アメリカの兵士のケトン食

世界中で肥満は蔓延しています。若者も例外ではなく、兵士の肥満や兵役の不適格者の増加に悩んでいるそうです。

例えばこの記事によると、2009年と記事は古いですが、アメリカの17〜24歳の若者のうち75%以上が、兵役につくことに不適格だそうです。肥満者は30年前と比べると劇的に増加し、腕立て伏せや懸垂ができず、走れない軟弱さが嘆かれているそうです。実際に不適格とされる若者たちの理由は、太りすぎ、病弱、知能が遅れている、扶養家族が多すぎる、違法薬物使用による逮捕歴があるというものだそうです。肥満はアメリカの若者の4人に1人程度の割合でしょうか。現在はもっと多いかもしれません。 (「医療的・身体的理由」が35%、「違法薬物の使用」が18%、「全人口の10%以下にあたる知能」が9%、「18歳以下の扶養家族が多い」が6%、「犯罪歴」が5%)

さらに、現役兵士の中で肥満と診断された兵士の数は、1998年には兵士全体の1.6%にあたる2万5652人だったのが、2003年には3万4333人(2.1%)に増加し、08年には03年の倍となる6万8786人(4.4%)に増加したそうです。(この記事より)現在はもっと増加しているかもしれないですね。

このような問題は中国や、韓国チェコなどでも起きているという記事があります。

現役兵士の肥満に関しては、訓練を日々行っているにも関わらず、肥満になっているですから、食事が悪く、運動は肥満に効果がほとんどないことが示唆されます。このような肥満兵士は有事に果たして戦えるのでしょうか?それとも、AI兵器が代わりに戦う時代なので、肥満でも問題ないのでしょうか?

さて、そのような肥満兵士に対する、ケトン食の効果を調べた研究があります。糖質制限をすると筋肉が減るとか、エネルギーが無くなるとか、根拠もないことを言う人がいます。実際は糖質制限で筋肉は減らないし、糖質制限でトレーニングをしてもちゃんと筋肉は付きますし、パワーは落ちません。(「ウェイトリフティングでさえ糖質制限!」「筋トレでインスリンを分泌するための糖質(炭水化物)は必要ない その1」「その2」など参照)

ケトン食群のBMIは27.9 (24.1–33.8) で、通常食群のBMIは24.9 (21.1–27.8) でした。どちらの食事もカロリーは無制限(自由)であり、参加者はカロリーを数えず、満腹になるまで食べることができました。ケトン食群では1日の炭水化物量の目標は50g以下でした。(図は原文より)

上の図はケトン食群の毎日の血糖値とケトン体値を測定した平均を示しています。グレーのグラフが血糖値で、赤いグラフがケトン体値です。12週間多少の変動はあるものの、ほぼ一定であり、血糖値は平均87±6 mg/dL(72〜95 mg/dL)でした。 ケトン体は1.2±0.4mM(0.9〜1.8mM)(日本の単位では1200μmol/L前後)でした。つまり、12週間の間、生理的な栄養的なケトーシスであったことを示しています。

上の図はアメリカの兵士が12週間ケトン食を食べたときのベースラインからの変化を示しています。それぞれの図の左側がケトン食群、右側が通常食群です。Aは体重、Bは体脂肪率、Cは除脂肪体重、Dは脂肪量、Eは内臓脂肪量、Fは肝臓脂肪率です。ケトン食群対通常食群で、体重は-7.7 kg対0.1 kg、体脂肪率は−5.1%対−0.7%、除脂肪体重は-1.4対0.8 kg、脂肪量は−5.9 kg対−0.6 kg、内臓脂肪量は-0.5 kg対0.0 kg、肝臓脂肪率は0.1%対0.2%でした。肝臓の脂肪量は元々正常であったので変化はほとんどありませんでしたが、それ以外は大きくケトン食で変化が起きています。

安静時代謝率に変化はなかったのですが、呼吸交換比はケトン食群で減少し、エネルギー消費はケトン食群で、炭水化物が41%から16%に低下し、脂肪が59%から84%へ増加しました。つまり、エネルギー源としての脂肪への依存度が大きく増加を示したことになります。

インスリン値はケトン食群で大きく低下し(10.3→5.7 μIU/mL 対8.1→7.3 μIU/mL)、インスリン感受性は、ケトン食群で増加し(2.1→1.1)、通常食群では変化ありませんでした。(1.5→1.4)

そして、運動強度とパワー性能に関する能力の差はひとつを除いて、ありませんでした。

つまり、ケトン食で体重や体脂肪を大きく減らしながら、インスリン感受性も改善し、兵士の訓練で全く問題なく身体的な適応が可能なのです。

有事に備えるためにも兵士の食事は非常に重要でしょう。

肥満も戦争もない世界はやってくるのでしょうか?

「Extended Ketogenic Diet and Physical Training Intervention in Military Personnel」

「兵士における拡張ケトジェニックダイエットと体力トレーニング介入」(原文はここ

2 thoughts on “アメリカの兵士のケトン食

  1. コメント失礼します。

    「実際に不適格とされる若者たちの理由は、太りすぎ、病弱、知能が遅れている、扶養家族が多すぎる、違法薬物使用による逮捕歴があるというものだそうです。肥満はアメリカの若者の4人に1人程度の割合でしょうか。現在はもっと多いかもしれません。 」

    私がもしアメリカ人ならば糖質制限をやめて肥満になる様に頑張るでしょうね。
    大麻も所持して前科もんになれるようにするでしょう。

    「有事に備えるためにも兵士の食事は非常に重要でしょう。」

    兵役などまっぴらゴメンです。

    1. ジェームズ中野さん、コメントありがとうございます。

      アメリカは実質強制的に徴兵登録をさせられていますが、現在のところは志願兵です。
      しかし、志願したにも関わらず、不適格とされる若者が続出しています。
      私も兵役はまっぴらゴメンです。

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