フレイルにならないために自分で自分の体に責任を持つ

新型コロナウイルスにより、自宅からあまり外に出ない高齢者もいるかもしれません。しかし、一人でまたは夫婦や家族と外に出たからと言って場所を選べば感染リスクが上がるとは思えません。逆に活動性の低下は免疫力も低下し、病気や死亡リスクを上げてしまうと考えられます。外出自粛で新型コロナウイルスには感染しなかったけど、体力が弱り動けなくなったり、他の原因で死んでしまっては何の意味もないと思います。

フレイルという言葉が近年よく使われるようになりました。フレイルは「Frailty 」が語源です。その日本語訳についてこれまで「虚弱」「老衰」「衰弱」 「脆弱」といったものが使われていたようです。簡単に言えば、加齢により心身が衰弱した状態です。

当然老化は誰しも避けることができません。ケガや病気などの回復力もだんだんと低下していきます。しかし、老化は避けられないとしても、遅らせることは可能です。逆に言えば早めることも可能です。

しかし、多くの高齢者はフレイルになった状態で病院へ行き、様々な症状を訴えます。または、様々な慢性疾患で頻繁に医師の診察を受けているにも関わらず、その疾患とは別のことであるかのようにフレイルについて無視されていることも多いでしょう。

人間の体は様々な複雑なシステムが絡み合い、それらのいくつものシステムの間の調節不全が起きて、フレイルが起きていると考えられます。

見た目の衰えは、実際には目に見えないもっと生物としての根幹の細胞レベルの異常や慢性炎症、微量な栄養素の欠乏、様々なホルモンの異常などから起きていると考えられます。

ミトコンドリアの機能障害を起こせば、エネルギーが十分にできないので、体を動かすことが難しくなります。

そのような目に見えないことを意識して毎日の生活を自分自身で責任をもって送ることが重要だと思います。

そこで重要なのはやはり食事と運動です。加齢とともに多くの人は疲れやすくなってくるでしょう。あちこち痛くなってくるでしょう。そうなると横になって休みがちになります。そうするとますます筋肉、筋力が低下し、悪循環になります。(「活動性の低下によって失ったものは簡単には戻らない」「とにかく可能な限り動きましょう」参照)

動かないとお腹も減りません。粗食や野菜がヘルシーという高齢者も多く、白米と野菜で食事を済ませている人も多いでしょう。動物性のタンパク質が少ないので、体を作る材料も減少してしまいます。

今回の研究では糖尿病と診断されていない85〜94歳の女性で経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を行っています。(図は原文より)

上の図の左がOGTTの血糖値の推移、右がインスリンの推移です。緑の線がフレイルではない人、黄色がフレイルの前段階、ピンクがフレイルの人です。そうすると、ベースラインはどのグループも同じですが、明らかにフレイルの人はOGTTでの血糖値1時間値、2時間値が高く、3時間値でも他のグループよりもかなり高値のままです。さらにインスリンも同様でフレイルの人はかなりインスリンの分泌が増加しています。

70〜79歳の女性における、ベースラインでの生理学的システムの調節不全の数によるフレイルの有病率を示したものです。そのシステムのここでのマーカーとは、炎症、貧血、内分泌系(インスリン様成長因子(IGF-1)、DHEAS、HbA1c)、微量栄養素欠乏症、脂肪量、細かい運動速度の遅さという因子です。そのシステムの異常の数が多いほど当然フレイルの有病率は上がります。

当然、これらのシステム異常は様々な疾患の発症リスクを増加させるでしょう。また、これらのシステムの数、システム間の調節不全は最終的には機能や回復力の喪失に至るでしょう。

そうならないために自分で自分の体には責任を持つ必要があります。

OGTTの結果だけを見ても、どうして血糖値が上がるのか、どうしてインスリンが増加するのかを考えるべきです。血糖値を下げる薬で対応しても根本的な解決が得られません。ただ目隠ししているだけです。

糖質過剰摂取は血糖値を上げ、炎症を起こし、ミトコンドリアの機能障害を起こします。

現代の生活は意識しないと活動量が非常に少なくなります。使わない機能はどんどん衰えます。衰えた機能を取り戻すには非常に多くの年数がかかりますし、負荷をかけなければ戻ってきません。老化した体にそのような負荷をかけられるかどうかは非常に疑問です。だから、高齢者が衰えたら、それを改善するのは至難の業です。

まずはそうならないように予防が最も重要です。よく、体重減少を目的に糖質制限を行う人がいます。それはそれで良いのですが、糖質制限が運動しなくても痩せられるという理由で選択している人もいるようです。しかし、運動は糖質制限とは別の次元で必要なものです。糖質制限そのものでは筋肉は減りませんが、運動しなければ筋肉は減ります。

40歳を過ぎたら、とにかく動く習慣を身につけるべきでしょう。私のようにマラソンまでする必要はないでしょうが、せめて歩く程度の運動の必要はあります。糖質制限をし、タンパク質をしっかり摂り、多様な微量の栄養素も必要でしょう。運動と食事の両方が必要です。

 

これらのことは誰かがやってくれることではありません。自分でやらなければならないことです。医療に頼っても限界があります。人生100年の時代です。自分の体には自分で責任を持ち、フレイルにならないようにすべきでしょう。そうしないと高齢になって、病院にばかり受診することが日課になってしまいますし、あちこちが痛かったり、誰かの手を借りないと活動できない状態になってしまいます。

糖質過剰症候群

「The physical frailty syndrome as a transition from homeostatic symphony to cacophony」

「恒常性のシンフォニーから不協和音への移行としての身体的フレイル症候群」(原文はここ

2 thoughts on “フレイルにならないために自分で自分の体に責任を持つ

  1. まさに、人生の基本は活動性の維持以上でも以下でも無いですね。

    しかしおっしゃる通り、野菜とご飯だけの粗食が健康的と考える人は多そうです。
    でも煎餅や饅頭なんかはお茶飲みと称して平気で召し上がり、更に「飴ちゃん」を人にあげることがコミュニケーションになっている場合も、

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      確かに間食を摂っている人は多いのでしょうね。しかも間食の定番は全て糖質たっぷりですからね。

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