糖質の中でブドウ糖と果糖はその代表的なものですが、全く違うものです。当然体の中に入ったときに示す働き、反応も異なります。
今回の研究では、平均年齢13~14歳(11〜18歳)の子供を対象にしたものですが、脂肪肝の人とそうでない人を比較しています。
1日の推定エネルギー量の33%を果糖またはブドウ糖の飲料として提供し、食事(50%炭水化物、30%脂肪、20%タンパク質)は3食4時間ごとに提供しています。採血を2時間ごとに行い分析しました。当然、脂肪肝の子供は肝臓の脂肪が多く、肝機能障害があり、インスリン値もインスリン抵抗性も高く、炎症所見も認められました。(図は原文より)
上の図は左が脂肪肝のない子供、右が脂肪肝の子供です。上側が血糖値、下側がインスリン値です。実線が果糖摂取群、点線がブドウ糖摂取群です。ブドウ糖の方が食後の血糖値スパイクが大きくなっていますが、脂肪肝の方がその大きさが大きくなっています。脂肪肝ではインスリン抵抗性があるので当然、インスリン値も大きく増加しています。果糖では血糖値やインスリン値の増加はブドウ糖よりは少ないですが、それでも脂肪肝では大きくインスリンが増加しています。さらに血糖値は脂肪肝の有無にかかわらず、果糖群の方が23時間後(次の日の朝)でもブドウ糖群よりも高くなっています。
上の図は遊離脂肪酸です。脂肪肝ではない人では、朝食によって誘発されたインスリンの増加後に減少し、日中は抑制されたままであり、その後、空腹時に上昇しました。脂肪肝の子供では、予想される持続的な食後の減少の欠如を認め、脂肪肝のない子供と比較した全体的なレベルの上昇が見られました。果糖とブドウ糖の違いはあまりなさそうです。
上の図は一番上だけ説明します。中性脂肪の推移です。脂肪肝では空腹時から中性脂肪が高く、さらに食事で上昇しています。しかも果糖摂取群の方が大きく増加しています。脂肪肝でない子供でも果糖の方が中性脂肪が増加しています。しかも、脂肪肝の有無にかかわらず、次の日の朝でもブドウ糖摂取群よりも中性脂肪値が高いのです。
上の図はHDLです。ベースラインでも40以下なので、どちらのグループも健康的には見えませんね。脂肪肝の有無にかかわらず、果糖摂取群でHDLが低下を示しています。23時間後にも戻っていますが、1日の半分程度は低下を示しているように見えます。HDLの中性脂肪含有量が3〜6%増加すると、HDLのapoA-1の異化率が26%増加するそうなので、中性脂肪の増加の影響でHDLが減少しているのでしょう。
1日果糖を増やしただけで、子供でさえ脂肪肝の有無にかかわらず、空腹時血糖は上昇し、中性脂肪も上昇し、HDLが減少します。毎日のようにこのようなことが起きているとしたら恐ろしいことです。若いということで、様々なリカバリーが成されて大きな問題にならないのかもしれませんが、目に見えないところで様々な有害な影響が少しずつ蓄積するでしょう。
少しでも肥満傾向を示しているのであれば、それはすでにインスリン抵抗性が高くなっていると考えて良いでしょう。そのような子供では悪影響が強く出る可能性があります。そうでなくても子供に果糖の入った飲み物やお菓子などを与えるのは止めた方が良いでしょう。子供への果糖入りドリンクの販売規制をすべきでしょう。
企業の戦略の脱水予防、水分補給の言葉に騙されて、果糖たっぷりの飲み物を子供に与えていませんか?
糖質過剰症候群
「Children with NAFLD Are More Sensitive to the Adverse Metabolic Effects of Fructose Beverages than Children without NAFLD」
「非アルコール性脂肪肝疾患のある子供は、ない子供よりも果糖飲料の代謝への悪影響に敏感である」(原文はここ)
喫煙は、CMが禁止されたり心臓病や癌や脳疾患のリスクがパッケージに記載されるようになりましたが、果糖も同レベルか、もしかしたらそれ以上のリスクがありそうですね。
鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。
タバコ同様にパッケージに何らかの警告をすべきだと思いますし、購入には制限が必要だと思います。