にはホルモンと乳がんのリスクの関連は異なる可能性が高いのではないかと考えられます。

以前の記事「乳がんで糖質制限をした方が良い理由」「糖質を摂ると乳がんの再発リスクが高くなる!」などで書いたように、乳がんと糖質、インスリンの関連は大きいと思われます。エストロゲンなどに注目が集まりますが、問題はホルモン+糖質ではないでしょうか?糖質制限を行っている人の乳がんやその他のがんの発生率を是非知りたいものです。

「The role of hormones in the differences in the incidence of breast cancer between Mongolia and the United Kingdom」

「モンゴルとイギリスの間の乳癌発生率の違いにおけるホルモンの役割」(原文はここ

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする