中年のマラソンと死亡率

私はフルマラソンやウルトラマラソンのレースに出場しています。しかし、以前の記事「フルマラソンは心臓の負担を増加させるかもしれない」「トライアスロンのような過剰な運動は男性の心臓を危機に陥れるかもしれない」に書いたように、このような耐久性レースは心臓に負担がかかる可能性があります。

心臓に対する影響は様々ではありますが、耐久性の運動は心臓の冠動脈の石灰化を促進する可能性があると考えられています。

一般的には冠動脈の石灰化は冠動脈イベントの増加や心臓疾患での死亡と関連していると考えられています。(図は原文より)

上の図は冠動脈石灰化(CAC)スコアと冠動脈イベントのリスクを表しています。石灰化がない人と比較するとCACスコアが増加するにつれリスクが増加しています。CACが100を超えると4倍以上のリスクです。

上の図はCACスコア(横軸)と年間の心筋梗塞発生および心疾患での死亡率を表しています。これもCACスコア増加に伴いリスクが増加しています。

では運動は実際どのような変化を起こすのでしょうか?1週間の運動量で1500 MET-分 /週未満、1500~3000、3000以上と分けています。

ちなみに3000 MET-分 /週を超える活動レベルというのは、5時間/週を超える激しい運動、または1.6キロメートルあたり10分のペースで約48キロメートル/週に相当します。私は3000以上のときもあれば3000以下のときもあります。対象は
21,758人の男性で、平均年齢は51.7歳です。 (図は原文より)

上の図は参加者の運動量のグラフです。10,000を超える強者もいるようです。

上の図は横軸が活動レベル、縦軸がCACスコア100以上になるリスクです。活動レベルが高くなるにつれCACスコアが100を超える可能性がやや高くなります。

上の図は全原因死亡率と心血管死亡率を表しています。CACスコアが100未満の場合、活動レベルが1500未満の人と比較して、3000以上では全原因死亡率が48%も低下、心血管疾患での死亡率は有意差がありませんでしたが、活動レベルが増加するにつれ低下する傾向はあるようです。

さらに、CACスコアが100以上であっても、活動レベルが1500未満と3000以上では有意差がありませんでした。

つまり、活動レベルが非常に高くなると冠動脈の石灰化が増加する可能性がありますが、それは直接心血管疾患や死亡率とは結び付かいないということになります。さらに、冠動脈の石灰化が少ない場合には、死亡率は活動性の少ない人と比較して約半分になるということです。

一般的なCACスコアと心血管疾患のリスクとの関連はランナーには当てはまらない可能性が高いと思われます。運動はやはり重要でしょう。

中年のランナーのみなさん、安心して走りましょう!でも無理は禁物です。

「Coronary artery calcium screening: current status and recommendations from the European Society of Cardiac Radiology and North American Society for Cardiovascular Imaging」

「冠状動脈カルシウムスクリーニング:欧州心臓放射線学会および北米心臓血管イメージング学会からの現状と勧告」(原文はここ

「Association of All-Cause and Cardiovascular Mortality With High Levels of Physical Activity and Concurrent Coronary Artery Calcification」

「全原因および心血管死亡率と高レベルの身体活動および同時冠状動脈石灰化との関連」(原文はここ

2 thoughts on “中年のマラソンと死亡率

  1. 今さらながらですが、先生が過去記事で触れいらっしゃる「マフェトン理論」読んでみました。

    すでに脂質代謝メインとなっている身としては、当面はただひたすらエアロビック範囲の心拍数(と適切なウォーミングアップ、クーリングダウン)のみ気にかけていれば良さそうで、とりあえず数ヶ月以上はやってみようと思います。

    私の目標はサブ4なので特にスピードトレーニングは必要ない気もしますし、それなら”道中”を出来る限り楽にしのげるようになることがより重要に思います。
    そういう意味では渡りに船の理論であるかも知れません。何より故障の心配も軽減できますし、ということは距離(時間)も踏めると言うことに繫がりますし。

    そもそも50を前にして運動経験もほぼ無いのに突然「走ってみよう」などと思いついたので、それなりに試行錯誤は必要だろうと考えています。
    先生はマフェトン理論に則っての練習で成果を体感されましたか?実体験をお聞かせ頂ければ幸いです。

    1. ねけさん、コメントありがとうございます。

      私も50歳を過ぎていますので、あまりにも心臓に負担になることは少なくしています。
      ただ、サブ4を目指す場合に、サブ4の平均速度よりも早いスピードで走る練習は必要だと思います。
      マフェトン理論で成果を体感できているとは言えませんが、フルマラソンをイーブンペースでサブ4を達成できたのは収穫でしょう。
      でも、はやりサブ3.5を目指したいとは思っています。
      年齢による衰えと、少しずつの練習の効果のどちらが先かはわかりません。

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