結構久しぶりの糖質制限否定の記事だけど その3 糖質制限と体重減少

前回までの「その1」「その2」に続いて、今回は糖質制限と体重減少についてです。

もちろん、突っ込む記事はこれです。この記事の3~4ページ内容を読むと次のように書かれています。

糖質制限は比較的すぐに減量を実感できるので、良いと信じている人が多い印象があります。しかし、そもそも糖質制限ダイエットによる減量効果が一時的であり、長期的に維持することが難しいことはあまり知られていません。

炭水化物の摂取量を控える糖質制限と、脂質の摂取量を控える低脂質ダイエットを比較した研究があります。その結果を見ると、確かに6カ月までの短期的な追跡においては、糖質制限ダイエットに軍配が上がることがわかります。

そして一つの図が載っています。(図はここより)

次のページに行くと次のように書かれています。

しかし1年経つと、この2つのグループの間での違いはなくなってしまいました。

そして図が載っています。(記事の中の図はこの論文の図を切り取っています)(図はここより)

非常に似た図なので、騙されるかもしれませんが、この2つの図は別々の研究です。全く別の研究をあたかも同じ研究の続きのような表現を意図的にしています。実際には彼の主張のためには最初の研究は必要ありません。

最初の図の研究は、低脂肪食と低炭水化物食の比較をしようとしたものです。低脂肪食では1日あたり500kcal減少したカロリー制限を含み、総エネルギーの30%以下が脂肪に由来する予定でした。低炭水化物食は炭水化物の摂取量を1日あたり30g以下に制限するように指示されました。

実際には、次のようです。

めちゃくちゃです。エネルギー摂取量は低炭水化物食の方が500kcal近く減っていますが、低脂肪食は270kcalほどの減少です。また、脂肪由来のエネルギーの割合はベースラインと変わりありません。低炭水化物食では糖質制限とはほど遠い37%もの炭水化物を摂取しています。30g以下の炭水化物を指示されていたのに、実際には150gもの炭水化物量です。この研究のデザインと実際の食事があまりにも違い過ぎて分析しても仕方ないでしょう。恐らく申告した量も適当かもしれません。

もう一つの研究では、12か月研究を続けていますが、低炭水化物食はアトキンスダイエットなので、糖質制限に非常に近いものです。最初の2週間は、炭水化物の摂取量を1日あたり20 gに制限し、その後、安定した望ましい体重が得られるまで徐々に増やしていきます。つまり、体重減少量が設定されている食事です。設定減少量は不明です。また、実際にどこまで炭水化物摂取量が増やされたかはわかりません。一方、従来の食事群は高炭水化物、低脂肪、低カロリーの食事で、女性の場合は1日あたり1200〜1500 kcal、男性の場合は1日あたり1500〜1800kcalで、エネルギーの約60%が炭水化物、25%が脂質、15%がタンパク質です。

さて、この研究の問題点は脱落者の多さです。低炭水化物食群では33人中20人、通常食群では30人中17人が残っていました。つまり記事にも書いてある通り、低炭水化物群の約40%、通常食群の約43%が脱落しているのです。そして、恐らくやりたくもない食事制限をさせられてどんどん脱落して、残った人も半年もすればダレてきていい加減になっている可能性は否定できません。そうすれば徐々に体重が戻ってくるのは当然でしょう。

上の図は尿中のケトン体を測定しています。糖質制限食開始直後は、尿中のケトン体も陽性となります。その後尿中ケトン体は減っていき、やがて陰性となることが多いですが、血中のケトン体の量にもよるでしょう。この図の尿中ケトン体が陽性の人の割合が最大でも60%前後ですので、もしかしたらちゃんとやっていなかった人が結構な割合でいるかもしれません。また、12週間後から徐々に陽性の割合が低下して34週では10%程度ですが、これがちゃんとやっていてケトン体が陰性化したのか、それともいい加減にやる人が増加して陰性化した人が増えたのかはわかりません。

もちろんしっかりと糖質制限をしていても多少の体重の戻りがあることはあるでしょう。しかし、この研究の参加者のBMIは34程度あり、体重は平均で98kgです。普通の糖質制限をすれば軽く10kg減はするはずです。それが最大(6か月)で7kg減にとどまっていることを考えれば、ちゃんと糖質制限をやっていなかったのではないかと思われます。

以前の記事「2型糖尿病に対する糖質制限の長期的効果 2年間でも圧倒的! その1」でも書いたように、ちゃんとやれば2年間でも体重の10%減を維持できます。(まあ、これでも体重減少量は少なく過ぎでしょうけど。アメリカ人は日本人よりも痩せにくいのは確かなのかもしれませんが。)

多くの糖質制限をしている方は体重が減少し(もちろんもともと痩せている人は体重減少はそれほどないかもしれませんが)、そのまま糖質制限を続けている以上はほとんどリバウンドを認めないと思います。私も糖質制限で2か月で8kg減、その後減少を続け最大で18kg減です。現在は夏場は18kg減のままか1kg増、冬場は2~3kg増という状態です。

記事には「糖質制限ダイエットは長期的に続けることが難しい食事法であることを意味しています。」と書かれていますが、これは彼の思い込みです。自分からではなく他人にやらされる糖質制限は長く続かない人もいるでしょう。しかし自発的にやる糖質制限は多くの人が続けられると思います。そもそも糖質制限はダイエット法ではありません。

さらに突っ込みは続きます。

糖質過剰症候群

2 thoughts on “結構久しぶりの糖質制限否定の記事だけど その3 糖質制限と体重減少

  1. 雑誌などの糖質制限懐疑派の記事でも、真面目に読むのがアホらしくなるくらい、生理学的な事実と、糖質制限実践者の心の問題(つい糖質を摂ってしまいがち、など)がごちゃ混ぜになってる事が多い印象です。

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      この記事の著者は明らかに自分では何も試していないでしょう。
      糖質制限をやっている人にはアホらしくても、やっていない人は騙されてしまいます。

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