とにかく可能な限り動きましょう

私の外来を受診する患者さんの中で、時々「痛みで2~3日安静にしていた」という方がいらっしゃいます。私はそんなとき「できる限り安静にしないでください」、「できる限り動いてください」と言います。

特に高齢者では安静にしていると、どんどん筋肉量、筋力が衰えてしまうからです。若い人であっても、たった5日でも筋肉の量と高度が低下するという研究もあります。(ここ参照)

他の研究でも1週間という短期間での筋肉の変化を調べています。対象は平均23歳の健康な男性です。入院の効果を模倣するために、被験者は7日間の厳密な安静とされました。1日目の朝からベッドにとどまりました。日中、すべての活動はベッドで行われました。毎朝8時に起こされ、夜11時に消灯となりました。その結果は次のようです。(図は原文より)

上の図はAが除脂肪体重、Bは大腿の筋肉(大腿四頭筋)の断面積です。どちらも1週間の安静後有意に低下しました。除脂肪体重は1.4kg、2.5%失いました。体幹で1kg、下肢で0.28kg減少でした。1週間の安静中に体脂肪量は変化しませんでした。

大腿の筋肉の断面積は3.2%の低下でした。大腿筋全体の断面積は2.2%低下しました。

上の図のAは高インスリン-正常血糖クランプという、インスリン感受性の測定です。Bは1週間の推移で、■が血糖値、□がインスリン値です。CとDは72g炭水化物(エネルギー摂取量の52%)、19g脂質(31%)、24gタンパク質(17%)の食後の血糖値とインスリン値の変動です。Cは血糖値の最初と1週間後です。Dはインスリン値の最初と1週間後です。

インスリン感受性は1週間の安静後に29%低下しました。1週間の推移で、血糖値の変化はありませんが、インスリン値は徐々に増加しています。インスリン濃度の曲線下面積も有意な増加を示しました。その結果、インスリン抵抗性のHOMA-IRは、1週間で1.9から3.1に増加しました。

たった1週間の安静で、筋肉量、筋力、および身体能力が大幅に低下することが観察されました。さらに、全身インスリン抵抗性の発症と骨格筋の酸化能力の強い低下をもたらしました。

この筋肉を取り戻すには、1週間では無理でしょう。特に高齢者であれば数か月かかるかもしれません。

新型コロナウイルスであまり外出が思うようにならなかったときに、コロナ太りという言葉が作られましたが、活動が少なくなりエネルギー消費が少なくなっただけでなく、筋肉が減少しインスリン抵抗性が増加したのかもしれません。

人間の体は使用していないものは、どんどん削減していきます。刺激が必要です。

まずは筋肉を落とさないようにすることが一番重要です。多少の痛みで安静にすることは逆に筋肉を弱らせ、さらに痛みを生み出す可能性もあり、悪循環となってしまいます。しっかりとタンパク質を摂取して、糖質制限をして、筋肉を維持しましょう。タンパク質摂取だけではダメです。(それについては次回以降で)

 

「One Week of Bed Rest Leads to Substantial Muscle Atrophy and Induces Whole-Body Insulin Resistance in the Absence of Skeletal Muscle Lipid Accumulation」

「1週間の安静は、実質的な筋萎縮を引き起こし、骨格筋脂質の蓄積がない場合に全身のインスリン抵抗性を誘発する」(原文はここ

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