糖質と組み合わせた人工甘味料は、単独の人工甘味料よりも有害であるかもしれない

以前の記事「人工甘味料はブドウ糖に対する血糖値およびホルモン反応に影響を与えるかもしれない その1」「その2」では、人工甘味料は生理的に活性を示し、ブドウ糖による反応を修飾し、血糖値を上げ、インスリン増加を招くことを書きました。

今回は、20歳から45歳までの45人の健康な人を対象として、3つのドリンク(355ml)を7日間飲んだ影響を調べています。一つは人工甘味料(LCS)のスクラロースで甘くしたドリンク、もう一つはショ糖で甘くしたドリンク、そして人工甘味料のスクラロースで甘くしてマルトデキストリン(でんぷんから作られた糖質)と組み合わせたコンボドリンクの3種類です。(図は原文より)

上の図のAは、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)のインスリンと血糖値の推移です。 Bは7日間ドリンクを飲んだ前後の左がOGTTでの0~30分のインスリンの増加分の曲線下面積の変化、右が0~120分の増加分の曲線下面積の変化です。ドリンクを飲んだ後の血糖値は変化はありませんでしたが、0~30分のインスリンはコンボドリンクで分泌が増加していました。0~120分のインスリン分泌は人工甘味料のみのドリンクよりもコンボドリンクで多くなっていました。

Cの図は13〜17歳の青年を対象とした研究ですが、空腹時インスリン(μU/L)×空腹時血糖値(nmol/L)/22.5で計算されるインスリン抵抗性(HOMA-IR)で評価しました。どうしてこの年代の青年の研究が別に行われたかというと、思春期ではどうやらインスリン抵抗性が一時的に増加するようです。知りませんでした。

この思春期の青年の研究では3人中2人がコンボドリンクで空腹時のインスリン値が急上昇し、HOMA-IRレベルが3.5未満から12以上に上昇したために中止が勧告されました。

図Dはマルトデキストリンのみでの変化ですが変化はありませんでした。

さらにfMRIで脳の反応を分析すると、コンボドリンクでは甘みに反応する脳のいくつかの辺縁および中脳辺縁領域でインスリンの増加した曲線下面積と強い負の関係が示されました。つまりコンボドリンクでは甘みに対する脳の反応が低下すると考えられます。

つまり、たった7日間の糖質+人工甘味料のコンボドリンクは脳の甘味に対する感受性を低下させるとともに、急速に糖の代謝が変化し有害な影響を与えると考えられます。

そうすると、現在様々な企業が売り出しているダイエット目的の低糖質の食品やドリンクは有害である可能性があります。糖質の一部を人工甘味料に変更して糖質量(カロリー量も)を少なく見せる商品がいっぱいあります。糖質と人工甘味料の併用効果が2型糖尿病と肥満の発生率の増加に大きく寄与する可能性さえあります。

さらにサンプル数が少ないですが、思春期の研究は大きな意味があるかもしれません。体型を気にする女子が、低糖質のものと思って糖質+人工甘味料の食品、ドリンクを摂取することで、余計にインスリン抵抗性を増加させ肥満や高インスリン血症をもたらし、さらには様々な疾患をもたらす可能性もあるのです。

以前の記事「AYA世代女性は糖質制限を」で書いたように、15~39歳の思春期・若年(AYA)世代のがん患者で、多くは女性が占めています。もしかしたら、糖質+人工甘味料の食品、ドリンクによる高インスリン血症がAYA世代のがんの増加に寄与しているかもしれません。

糖質+人工甘味料のコンボになっている食品、ドリンクだけでなく、糖質を含んだ食品を食べる際に、人工甘味料だけのドリンクを飲むことも同じ作用があると思われます。

もちろん、今回の人工甘味料はスクラロースだけでの研究なので、他の人工甘味料がどのような影響があるかはわからないとは言えます。わからないので、どのように判断するかはそれぞれでしょう。しかし、敢えて人工甘味料を積極的に摂る必要はありません。

特に思春期では糖質制限だけでなく、人工甘味料制限が必要かもしれません。

 

