これが糖質制限のリスクのエビデンス? その1

この方が糖質制限反対派という訳ではないかもしれませんが、著書では良い炭水化物と悪い炭水化物というような表現をしており、最近のツイッターでは彼が言う「重要」なエビデンスを示し、糖質制限のリスクを述べていました。そのツイッターは以下のようです。


ではここで挙げられた論文を見ていきましょう。最初の図は以下の論文からです。

「A Randomized Trial of a Low-Carbohydrate Diet for Obesity」

「肥満に対する低炭水化物食の無作為化試験」(原文はここ

糖質制限食群は低炭水化物、高タンパク質、高脂質食で、脂質とタンパク質の消費を制限することなく炭水化物の摂取を制限しました。 最初の2週間の導入期では、炭水化物の摂取量は1日当たり20 gに制限されていますが、その後、安定した望ましい体重が得られるまで徐々に増やします。最初は1週間に1日当たり5gの炭水化物を増量し、目標体重に近づいたら1日当たり10g炭水化物を増量します。そして目標体重に達したらその炭水化物量を維持します。いわゆるアトキンス式ダイエットです。

しかし、食事内容は自己申告ですし、6カ月から12カ月の間の6か月間は栄養士の指導もありません。

従来の食事群は、高炭水化物、低脂質、低カロリーの食事です。(女性は1日当たり1200〜1500kcal、男性は1500〜1800kcal)摂取エネルギーの約60%を炭水化物から、脂質から25%、およびタンパク質から15%です。これだけ無謀なカロリー制限をすれば体重は減少するでしょう。ベースラインの体重は98kgを超えているのですから。これだけの体重であれば基礎代謝だけで2000kcalあり、総消費エネルギーは恐らく3000kcal程度でしょう。

彼のツイッターには下の図のAだけが載せてあり、「糖質制限食は短期間(半年)の体重減少効果があるものの、長期間(1年以上)の体重減少効果を示す十分なエビデンスはない」とコメントが付いています。

上の図のBはこの研究を最後までやり抜いた人と、最後までできなかった人は最後に受診した日のデータでのグラフです。糖質制限での体重減少は平均すると3か月で8.1kg減、6カ月で9.7kg減、12カ月で7.3kg減です。ベースラインから見れば体重減少は続いています。上の図の*は従来のカロリー制限食との有意差を表しており、12か月ではその従来のカロリー制限食と有意差が無くなっています。

この研究は糖質制限食がカロリー制限食と比較して有意に体重減少が得られているかを示している研究です。カロリー制限食とは1年後の有意差はありませんが、ベースラインから見れば十分に体重減少を示しているのです。しかも、食事は3か月、6か月など栄養士の指導を受けていますが、基本的には自己申告です。糖質制限食は10%減を目標体重に置いたと思われますが、段々と糖質摂取量を増加させるプログラムなので、どこまで糖質量を増やしたのかはこの論文からはわかりません。ひょっとすると6か月後から気が緩み、維持量よりも糖質を増やしてしまった可能性が考えられます。もともと100kg近くあるような人が6か月間ちゃんと食事の指導を守れるとも思えません。

しかし、無謀なほどのカロリー制限で4.5kgしか減らないのに、カロリー制限のない糖質制限では1年で7.3kgです。十分でしょう。恐らく目標体重を10%減に設けていると思われるので、体重減少量の下限を設けており、それ以上は減らさないように設計された研究なので、この程度の体重減少に留まるだけの話です。体重の減り具合がコントロールされてしまっているのです。ちゃんと糖質制限食を続けていればもっと体重は減ると考えられます。

この研究の意図とは違うのに、それを糖質制限のデメリットのエビデンスに使うのは、明らかにおかしいです。この研究の結果は決して、糖質制限が1年以上の長期間で体重減少が得られないというエビデンスではありません。

この専門家はこの研究の設定を分かって、あえてこの図を出したのでしょうか。

「糖質制限食は1年以上の長期間の体重減少効果を示すエビデンスはない」と言っていますが、以前の記事「糖尿病に対する1年間の食事による生理的ケトーシスのパワー」では、糖尿病の患者さんですが1年後には平均で13.8kg減少しています。「糖質制限食 対 ちょっと糖質控えめ 12か月の戦い」では、12か月後にはちょっと糖質摂取量が増加しているにもかかわらず、6か月よりも体重減少が進行しています。

1年以上の体重減少効果のエビデンスはあります。

次の記事では他の2つの論文について言及します。

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