以前の記事「不健康なアスリート その1」ではかなりの若いアスリートがメタボの基準に引っかかっていることを書きました。今回は睡眠時無呼吸です。
睡眠時の呼吸の障害は中年に以降の問題ではありません。また、運動しているからと言って回避できるものではありません。睡眠呼吸障害は未治療の場合、心血管疾患、心不全および2型糖尿病などの慢性疾患を発症する危険性が高まると言われています。
今回の研究では日本人の青年として、大学のラグビーチームの新入生18~19歳、42人を対象に研究を行っています。
その結果、このような若いアスリートでさえ、43%が睡眠呼吸障害の基準を満たしていました。3時間を超える総睡眠時間にわたって、1時間当たりで少なくとも10秒間持続する無呼吸が5回以上であるというものです。
16人のアスリートは1時間当たり5回以上15回未満でした。2人は15回以上30回未満でした。
このような高い割合の睡眠呼吸障害の有病率は、アメリカの中年男性やヨーロッパの一般の有病率よりも高いそうです。
睡眠呼吸障害のある人とない人ではBMI(平均で27~28程度)や体脂肪率(20%前後)に差はありませんでした。
血液の酸素飽和度というものも測定しています。これはもちろん睡眠時無呼吸により低下します。睡眠呼吸障害のない人とある人では、平均の酸素飽和度は違いがありませんでしたが、最小値は睡眠呼吸障害のある人の方が当然低く、90を切っていました。90というのは結構ぎりぎりのラインなので、これが毎日、何度も起こっているとなるとかなり体には負担がかかっていると考えられます。
更に平均心拍数は有意に睡眠呼吸障害のある人の方が高くなっていました。また、睡眠呼吸障害のある人では24時間ホルター心電図では不整脈である心室性期外収縮が100回を超えたのが約4分の1でした。呼吸障害のない人では100回を超える人はいませんでした。
また、統計的には有意ではなかったのですが、睡眠呼吸障害のある人の方がない人よりも、スポーツでのケガで整形外科手術を受けたり、重症のケガのためスポーツをやめた人の割合が3倍以上高くなりました。(28.8%対8.7%)
ラグビーやアメフトのラインメン、投てき種目、柔道の重量級、相撲など、体重を必要とするスポーツは10代の若者と言えど、すでに睡眠時に呼吸が何度も止まっていることが強く示唆されます。まだ、若いので大きな問題は起きないと思われますが、若いころから長年にわたり、このような症状は続くので、決して健康な状態ではないと思います。
睡眠呼吸障害がアスリートの突然の心臓死の決定的な要因であるとはもちろん言えませんが、十分考え得ることです。体重を必要とするアスリートはかなりの割合で不健康なアスリートなのです。体重を必要としないスポーツであれば、当然太らない方が良いです。若い頃に命懸けでスポーツをやることはそれぞれの自由ですが、スポーツをやめた後はしっかり糖質制限で健康な体に戻すことをお勧めします。
「Prevalence and significance of sleep disordered breathing in adolescent athletes」
「青年期のアスリートにおける睡眠呼吸障害の有病率と重要性」(原文はここ)