「Short-Term Consumption of Sucralose with, but Not without, Carbohydrate Impairs Neural and Metabolic Sensitivity to Sugar in Humans」

「糖を含むスクラロースの短期消費は、ヒトの糖に対する神経および代謝の感受性を損なう」(原文はここ

8 thoughts on “糖質と組み合わせた人工甘味料は、単独の人工甘味料よりも有害であるかもしれない

  1. 人工甘味料で“フェイント”をかけられた人体が、糖質による甘味に過剰反応するという事なのででしょうか。

    人工甘味料のみ摂取では、血糖値上昇→インスリン追加分泌もほぼ無いことから、
    どうしても甘味が欲しい時、糖質制限を続けていくための手段として人工甘味料の利用もやむを得ない、との記述が宗田哲男先生の著書にあり納得しておりました。

    ただ、「糖質ゼロ」表示でも数%までの糖質含有は違法ではない上に人工甘味料で甘味を修飾されているでしょうから、有害の可能性がありますね。
    (Zeroコーラなどを飲んだ翌日の体重増加もそのせい?)

    自分で調理しても糖質を全くゼロにする事は不可能ですから、やはり人工甘味料は摂らないにこしたことはないのですね。

    1. 鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。

      様々な人工甘味料で調べないとわからないことも多いと思いますが、できる限り人工甘味料を避ける方が良いと思います。
      人口甘味料の強い甘味で脳が甘味に麻痺していくのかもしれませんし、糖質と一緒に摂る人工甘味料はインスリン分泌も増加するということは大きな問題となると思います。
      ファストフードでダイエットコーラを飲むことは全く意味がないというよりもさらに危険なのかもしれませんね。

  2. スーパー糖質制限をして5年です(69歳で、現在は釜池先生に近とと思います)。
    その位の年数で言うのもおこがましいですが、私の味覚を司るミトコンドリアは人口甘味料の甘さの質にNGを出します。脳内、体内の変化は知るよしもないですが。
    勝手な想像ですが、古代人の人は一口含んだけで吐き出すような気がします。
    血糖値が上がらない酒類といえどもアルコールにもNGです。
    健康な生活を送るには糖質摂取を少なくするのが、一番有効だとは思いますが、それとて必要条件で、十分ではないと思います。人生を楽しむという観点からすると、また別の問題だとは思いますが。
    清水先生のブログのテーマは、ご提示なさるデータを読み解けなくても、糖質制限をしている者として興味深く、自分なりの想像して楽しんでいます。

    1. 太田さん、コメントありがとうございます。

      ご自身の体の声を聞くというのは非常に重要だと思います。甘味はドラッグのように脳に作用してしまうかもしれません。
      それが人工であろうが天然であろうが。
      以前の記事「脳は砂糖と人工甘味料を区別できるのか? その2」で書いたように、
      定期的に人工甘味料の甘味にさらされると、脳の報酬系が活性化してしまう可能性があります。怪しいものにはできる限り近づかないことが良いのかもしれませんね。

  3. 砂糖や果糖ブドウ糖液糖は、人工甘味料より安いのか!!!

    人工甘味料だけ使うよりも安くなるから
    「人工甘味料 + 糖」の食品売るんだよな。
    エリスリトール以外の糖が入っている食品は買わない。

    1. らこさん、コメントありがとうございます。

      人工甘味料は単独では生理的作用がないと考えられていますが、糖質と一緒になると影響があるかもしれません。
      人工甘味料しか入っていない食品と別の食品の中の糖質を一緒に食べれば影響がある可能性があります。
      エリスリトールの研究はないので不明ですが、同じように影響を及ぼすかもしれませんね。

    1. mk7さん、コメントありがとうございます。

      どうでしょうか?と言われても…?
      人工甘味料が人体に何らかの影響はあると思っています。
      しかし、今回の論文はデータが食事アンケートですからデータの質は低く、
      しかもリスクはたった1.15倍ですから、当てにならない研究だと思います。(せめて2倍くらいないと)
      人工甘味料の危険性について訴えたい場合には都合よく使える論文ですね。
      答えになりましたでしょうか?

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