極端な運動は耐糖能障害やミトコンドリアの機能障害につながる可能性がある

高強度インターバルトレーニング(HIIT)はミトコンドリアの酸化能力を増加させ、運動能力を向上させ、ブドウ糖の代謝を改善し、脂肪を燃焼させると言われています。私も時々行っている「タバタ式」もHIITの一つです。高齢者にも効果があると言われています(「駅伝3連覇の青山学院大学もやっていた タバタ式トレーニング」「高齢者ができるかどうかはわかりませんが、高強度インターバルトレーニングが最もアンチエイジングに効果的」参照)

もちろん、高強度なので私は毎日はやりません。やったとして週に2回程度です。このような高強度のトレーニングを毎週どんどん時間を増やしてやったらどうなるのでしょうか?上限を超えるとどうなるのでしょうか?

今回の研究では、有益な治療効果に関連する運動量の上限を超えたときにどうなるかを調べるために、4週間にわたる運動負荷が徐々に増加するトレーニングを行いました。

対象は健康な若い6人の女性と5人の男性で。 レクリエーション活動が活発で、定期的に持久力と筋力トレーニングを実施している人です。(図は原文より)

上の図は方法の概要です。4週間にわたって一定時間エアロバイクに乗りました。最初のフェーズでは、1週間で36分間、4〜8分間隔で高強度のペダリングを行いました。第2段階では、ワークアウトの期間が90分に延長されました。そして第3フェーズでは、1週間で152分に増加しました。最後はリカバリーの期間です。

結果の概要は上の図のようです。第3フェーズではパフォーマンスもミトコンドリア機能(呼吸)も耐糖能も低下しました。ミトコンドリアの呼吸は第2フェーズよりも第3フェーズで40%も減少していました。リカバリー後ではミトコンドリアの呼吸は回復傾向でしたが、第2フェーズよりも25%も低いままでした。

上の図は耐糖能についてです。Aから順に経口ブドウ糖負荷試験の血糖値の曲線下面積、血糖値の推移、Cは飛ばして、Dはインスリンの曲線下面積、HOMA-IR、HOMA-β、Cペプチド、筋肉全体のGLUT4、細胞膜のGLUT4です。血糖値の曲線下面積はET後に大きく増加しました。インスリン値、分泌能もET後に低下していました。肝臓のインスリン抵抗性は変化していませんでした。

GLUT4は運動をするとインスリンと関係なく細胞膜上に顔を出してブドウ糖を取り込みます。ETでのブドウ糖の取り込み障害とは対照的に、筋肉全体のGLUT4が増加し、ET後に最も豊富でした。しかし、細胞膜上ではGLUT4全てのフェーズで変化していませんでした。つまり運動強度を増加させるとGLUT4は増加するのに、細胞膜上に出てくるのは強度と関係ないことになります。

ミトコンドリアの機能はETで低下したのに、脂肪酸化率は増加していました。

 

上の図はAから順に、最大ではない負荷の間での血糖値、HIIT中の最後の血糖値と乳酸値、筋肉のグリコーゲン、ヘキソキナーゼ活性、グリコーゲン合成です。最大ではない負荷での血糖値はどのフェーズでも差はありませんが、HIIT中の血糖値と乳酸値の両方が最大ではない強度と比較して増加しました。 しかし、この増加は、トレーニング負荷が増加するにつれて急激に弱まり、ET後(第3フェーズ)に最低になりました。 リカバリー後血糖値と乳酸値はグーンと高くなっています。

骨格筋のグリコーゲンはなぜか第1フェーズで少なくなっています。よくわかりません。ヘキソキナーゼのET後の増加、グリコーゲン合成の増加もよくわかりません。

しかし、パフォーマンスは上がるようです。

上の図はパフォーマンスです。トレーニング強度が増加するにつれパフォーマンスは増加し、リカバリーの後、トレーニングの負荷が大幅に減少すると、パフォーマンスがピークに達しました。

ただ、このトレーニングの第3フェーズでも1週間に152分、つまり2.5時間でしかありません。高強度とはいえ、この程度の時間がここまで影響するのか?という疑問もあります。

また、糖質制限をしている場合はどうなるかもわかりません。興味深いですね。

過度の運動は肝臓のインスリン抵抗性はなくても、筋肉のインスリン抵抗性を起こすのは、筋肉の炎症によるもので、筋肉の細胞を守るためのメカニズムなのかもしれません。そうしてインスリン抵抗性を起こした筋肉は高強度の運動なので、エネルギーはブドウ糖をメインにするのでエネルギーが少なくなりミトコンドリアの機能低下を起こすのかもしれません。酸化ストレスに対する防御なのかもしれません。

糖質制限をしているとかなりの高強度まで脂肪をエネルギーにできるので、その分ミトコンドリアの機能低下は起きにくいのではと推測します。

しかし、一時的な耐糖能障害、ミトコンドリアの機能低下はあったとしても、パフォーマンスは上昇しているので、トレーニングの過渡期であり、そのままトレーニングを続ければ耐糖能やミトコンドリアの機能はどのようになるのかはわかりません。運動強度の増加に対しての適応するための段階であるのかもしれません。負荷を上げていくスピードによるのかもしれません。

エリートアスリートではどうなのでしょうか?それは次回以降の記事で。

 

「Excessive exercise training causes mitochondrial functional impairment and decreases glucose tolerance in healthy volunteers」

「過度の運動トレーニングは、ミトコンドリアの機能障害を引き起こし、健康なボランティアの耐糖能を低下させる」(原文はここ

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