果糖過剰摂取は衝動的な行動、攻撃性、注意欠陥・多動性障害(ADHD)などを引き起こす可能性がある

多くの動物は飢餓から自分を守るため、進化に基づく生存するための経路があります。この生存するための経路は、果糖の代謝に起因し、脂肪、肝臓、血液への脂肪の蓄積、インスリン抵抗性の発症、エネルギー消費の減少につながる生物学的経路を活性化します。

また、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、双極性障害、攻撃的な行動など、いくつかの行動障害は、砂糖の摂取と肥満に関連しています。

果糖の過剰摂取と行動障害の関連付けの理由は不明です。今回の論文は、これらの行動障害のリスクを高める上で、砂糖と高果糖コーンシロップ(HFCS)の成分である果糖と尿酸(果糖代謝物)の役割の仮説を示しています。

進化の過程の狩猟採集生活では、食料を獲得することに苦労することも多かったでしょう。偶然に見つけた果糖を豊富に含む果物やハチミツは非常に貴重なものだったと考えられます。そして生存するためにこの果糖を有効に利用、代謝する生物学的変化が起きたのではないかと考えられます。脂肪、肝臓、血液への脂肪の蓄積、インスリン抵抗性の発症などの変化です。これらの生物学的変化は、冬眠または長距離移動の準備をしている動物に生存上の利点を提供し、それが昔の人間に生存上の利点を提供したという証拠もあります。

以前では果糖は果物やハチミツ、そして内因性に産生されるものに限られていました。

しかし、現代では果糖は精製された砂糖や異性化糖などとして大量に含まれ、果物に含まれる果糖も大幅に増加し、飲み物やお菓子なども含めて、普段の食生活では大量摂取となっています。

実際、果糖の摂取量は18世紀以来40倍に増加したと推定されています。

最近の研究では、果糖摂取がメタボリックシンドロームの発症と強く関連している理由は、果糖摂取が進化に基づく生存のための経路を活性化し、食べ物を探し求める採餌行動と脂肪としてのエネルギーの貯蔵を刺激することであることが示されています。

人間をはじめ動物は、絶食の最初の段階では、蓄積した脂肪がエネルギー源になるので穏やかで、時間の多くを休息に費やします。しかし、脂肪の蓄積がなくなると、エネルギー源として筋肉からのタンパク質に依存する必要が出てきます。これは非常に危険な段階です。動物は食べ物を見つけられない限り、死んでしまうからです。この段階では、コルチゾールと尿酸が血中で著しく上昇し、動物は興奮します。血中の尿酸の上昇は採餌反応と相関することが報告されています。つまり、尿酸は採餌反応の「アラーム」とも考えられています。

この採餌行動は生存にとって非常に重要であり、採餌を成功させるには、特定の行動が必要です。たとえば、動物は、よく知らない場所であっても、捕食者の危険にさらされる可能性のある場所でも、食べ物と水を探す必要があります。このように、採餌は、リスクの高い行動、衝動性、新規性の追求、自発運動、迅速な意思決定、時には攻撃性を必要とする探索行動なのです。食べ物が見つかった場合は、十分な食べ物が摂取されるまで大食いし、さらに食べ物を探し続けます。

果糖は細胞内のエネルギー(ATP)を低下させるため、飢餓と同様の反応を引き起こします。採餌反応は、生存反応として、衝動性や攻撃性などのリスクの高い行動を刺激します。さらに、この行動の過剰活性化は、ADHDや双極性障害などの状態につながります。

前頭前野皮質活動の低下の結果は衝動性の増加ですが、この点に関して、人間での研究は、ブドウ糖が前頭前野の活動を増加させるのに対し、果糖はその逆であることを示しています。(ここ参照)つまり、果糖は衝動性を増加させるのです。

さらに果糖によってもたらされた高尿酸血症は、採餌反応の一部と見なされる可能性のある衝動性の増加、脱抑制、興奮を求める行動と関連しています。

砂糖の摂取は、食物探索、衝動性、多動性などの採餌反応を引き起こすことも報告されています。

ある研究では、高度に加工されたファストフードに対する依存的な行動は、過食症、うつ病、衝動性の増加、ADHDに関連しています。別の研究では、ADHDのある子供は、ADHDのない子供よりも糖質入りドリンクの摂取量が多いことが報告されています。高尿酸は、多動性、注意力の低下、衝動性、怒りのコントロールの問題を抱える子供と大人にも存在するという報告もあります。

果糖は単に食事から得られるのではなく、内因性に肝臓と脳で生成される可能性があります。つまり糖質過剰摂取では行動障害を引き起こす可能性があると考えられます。

逆に言えば、糖質制限食やケトン食が双極性障害やADHD、攻撃性などを改善する可能性があります。

もちろん大人もですが、子供には砂糖や異性化糖など果糖を含んだ飲み物、食品を極力与えるべきでないでしょう。赤ちゃんを産んだばかりのお母さんも母乳に果糖が出ないように、果糖過剰摂取を控えるべきかもしれません。

糖質過剰症候群

「Fructose and uric acid as drivers of a hyperactive foraging response: A clue to behavioral disorders associated with impulsivity or mania?」

「過度に活動的な採餌反応の原動力としてのフルクトースと尿酸:衝動性または躁病に関連する行動障害の手がかり?」(原文はここ

2 thoughts on “果糖過剰摂取は衝動的な行動、攻撃性、注意欠陥・多動性障害(ADHD)などを引き起こす可能性がある

  1. 葡萄やメロンなどは「甘~い!」イコール高品質で高価で売買され、生産者はさらに甘くする
    品種「改良」を進めています。

    果物は健康的なイメージもある為、果糖の恐ろしさを意識する人は少ないと思われます。

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      果物は健康的だと思われがちですが、本当に現在の果物が健康的な食材かどうかは疑問ですね。必要以上に甘すぎますね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です