前回の記事「結構久しぶりの糖質制限否定の記事だけど その1」に続いて、今日もこの糖質制限否定記事への突っ込みを入れたいと思います。(記事はここ)
3ページには次のように書かれています。
「肉は食べすぎると大腸がんのリスクを増やしてしまうなど健康に悪影響があります」
肉、特に赤肉と大腸がんの関係は気にされている人も多いかもしれません。実際のところはどうなのでしょうか?
実際のところ、肉を食べる群と食べない群でランダムに割り当てて何年も行う研究など不可能です。ましてやがんが発生するまで数年では評価できません。つまり、肉と大腸がんのリスク評価は食事アンケートという非常に質の悪いデータで分析する以外にないのです。
そうすると次のようなことが起こります。下の表は赤肉の摂取量に応じて5つのグループに分けたときのそれぞれの状態です。(表はここより改変)(「エビデンスの難しさ その2 肉はあなたにがんをもたらすか?」参照)
赤身肉の総摂取量五分位 | |||||
---|---|---|---|---|---|
Q1 | Q2 | Q3 | Q4 | Q5 | |
年齢(年) | 53.8 | 52.6 | 52.5 | 52.5 | 52.2 |
赤肉の総摂取量(1食分/日) | 0.22 | 0.62 | 1.01 | 1.47 | 2.36 |
身体活動(MET-h / wk) | 27.5 | 22.7 | 20.2 | 18.8 | 17.2 |
BMI | 24.7 | 25.3 | 25.5 | 25.7 | 26.0 |
現在の喫煙者(%) | 5.0 | 7.3 | 9.8 | 11.3 | 14.5 |
糖尿病(%) | 2.0 | 2.0 | 2.2 | 2.4 | 3.5 |
高血圧(%) | 19.5 | 19.7 | 19.3 | 19.6 | 20.2 |
高コレステロール(%) | 14.8 | 11.1 | 9.7 | 9.0 | 7.9 |
糖尿病の家族歴(%) | 19.5 | 18.6 | 19.1 | 20.0 | 19.3 |
心筋梗塞の家族歴(%) | 35.1 | 31.8 | 30.9 | 31.4 | 30.0 |
がんの家族歴(%) | 33.7 | 34.5 | 35.0 | 33.9 | 33.6 |
現在のマルチビタミン使用(%) | 49.1 | 42.5 | 40.3 | 39.5 | 36.6 |
食事摂取量 | |||||
総エネルギー(kcal / d) | 1659 | 1752 | 1886 | 2091 | 2396 |
アルコール(g /日) | 8.4 | 10.7 | 11.2 | 12.4 | 13.4 |
フルーツ、サービング/ d | 2.83 | 2.35 | 2.21 | 2.13 | 2.04 |
野菜、サービング/日 | 3.29 | 2.89 | 2.91 | 2.97 | 3.07 |
全粒穀物、サービング/ d | 1.93 | 1.58 | 1.50 | 1.51 | 1.48 |
ナッツ、サービング/ d | 0.45 | 0.45 | 0.44 | 0.47 | 0.49 |
マメ科植物、サービング/ d | 0.45 | 0.38 | 0.39 | 0.43 | 0.47 |
乳製品、サービング/日 | 1.65 | 1.80 | 1.89 | 2.02 | 2.14 |
魚、サービング/ d | 0.55 | 0.43 | 0.38 | 0.36 | 0.32 |
家禽、サービング/ d | 0.64 | 0.58 | 0.55 | 0.55 | 0.53 |
赤肉の消費量が最も多い人は、最も少ない人と比べて、運動する時間が少なく、肥満で、タバコやアルコールの量が多く、糖尿病になる割合が高く、1日のエネルギー摂取量が多く、フルーツや野菜が少なめで、魚の消費量も少なく、ビタミン剤の使用が少ないのです。
こんなにも条件が違う人を比較して、しかも食事アンケートはウソをついているかもしれないし、過少申告や過大申告かもしれないという非常に質の悪いデータを用いて、やっと数%~数十%のリスク増加の結果が出ているのです。この数字に大きな意味はないでしょう。
さらに以前の記事「赤肉や加工肉は本当に悪いか?」で書いたように、赤肉および加工肉の摂取と全死因死亡率や心血管疾患や糖尿病のリスクを調べたメタアナリシスでは、リスクの非常にわずかな低下に関連するという確実性の低い証拠が見つかりました。
また、「赤肉には発がん性があるのか? その1」で書いたように、WHOのがんの専門の組織であるIRACが分析し、その評価に使用した文献は800以上で、その中から赤肉と大腸がんの関係は14件のコホート研究が選ばれました。14件中7件で赤肉の高消費量対低消費量で差があり、大腸がんに関連しているという結果になりました。15件のケース・対照研究で7件が高消費量対低消費量で大腸がんに関連ありという結果です。つまり合わせると、29件の研究で大腸がんと関連があるというのは14件とおおよそ半分ですが半分以下です。5分5分です。
肉が大腸がんと関連しているなら、ベジタリアンは非常に大腸がんのリスクが低いはずです。しかし「肉が大腸がんのリスクを増加させるなら、ベジタリアンは?」で書いたように、ベジタリアンはベジタリアンではない人よりもリスクが何と49%も高いことを示しています。
肉を食べることは、大腸がんと関連しているとは全く言えないと思います。それよりも糖質の方ががんをもたらすと思います。糖質はがんのエサです。
次回も突っ込みたいと思います。
糖質過剰症候群