糖質制限では安易なチートデイは血管を傷つけるかもしれない

糖質制限を始めたばかりだと、チートデイを取り入れている方もいるかもしれません。チートデイとは簡単に言えば、糖質制限をその日だけ止めて、好きなものを食べる日を作ることです。

しかし、このチートデイをする場合には注意が必要かもしれません。

この研究では、7日間の高脂肪低炭水化物食を摂りました。その前後に75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を行いました。7日間の食事は脂質70%、炭水化物10%、タンパク質20%です。参加者は9人と非常に少ないですが、健康な男性です。(21±3歳、76±4 kg、181±9 cm、BMI 23.2±2)

7日間の糖質制限の後では、OGTT後のグルコースの曲線下面積や血糖値は糖質制限前と比較して有意に高くなりました。(数値はこの論文内には書かれておらず、他の論文に書かれているようです。)(図は原文より)

上の図は左の実線が7日間の糖質制限前、右の点線が糖質制限後です。Fastingは空腹時、1hはOGTT1時間後です。空腹時と比較してどちらも1時間後のFMDは低下しています。糖質制限前と比較して糖質制限後では空腹時のFMDが低下しています。FMD(Flow-mediated dilatation)は血流依存性血管拡張反応で、血管内皮機能の検査の一つです。血管内皮機能が低下すると血管を拡張する一酸化窒素(NO)の産生が低下しFMD値も低下するとされています。一応6%以上が基準値と考えられています。そうすると、7日間の糖質制限により、空腹時のFMDが低下してしまったことになります。このことにより、動脈硬化が進行したと考えて良いのかどうかはわかりません。以前の記事「高血糖は血管内皮細胞の機能不全を起こし、血管の拡張を妨げる」に書いたように、糖尿病、食後高血糖では通常NOが低下し、FMDが低下します。

FMDの低下は心血管疾患のリスク因子とされていますが、内皮細胞の細胞性または分子性反応としては詳細はわかっていません。これについては今後またわかれば記事にしたいと思います。いずれにしても糖質制限前後どちらもOGTT1時間後では血管拡張が低下します。

血管内皮微粒子(EMPs)は血管内皮から脱落した微粒子で、アテローム性動脈硬化症、高血圧、2型糖尿病、メタボリックシンドロームなどで上昇するとされています。EMPsは血管の内皮損傷および機能不全についてのバイオマーカーと見なされています。上の図は、CD31+/CD42b- EMPsとCD62E+EMPsの変化を示しています。CD31+/CD42b- EMPsはアポトーシスで内皮細胞から脱落すると考えられており、CD62E+EMPsは内皮細胞の炎症性活性化を示しているそうです。これらを測定することで血管内皮の損傷および炎症についての直接的情報を得ることができると考えられます。

これらの測定値は7日間の糖質制限前では変化していなかったものが、糖質制限後では1時間後に有意に増加しています。それぞれを見ると、変化していない人もいます。しかし、数人は大きく増加してしまっています。しかし、これらの値の変化と先ほどのFMDと相関はしていませんでした。

たった7日間の高脂肪低炭水化物食で、相対的な耐糖能障害を引き起こす可能性があります。以前の記事「糖質制限はインスリン抵抗性を増加させる? その1」「その2」で書いたように、糖質制限は生理的なインスリン抵抗性を増加させると考えています。

そうすると、通常の糖質過剰摂取状態のときよりも久しぶりに糖質を摂ったときの食後高血糖は大きくなる可能性が高くなります。そのときに非常に高くなった血糖値により、血管内皮細胞が傷つきやすくなることを想像することは難しくありません。

ただ、今回の研究ではこれまで全く糖質制限をしていない人が、いきなり7日間の糖質制限を行い、その前後の状態を分析しています。何年も糖質制限を行っているような人ではどのような結果が出るかは全くわかりません。糖質制限では高血圧も改善することが多く、これはNO産生が増加し、血管拡張性が高くなることが一つの要因だと考えられます。そうすると、この研究での糖質制限後のFMD低下とは矛盾します。

この研究では若い健康な男性が対象であり、通常食、つまり糖質制限前ではOGTTにより血糖値がそれほど高くならず、血管内皮細胞に影響がなかった可能性があります。しかし、年齢と共に食後高血糖は起こりやすくなったり、若くても食後高血糖が非常に大きい方ではOGTTで血糖値が異常値が出現するでしょう。そうするとこの研究のような結果にはならないでしょう。

この研究だけでは良くわからないことも多いですが、糖質制限でのチートデイでは、血糖値がそれまでよりも高くなりやすくなる可能性は高くなるので、十分注意が必要かもしれません。同じ量の糖質でも血糖値が高くなりやすいのです。

ですから、もしチートデイを行ったとしても、あまり派手に糖質を摂らない方が良いかもしれません。あまりあてにはなりませんがGIが低いものを選択したり、好きなだけ糖質を食べるというよりも一つだけ好きなものを食べるなど、控えめの方が良いでしょう。液体の糖質は避け、食物繊維を一緒に摂ったりして、少しでも血糖値の上昇を防ぐ努力が必要だと思います。

チートデイなど無くても糖質制限ができるようになる方が良いですが…

「Short-Term Low-Carbohydrate High-Fat Diet in Healthy Young Males Renders the Endothelium Susceptible to Hyperglycemia-Induced Damage, An Exploratory Analysis」

「健康な若い男性における短期間の低炭水化物高脂肪食は内皮を高血糖症誘発性損傷に対して影響を受けやすくする、探索的分析」(原文はここ

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