妊娠中のアセトアミノフェンの使用とLGBT

LGBTとは、Lesbian(レズビアン)、Gay(ゲイ)、Bisexual(バイセクシュアル)、Transgender(トランスジェンダー)の頭文字をとった、セクシュアル・マイノリティ(性的少数者)の人を指した総称のひとつです。

ある調査では日本のLGBTは全体の8.9%だそうです。2015年の調査では7.6%、2012年の調査では5.2%だったので、増加傾向あると考えられます。(関連記事はここ

性の多様性がもっと理解されて、LGBTの方たちが何の問題もなく、日常を生きていくようにすることは重要なことだとは思いますが、なぜLGBTが増加しているのか?ということも考えなくてはなりません。

以前の記事「妊娠中のアセトアミノフェンの使用はやっぱりリスクを伴うかもしれない」「妊娠中のアセトアミノフェン使用で生まれてくる男の子が女性化?」で取り上げた研究では、妊娠中のアセトアミノフェンの使用が出生後に大きな問題を起こすリスクを高めることを示しています。

動物実験での結果ですが、妊娠中のアセトアミノフェンはオスのマウスがオスとしての本能を低下させてしまいます。人間の研究でも、妊娠中のアセトアミノフェンとNSAIDsの使用が、赤ちゃんの男性生殖器(おちんちん)の位置の異常を来す可能性を示しています。NSAIDsだけでは差を認めませんでした。アセトアミノフェンとNSAIDsの両方の使用はおちんちんと肛門の距離を4.1mm短くしました。アセトアミノフェンだけでは距離が短くなる傾向はありましたが、有意差はありませんでした。この距離が短くなることは妊娠中に男性ホルモンの抑制効果を示唆しています。これは尿道下裂などの生殖器の奇形や精液の質の低下、不妊などに関連していると考えられています。

もちろん妊娠中にホルモン分泌をかく乱させるのはタバコなど、薬だけではありません。しかし、動物実験と合わせて考えるとアセトアミノフェンが妊娠中の胎児へのホルモン分泌に大きな影響を与えている可能性は十分にあるでしょう。

ただ、このような鎮痛薬を使う理由があります。例えば風邪などで発熱や頭痛が起きた場合にアセトアミノフェンを使うこともあるでしょう。そうすると、高熱や炎症、ウイルスなどがホルモンをかく乱させた可能性もあります。

もちろん、アセトアミノフェンの使用頻度や使用する妊娠時期とのタイミングで影響は違うでしょう。

妊娠中のアセトアミノフェンの使用は恐らく脳に影響を与えます。デンマークの64,322人を対象にした研究では自閉症とアセトアミノフェンとの関連を示しています。(表は原文より改変)

 自閉症スペクトラム障害自閉症
 多動症(-)多動症(+)多動症(-)多動症(+)
妊娠中のアセトアミノフェンの使用    
非使用1111
これまでに使用1.071.510.981.55
妊娠中ずっと使用1.251.771.232.45
     
妊娠中のアセトアミノフェンの使用週数    
0週間1111
1~5週間1.061.5111.32
6~20週間0.991.620.781.55
21週間以上1.421.891.452.25

上の表は自閉症や自閉症スペクトラム障害のリスクを表しています。アセトアミノフェンを使っていない人を1としています。リスク比は性別、出産時の母親の年齢、社会経済的地位、母親の喫煙およびアルコール摂取、妊娠中の葉酸摂取量、母親の精神疾患、筋肉/関節の病気、発熱、 または妊娠中の感染/炎症、妊娠中のイブプロフェンとアスピリンの使用などで調整後のものです。つまり、感染や炎症や他の薬の影響を除いたものと考えられます。そうすると、アセトアミノフェンを長期に渡って使用することは、非常に自閉症のリスクを高めることになります。

さらに、同じ研究者の別の論文でもは注意欠陥/多動性障害(ADHD)とアセトアミノフェンの関連を示しています。(図は原文より)

上の図は妊娠中のアセトアミノフェンの使用と7歳児でのADHD様の行動問題のリスク比を示しています。妊娠中期と後期またはすべてに期間でアセトアミノフェンを使用したときに有意にリスク増加が認められます。20週以上の使用でもリスク増加が認められます。

上の図は多動性障害の診断またはADHDに薬物治療と妊娠中のアセトアミノフェンの使用の関連を示しています。やはり、20週以上の使用は多動性障害が1.84倍、ADHDが1.53倍となっていますが、もっと少ない週数でも有意差が認められています。

つまり、妊娠中のアセトアミノフェンの使用は性ホルモンのバランスに影響を与える可能性があり、その影響による脳の発達に影響を与えるのか、それともホルモンとは別のメカニズムで脳に影響を与えるのかはわかりませんが、脳に大きな影響を与える可能性が高いと考えられます。下の2つの研究では感染や炎症などの影響を取り除いても自閉症やADHDのリスクの増加が認められています。そうすると、性機能などに大きな影響を与える性ホルモンについてもやはり、感染や炎症はあまり関係せず、アセトアミノフェンそのものの影響である可能性が高いと考えられます。

妊娠中のアセトアミノフェンの使用はできる限り少なく、短期的に使うべきだと思われます。決して安心して使える薬ではないでしょう。

そして、さらにアセトアミノフェンの使用とLGBTの関連を調べるべきではないかと考えます。

「Maternal use of mild analgesics during pregnancy associated with reduced anogenital distance in sons: a cohort study of 1027 mother–child pairs」

「息子の肛門性器間距離の減少と関連した妊娠中の弱い鎮痛薬の使用:1027の母子ペアのコホート研究」(原文はここ

「Maternal use of acetaminophen during pregnancy and risk of autism spectrum disorders in childhood: A Danish national birth cohort study」

「妊娠中の母親のアセトアミノフェン使用と小児期の自閉症スペクトラム障害のリスク:デンマークの全国出生コホート研究」(原文はここ

「Acetaminophen Use During Pregnancy, Behavioral Problems, and Hyperkinetic Disorders」

「妊娠中のアセトアミノフェンの使用、行動問題、および多動性障害」(原文はここ

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