アメリカ心臓病学会は中性脂肪を減らすためのライフスタイル介入として糖質制限を提唱 その1

またアメリカは糖質制限を推奨する動きが強まりました。以前の記事「アメリカ糖尿病学会が出した歴史的なコンセンサスレポート 糖質制限を推進!」で書いたようにアメリカの糖尿病学会が糖質制限を認めたのに続いて、今度は心臓病学会です。

今回アメリカ心臓病学会(American College of Cardiology:ACC)はアテローム性動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)のリスク低減のための根拠に基づく新たな報告の文書を発表しました。

中性脂肪の上昇は、レムナントコレステロールの増加、HDLコレステロールの減少、および小さく高密度の粒子に変化するLDL粒子(sdLDL)の増加に関連しています。

今回の報告で、高中性脂肪のライフスタイルへの介入は「すべての患者を管理するための最初の治療法である」と書かれています。そして「太りすぎ/肥満、食事の質の悪さ、座りがちな生活、アルコールなどのライフスタイル要因の治療から始めることを推奨」とも書かれています。では食事療法についてを見てみましょう。

Lower-fat, higher-carbohydrate diets: Lower-fat, higher-carbohydrate diets lessen the reduction in triglycerides in response to weight loss compared with higher-fat, lower-carbohydrate weight loss diets.

低脂肪、高炭水化物食:低脂肪、高炭水化物食は、高脂肪、低炭水化物食と比較して、減量に応じた中性脂肪の減少を少なくします。

非常に回りくどい言い方をしていますが、高脂肪低炭水化物食、つまり糖質制限食は低脂肪食よりも中性脂肪が減少すると書かれています。

Degrees of carbohydrate restriction: In a systematic review and meta-analysis of the effect of different levels of carbohydrate restriction on body weight and cardiometabolic risk markers, all carbohydrate-restricted diets resulted in significant and similar weight loss from baseline but had different triglyceride-lowering effects. The reduction in triglycerides was greatest for the very low-carbohydrate (<10% of calories from carbohydrates) diet: −24 mg/dL (95% CI: −38 to −9 mg/dL) when combined with weight loss (−1.62 kg). In a short-term (8-week) study designed to assess the effects of a low-carbohydrate (20% energy) versus a lower-fat (33% energy) diet on lipids and lipoproteins in individuals with elevated triglyceride levels (≥150 mg/dL), body weight decreased by 1.7 kg and triglycerides decreased 18% on the low-carbohydrate diet. No effect on triglycerides was seen with the lower-fat diet despite a weight loss of 0.7 kg.

炭水化物制限の程度:体重と心血管代謝リスクマーカーに対するさまざまなレベルの炭水化物制限の影響の系統的レビューとメタアナリシスでは、すべての炭水化物制限食はベースラインから有意かつ同様の体重減少をもたらしましたが、中性脂肪低下効果は異なります。中性脂肪の減少は、非常に低炭水化物(炭水化物からのエネルギーが全摂取カロリーの<10%)の食事で最大でした:減量(-1.62kg)と同時に中性脂肪値は-24 mg/dL(95%CI:-38〜-9 mg/dL)でした。中性脂肪値が高い(150mg/dL以上)人の脂質とリポタンパク質に対する低炭水化物(摂取エネルギーの20%)と低脂肪(摂取エネルギーの33%)の食事の効果を評価するために設計された短期(8週間)の研究では、低炭水化物食では体重は1.7kg減少し、中性脂肪は18%減少しました。低脂肪食では0.7kgの体重減少にもかかわらず、中性脂肪への影響は見られませんでした。

つまり、糖質制限食は体重だけでなく中性脂肪値を大きく減少させるのです。そして、低脂肪食は中性脂肪を低下させないと言っているのです。

大きな前進です。高中性脂肪に対して低脂肪食よりも糖質制限が効果があることを心臓病学会が認めたのです。高中性脂肪は糖質過剰症候群なので当たり前なのですが、これまでは糖質制限が取り上げられることはなかったでしょう。

次回以降ではこの続きを書きたいと思います。

 

「2021 ACC Expert Consensus Decision Pathway on the Management of ASCVD Risk Reduction in Patients With Persistent Hypertriglyceridemia: A Report of the American College of Cardiology Solution Set Oversight Committee」

「持続性高中性脂肪血症患者におけるASCVDリスク低減の管理に関する2021年ACC専門家コンセンサス決定経路:アメリカ心臓病学会ソリューションセット監視委員会の報告」(原文はここ

6 thoughts on “アメリカ心臓病学会は中性脂肪を減らすためのライフスタイル介入として糖質制限を提唱 その1

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      生理学的事実を無視した医学はいっぱいあると思います。

  1. 中性脂肪やコレステロールが高いと、健康診断等のコメント欄に脂肪を控えて下さいとメッセージを頂戴しますが、糖質制限をするようになり、脂質を前より多く摂るようになったにもかかわらず中性脂肪はどんどん低下、今では30台です。

    これ、どう説明してくれるのでしょうね?
    文字通り体で証明した形です。

    記事の続きを楽しみにしております。

    1. みみさん、コメントありがとうございます。

      多くの医師はいまだに中性脂肪低下=脂質摂取量低下だと思います。事実を無視しています。
      熱中症予防にはポカリの医師も多そうですね。

  2. 清水先生、おはようございます。
    糖質制限実践者からすると、糖質制限により中性脂肪が低下することは身をもって体験していることですね。

    1. じょんさん、コメントありがとうございます。

      医師も栄養士も自分でやってみれば良いのに、と思います。
      まあ、脂肪肝や高中性脂肪の医師は非常に多いですからね。

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