GIなんてやっぱりあてにならない

私自身はグリセミックインデックス(GI)とグリセミック負荷(GL)をあまり気にしていません。というよりも信頼していません。

食品、食事、健康における炭水化物の血糖との関係を考えることは重要だと思いますが、GIが使えるほど信頼性の高いものではないと思います。

恐らくGIという概念の中には、「糖質(炭水化物)は人間にとって必要な栄養素」という考えがあるのでしょう。必要ではあるけれど血糖値をできる限り上昇させない炭水化物は何かを探している、それがGIという考えをもたらしているのです。

しかし、糖質は必須のものではありません。

GIの国際表(International Tables of Glycemic Index)の2008年版が発表されて、その後2010年にGIを決定するためのより厳密な方法論が、国際標準化機構(ISO)によって公開されました。そして高(GI≥70)、中(GI 56–69)、低(GI≤55)とGI値のクラス分けが提唱されました。

今回は2008年1月1日から2020年6月30日までに発表された研究より2021年版のGIを示しています。2008年版のエントリ数の2倍近くに相当する4,000を超える個別の食品がリストされています。

下の表は各食品カテゴリーの平均GI値、および低、中、高GI食品の割合の要約です。(図は原文より、表は原文より改変)

各カテゴリーの製品の割合
食品カテゴリーNS平均SD低GI食品中GI食品高GI食品
ベーカリー製品72581649%31%21%
飲料74502068%18%15%
 炭酸飲料763729%43%29%
パン214641429%36%35%
朝食用シリアル148611537%33%30%
シリアルバー20541445%15%20%
穀物
 米128671728%34%38%
 その他の穀物60472073%15%12%
クッキー13549984%12%4%
クラッカー43551747%42%12%
乳製品186351195%5%0%
果物と果物製品
 果物105511172%22%6%
 果物と野菜のジュース2747985%15%0%
 フルーツスプレッド、ジャム28491571%25%4%
乳児用調製粉乳と離乳食43481765%28%7%
マメ科植物32341494%6%0%
置き換えおよび体重管理製品59309100%0%0%
栄養サポート製品62422090%2%8%
ナッツ3221100%0%0%
パスタ77521264%29%8%
スナック菓子と菓子
 香ばしいスナック食品35601546%20%34%
 甘いおやつやお菓子53481668%21%11%
 フルーツバーとスナック41452176%7%17%
 スナックバー47441679%15%6%
 スポーツ(エネルギー)バー35321394%6%0%
スープ21491071%29%4%
砂糖とシロップ50582144%32%24%
野菜
 じゃがいもとじゃがいも製品66711514%29%58%
 その他の野菜91661934%14%52%
地域または伝統的な食べ物
 アフリカ9562056%0%44%
 アラブとトルコ28611132%43%25%
 アジア89601940%34%26%
 インド19651332%32%37%

平均化してしまうとどの食品もそれほど大きな違いがないように見えます。そして、個々のカテゴリーの食品のGIのクラス分けを見てみると、低、中、高のGIがバラバラです。例えばシリアルは平均GI61で、低GIが37%、中GIは33%、高GIは30%です。自分が口にするシリアルのGIはいくつなのでしょうか?わかりません。

 

上の図は、米、じゃがいも、パンの大陸別、年代別のGI値です。米の製品のGI値に大きなばらつきがありました。その範囲は19〜116です。白米の平均GIは73、玄米の平均は65でした。米の種類が異なるせいかもしれません。最高のGI値はアジアで74で、オーストラリアは65、ヨーロッパ61、北アメリカ60です。

じゃがいもは平均71と高いGI値ですが、広い分布があり、範囲は35〜103です。調理および加工方法が重要であるように思われ、平均値はインスタントマッシュポテトで84、通常のマッシュポテトで79、茹でポテトで73、一晩冷蔵された調理済みポテトで49です。産地、品種、調理方法は地域によって異なり、その多様性は非常に大きくなっています。テストされたじゃがいもの平均GI値はオーストラリアで最も高くて77、ヨーロッパ73、北アメリカで67でした。

パンも大きく異なり、範囲は24〜100、平均で64でした。平均して、アジアのパンはGIで最も高く68でした。パンの原料の麦も色々あるので、その違いは大きいかもしれません。

こんなにばらつきが大きい数値を使うことはできません。食事および料理としてどのような食材と一緒に調理するか、どのように調理するか、どのような種類の材料を使うかによっても違うでしょう。また、以前の記事「血糖値スパイクは人それぞれ」「GI値(グリセミックインデックス)は当てにならない」で書いたように、個人差、測定毎の違いも大きいでしょう。自分が食べている料理がどれほどの血糖値をもたらすか、毎回正確に予想できる人はいません。フリースタイルリブレなどを使用して測定していれば良いですが、それも食べた後にわかることです。

そうであるならば、糖質量を指標にして、血糖値の変動を予測した方が実用的でしょう。

基本は糖質制限ですね。

糖質過剰症候群

「International tables of glycemic index and glycemic load values 2021: a systematic review」

「グリセミック指数とグリセミック負荷値の国際表2021:系統的レビュー」(原文はここ

6 thoughts on “GIなんてやっぱりあてにならない

  1. (玄米や全粒粉パン等の)黒い炭水化物は良い、食べる順番で血糖値スパイクが予防できる。
    などの記述を見るたびにモヤモヤしてしまいます。

    血糖値の変動を防ぐという視点は素晴らしいですが、糖質制限以外の方法は糖質依存の人が編みだした糖質摂取の手段なのではないでしょうか。
    (アルコール依存の方がなりふり構わず、味醂でも飲んでしまうのと同様。)

    余談になりますが、先生も御存じかもしれませんが、弁護士・医学博士 秋山佳胤さんという方が「不食」を啓蒙してらして、興味を惹かれています。

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      「黒い」炭水化物というのも良いですね。茶色よりも体に悪そうです。
      糖質を摂取しなければならないという考えがGIという考えを生み出しているのは確かでしょうね。
      不食はそれほど興味がありません。なぜなら私は食べることが好きだからです。

  2. ご返信ありがとうございます。
    ご指摘の通り「茶色い」の間違えです、、、

    健康を害さない程度に色々自己人体実験してみます。

  3. 血糖値の上がり具合は、摂取した食材や調理方法のみならず、1日の中でも全く違います。
    私の場合は、朝は上がりやすく、夜は上がりにくいと言う傾向が顕著です。

    以下は、糖質1g当たりの血糖値の上昇を4月から6月までの3ヶ月間の平均ですが平日と休日(カッコ内)でも全く違います。食習慣によるものもあるかもしれません。
    私は使っていませんが、インスリンを使用している方でこんなに差があれば効きが悪かったり低血糖を起こしたりと結構大変じゃないかと思います。
    因みに食事は糖質50g/日以下の糖質制限食です。

    朝食 2.7mg(1.8mg)/g
    昼食 1.8mg(1.5mg)/g
    夕食 1.2mg(0.2mg)/g

    1. 西村 典彦さん、コメントありがとうございます。

      当然、絶食後のファーストミールは血糖値が高くなりやすくなります。
      平日と休日の違いというのは非常に興味深いですね。平日のストレスが結構多いのでしょうかね?

  4. 西村様、数字は説得力があります(3ヶ月!)。朝昼夕、平日休日で差が出るんですね。

    医師も激務でしょうから、個々の処方を最適化することは難しいのかもしれませんね。
    やはり自分の健康を最適化できるのは自分なのでしょうね。

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