12日に行われたバルセロナ・マラソン(スペイン)の男子の部で、意外な「選手」が2時間8分57秒で優勝をさらった。ケニア出身のキプケモイ・チェスム(27)。彼は右腕に障害を持つパラリンピアン。マラソン経験はなく、レースにはペースメーカーとして参加していた。

 現地メディアなどによると、チェスムら3人のペースメーカーは1キロあたり2分57秒の設定で先頭集団を引っ張り、中間点を1時間2分48秒で通過した。

 30キロを過ぎて、2時間6分台の自己記録を持つ優勝候補のエチオピア選手がケガでレースを棄権。「ぼくの仕事は32キロまで先頭の選手を引っ張ることだったけど、気付いたら誰もついてこなかった。だから、最後まで走っちゃおうと思った」とチェスム。「調子は良かったけど、まさかこんな結果が出るなんて。うれしすぎるよ」とレース後にコメントした。

 国際パラリンピック委員会(IPC)によると、チェスムは幼い頃にけがをして右手に障害を負った。2012年のロンドン・パラリンピックの陸上にケニア代表で出場し、陸上の800メートルで6位、1500メートル7位の成績だった。