肥満は熱中症になりやすい

近年、アメリカの軍隊に入る新人兵士の肥満化が問題になっているようです。以前の記事「アメリカの兵士のケトン食」で書いたように、ちょっと古いですが、現役兵士の中で肥満と診断された兵士の数は、1998年には兵士全体の1.6%にあたる2万5652人だったのが、2003年には3万4333人(2.1%)に増加し、08年には03年の倍となる6万8786人(4.4%)に増加したそうです。

当然、兵士は厳しい訓練があります。そして、暑い中でも訓練があるはずです。今年はアメリカやカナダでは記録的な熱波に襲われています。(ここ参照)熱中症のリスクも高くなります。

日本でも夏は熱中症が良く起こります。真夏のオリンピックもどうやら強行されるようです。真夏の東京ではスポーツをするような気温ではありません。梅雨が明けて夏本番ですが、熱中症予防が日々叫ばれる季節です。

では、肥満はどれほど熱中症になりやすいのでしょうか?

アメリカの陸軍の新入隊兵士の基準では、体脂肪率は男性30%、女性36%以下で、BMIは25未満です。それ以上の人は体力テストに合格しなければならないそうです。今回の研究ではBMIと体脂肪率の両方で合格できなかった人たちを「過剰な体脂肪群」として、どちらかでも基準を満たしている人「適合者」と比較しました。熱中症(heat illness)には、熱痙攣(muscle cramps)および熱疲労(heat exhaustion)から熱射病(heatstroke)(生命を脅かす緊急事態)まで分類があります。

(上の図は「「夏季のイベントにおける熱中症対策ガイドライン2020」」より)

過剰な体脂肪群の11.9%は過体重であり、87.9%は肥満、平均体脂肪率は27.6でした。(図は原文より)

上の図は過剰な体脂肪群と適合者群の比較です。熱中症の数は非常に少なかったのですが、熱中症全体での過剰体脂肪群のリスク比は3.66倍でした。重度の熱中症の熱射病(heat stroke)は21倍でした。(非常に少数なのであまりあてになりませんが)

別の研究では、アメリカの熱射病で入院して、循環虚脱のリスク要因を分析しています。(ここ参照)院内死亡率は循環虚脱の患者で7.1倍です。

循環虚脱の可能性は肥満で1.76倍でした。それ以外合併症の要因では有意差はありませんでした。

体脂肪が多い人は熱に対する耐性が低く、熱に順応するのも遅くなります。兵士になるくらいの人でも、肥満だとやはり熱中症になりやすいので、そうではない一般人の肥満だともっと熱中症になりやすいかもしれませんね。

こまめな水分補給よりも体脂肪を落とす方が熱中症対策には良いでしょう。

ところで驚くことに、環境省が出している熱中症の対策のガイドライン(「夏季のイベントにおける熱中症対策ガイドライン2020」)における、こまめな水分補給の実験結果のエビデンスはマウスの実験でしかありません。もっとまともなエビデンスを持ってきてほしいですね。逆に言えば、こまめな水分補給には根拠がないとも言えます。スポーツドリンクの企業などがスポンサーになった研究では信用できませんしね。

糖質過剰症候群 糖質制限

「Exertional heat illness among overweight U.S. Army recruits in basic training」

「基礎訓練における太りすぎの米陸軍新兵の熱中症」(原文はここ

コメント

  1. 鈴木 武彦 より:

    先生のおっしゃる通り、アアスリートは必ずしも健康ではありませんが、「糖質制限」の知識と実践はアスリートの競技力向上、勿論健康にも有効ではないでしょうか。
    (ただ、イチロー選手の記事で「シーズン中はとにかく痩せてしまわない事優先」で、ハンバーガーをバクバク食べてた。というものも真偽不明ですがありました)

    大谷翔平選手、トレーニングや食生活についても色々報道されていますが、糖質制限で健康的にスーパーな活躍を続けて欲しいです。

    • Dr.Shimizu より:

      鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      本当のところ、大谷選手がどのような食事をしているかはわかりませんが、都合の良いところだけを切り取って、
      都合よく情報を発信している人に使われていることもあるでしょうね。
      「自分に合っている食材、合っていない食材がわかる血液検査」というのはどのような検査なのか興味があります。