前回の記事でフェリチンが高値であるとインスリン抵抗性が増し、空腹時高血糖や2型の糖尿病を発症するリスクが高くなることを書きました。
でも、なんででしょう?私の浅はかな知識で精いっぱい考えました。
一つの仮説は、やはり鉄の毒性でしょうか?
鉄は非常に重要なものであると同時に、非常に危険なものでもあります。だから、体の中では毒性を示さないように、余った鉄はフェリチンのようなたんぱく質に厳重に閉じ込められています。鉄が足りなくなると、そのフェリチンがオートファジーを受けて鉄を放出します。そして、以前はフェリチンは非常に安定しているという仮説が考えられていました。しかし、実際には鉄が十分にある場合でもフェリチンは分解されて、鉄を放出していることが分かりました。
そうすると、やはりフェリチンが多いと、鉄が多くなり、その分酸化ストレスが多くなり、インスリン抵抗性にかかわってくるという図式も考えられます。
もう一つの仮説は原因と結果が反対であることです。
フェリチンが多いからインスリン抵抗性、高血糖、メタボリックシンドロームになるのではなく、もともとメタボになりやすそうな人、高血糖やインスリン抵抗性を示しそうな人の食事は糖質過多です。そうすると、体に炎症を起こしやすくなります。いわゆる慢性炎症です。炎症を起こすとフェリチン値が高くなるので、辻褄は合いそうです。もちろん、ご紹介したいくつもの研究でも炎症とフェリチンのことを考察していましたが、いまいちよくわかりません。
疑問があります。フェリチン値ですが基準値(単位:ng/ml)は
男性:20~280
女性:5~157
です。基準値は少なくともそのとき健康であるように見える人、症状がない人の集団の検査値の平均であったり、範囲だと思います。
フェリチンが余った鉄の貯蔵庫のようなものだとすると、フェリチンがプラスになっている時点で、ミトコンドリアを含めた各組織には鉄が足りている証拠ではないのでしょうか?ミトコンドリアの中にもミトコンドリアフェリチンというのがあるようなので、余計にミトコンドリアは鉄欠乏になりにくいのではと考えるのはおかしいでしょうか?そうするとフェリチン値が20では低すぎて、50を目指せ、100を目指せというのはどのような意味があるのでしょうか?もし、ミトコンドリアの鉄が足りなかったとしたら、フェリチンを分解して、フェリチンから供給すればいいのではないでしょうか?フェリチン値20は鉄不足ですか?余っているからフェリチン値が20もあるのではないでしょうか?
貯金を増やせば心に余裕が生まれることはあるかもしれませんが、日々のお金が十分足りているのであれば、貯金は将来のものであり、その場で困ったりはしません。同じようにフェリチンという貯金が少なかろうが多かろうが、各組織などの鉄が足りているのであれば、その場では問題は起こらないのではないでしょうか?20だと問題が起こり、100になれば問題は解消したということがあったとすると、どのような仕組みでしょうか?まあ、目の前の患者さんがよくなれば仕組みなんてどうでもいい話ですが。
鉄はどんどん無くなるようなものではなく、1日に1~2mg程度の損失しかないと言われています。私のある日の食事に含まれる鉄分を計算したら10mgを超えていました。吸収率10~20%だとするとちょうど穴埋めできます。鉄が過剰にならないように吸収する段階でも調節機構があるのならば、1日10mgの鉄は十分ではないでしょうか?
サプリを飲んでも鉄が過剰にならないような調節機構が存在するので、問題はすぐには起こるとは思えません。男性が普通に食事を摂っていれば、まずは鉄は不足しません。女性の場合は月に1回出血するということを考えると、鉄は少し少なめになる可能性はありますが、普通の食事をしていれば調節機構があるのですから、リカバリーします。リカバリーしないようでは食事が悪いのです。
フェリチン値が50より多いか少ないかで圧倒的に頸動脈のアテローム発生に差があることを考えると、やはり仮説の一つ目で言ったような、フェリチンの分解が思ったよりも起こっているのかもしれません。
もちろん、鉄に限らず、そのほかのミネラルでも、ビタミンでも個人差があるので、いくつ以上であれば十分な量であるというのは難しい判断です。あくまで研究で得られるエビデンスは集団での平均的は数値です。そこから外れている人はいっぱいいますし、そういう人が病気になったりすることもあるわけです。つまり、その人にとっては症状が起きている数値が異常値であり、症状が消えたところが正常値の最低値なのです。人それぞれです。
こう結構フェリチンはお腹いっぱいです。それにまだわからないことだらけです。だから、妄想した仮説を考えるのは面白いのですが…
はじめまして。最近よく読ませてもらってます。
フェリチンついては藤川徳美医師のブログによく出てきますね。何か参考になるかもしれません。
http://ameblo.jp/kotetsutokumi/
小清水さん、コメントありがとうございます。
藤川先生の内容は良く知っています。
しかし、藤川先生とは立場やスタンスが異なります。
先生は精神疾患などに対し、ミネラルやビタミンなどサプリでたくさん投与して、
改善させようとされてるようです。非常に効果をあげているようなので、それは非常に興味深く、
勉強になります。そして、目の前にそのような患者さんがいたら参考にさせていただくでしょう。
ただ、私は症状がない健康な人まで、サプリは必要がないと思っています。
サプリを飲んで、やっと健康を維持できるのであれば、それは健康とは言えません。
普段の食事と運動で健康に過ごすことを推奨しています。
フェリチンについても、健康な人までどんどん増やすことが本当に良いことなのか非常に疑問に思っています。
エビデンスはデータを改ざんや捏造という問題をはらんでいるので、全てを信用するわけではありませんが、
ウソでもエビデンスさえ出せないサプリをそのまま信用はできません。
個人個人それぞれが良く考えていただけるように、情報をこれからも出していきたいと思います。
フェリチンの仮説
1、確率的親和率の為ではないでしょうか。
20あって20利用できる個体と
100あって20利用できる個体(この場合20なら4しか利用できない)
2、必要な新陳代謝の結果
少ないばあい、細胞の入れ替わりが少ない。
適度な量がやはり必要とか。
fratsuさん、コメントありがとうございます。
確率的親和率はただの仮説です。それが正しいとして、自分がどの位置にあるかはわかりません。100あって20しか利用できない状態に合わせた場合、
残りの80が作用がないわけではなく、有害作用をもたらす可能性もあります。特に鉄は過剰にあると有害だと考えます。
「鉄のサプリメントとうんこの関係」などを参照してください。
また、細胞の入れ替わりが多い場合に鉄が使われて、フェリチンが低下するとも考えられます。フェリチンが少ないのは結果かもしれません。
もちろん適量が必要だとは思いますが、適量は現在のところわかっていません。逆に過剰なフェリチンは有害であるというエビデンスはいっぱいあります。