糖質制限食やケトン食だけでがんを克服することは無理でしょう。しかし、糖質制限には生活の質(QOL)を改善したり、再発や死亡してしまうリスクを減らす可能性があると思います。
現在はインターネット、SNSの広がりで、様々な情報が得られるようになり、がんの患者さんの中で糖質制限を実施している人も少なくないでしょう。しかし、医療側は糖質制限はただの「食事」に過ぎません。バランスの悪い糖質制限は有害だといまだに考えている医療従事者も多いでしょう。「食事」にすぎないと考えているのであれば、せめてニュートラルな立場くらいにしてほしいものですが、強烈に批判する人もいるでしょう。
今回の研究では、がんの患者さんで糖質制限やケトン食を行っている人にオンラインアンケート調査をしました。
参加者は合計で94人(77人の女性と17人の男性)、平均年齢は50.1(±12.1)歳、中央値は49.1歳、範囲は24〜79歳でした。参加者の73%で、がんは最初の診断時に転移していませんでした。24人(25.5%)の患者はPET陽性腫瘍を有し、8人(8.5%)の患者はPET陰性腫瘍を有し、残り(66.0%)はPET検査をしたかどうかを報告していませんでした。87%が手術を受けました。最も頻度の高いがんの種類は乳がん(44%)で、子宮頸がん、前立腺がん、結腸直腸がん、黒色腫がそれに続きました。
参加者に、標準的ながん治療に対する補完的な食事の可能性について最初にどのように学んだかを尋ねたところ、ほぼ半数(48%)がインターネット上の記事を通じてケトン食や糖質制限食に気づき、15%が友人や家族から最初の情報を入手し、12%が本でそれについて読んだと報告しました。やはりインターネットですね。
参加者の大多数は、初期診断時またはがん治療中にケトン食または糖質制限食を開始しました。食事で最も多いのがケトン食で55人(58.5%)、20人(21.3%)が低炭水化物高脂質食、11人(11.7%)が低GI食でした。また、質問票に記入した日にどのような食事療法を採用していたかを参加者に尋ねたところ、38%がケトン食、37%が低炭水化物高脂質食、19%が低炭水化物(低GI食)、6%がその他の食事でした。63人(67%)の参加者が何らかの形の糖質制限食を1年以上続け、15人(16.0%)が5〜12か月間、14人が1〜4か月間続けていました。
通常、糖質制限の話をすると、「何を食べたらいいの?」と食べるものが極端に減るような印象も持つことがありますが、今回の参加者の72人(77%)は料理を楽しんでいると述べ、84人(89%)は適切なレシピを見つけるのに問題はないと答えています。実際にいろんなものが食べれますからね。
(図は原文より)
上の図は食事の長期の順守がどうであったかの回答です。67%が食事療法の長期順守が「簡単」であると感じ、11%が「非常に簡単」であると答えました。一方、18%は「難しい」、4%は「非常に難しい」との回答でした。
上の図は食事を変えるという決定に対して家族や友人がどのように反応したか?についてです。39%が家族や友人が励ましていると述べ、45%が中立的な反応を示し、13%が家族や友人に払いのけられてしまったようです。この研究はオーストリアのものですが、個人の考えを尊重する考えがあるのか、反対者は割合は少ないのかもしれませんね。日本だともっと多くなるような気がしますが、どうでしょうかね?
上の図は医療側の反応です。濃い緑はかかりつけの家庭医、薄い緑ががん専門医です。まず一番多いのが食事の変更について医師に知らなかったという回答です。36%はかかりつけの医師に伝えず、45%はがん専門医に伝えなかったと答えました。伝えた方が面倒ですからね。
13%のどちらの医師も食事の変更について大きな懸念を示したと回答しました。かかりつけの医師が食事療法の変更を勧めたと述べた患者は15%で、がん専門医の割合は19%とわずかに高かった割合でしたが、懸念する医師よりも多いことが重要でしょう。かかりつけ医の32%とがん専門医の20%がニュートラルな反応でした。日本だと半分くらいは反対の意見をするかもしれないですね。
化学療法によって日常生活に制限があるかどうかを尋ねました。この質問に回答した73人の参加者のうち、47%が重度の制限または軽度の制限を感じ、16%がまったく制限されていないと答えました。食事療法が化学療法の副作用に影響を及ぼしたと述べた人々のうち、約24%が、食事療法によって化学療法による副作用が改善したと報告し、食事療法によって体が弱くなったと報告したのは1人だけでした。
上の図は食事療法を実施した後の体の状態の変化をどのように認識したかについてです。63%が食事療法のために強くなった感じ、16%が何の変化も感じなかった、1%が食事療法のために弱くなったと答えました。6割以上の人が体の力が増すようです。素晴らしい。
上の図は個人の感想です。上から順に「移動したり、スポーツに参加したりするのがはるかに簡単だと感じました!」「極度の倦怠感は消えていたよ!」「庭仕事をしたり社会的交流をしているわ!」「朝起きるとき倦怠感が少ないし、より多くの持久力が付いたよ!」「集中力がが向上したり、友達に会うエネルギーが増したわ!」「普通の状態だわ!」「もう疲れなくなったし、あらゆることに対応できるの!」「すごく体重が減ったよ、ケトン食は体重を改善するのを助けてくれたんだ!」「エネルギー、気分、モチベーションが改善された!」「副作用が消えたのよ!」「片頭痛がなくなり、毎日の生活を楽しむのが楽になりました!」
診断の時点で参加者の3.2%は低体重、52.1%は正常体重、26.6%は過体重、18.1%は肥満でした。34%は治療中に体重が減ったと述べ、38.3%は体重が変わらなかったと述べ、約5%はがんの治療中に重度の体重減少を経験しました。もちろん、がんの進行で体重がどんどん減少してしまうことはあり、そのことは予後を悪化させる要因となるかもしれません。しかし、一方で太りすぎや肥満は予後を悪くする要因にもなります。
過体重や肥満の人が糖質制限で体重が減り、ケトン体増加で炎症も減るのは非常に有益でしょう。糖質はがんのエサでもあります。がんは糖質過剰症候群です。
しかし、日本の医療現場の栄養指導はいまだに「バランスの良い食事」「3食しっかりと」が通常です。病院食では白米がどんぶりで出されます。シロップ漬けのフルーツや砂糖の入ったヨーグルトも平気で出します。スイーツが付いてくることもあります。さらに、「食欲がなければ、お粥やゼリーなど口当たりの良いものなど何でも食べれるものを食べて、元気出して」と平気でアドバイスされます。飲み物はポカリスエットは健康的なドリンクに含まれている場合もあります。
せめて、何を食べるかは、放っておいてほしいです。偉そうに何でもわかっているかのようなアドバイスは必要ありません。医師や栄養士が勧める食事が本当にがんをはじめ様々な病気に有益であるという根拠を見せてほしいものです。ありませんが。
もちろん、糖質制限のエビデンスもまだまだです。そして、私も逆に「糖質を制限した方が良い」というアドバイスをしますが、くどくは言いません。聞きたい方には話しますが、説得は全くしません。しかし、数値が悪い場合に「糖質を制限しないとこの数値は改善しませんよ」ということは言います。あとはそれぞれの判断ですから。
「Implementation of a Low-Carbohydrate Diet Improves the Quality of Life of Cancer Patients – An Online Survey」
「低炭水化物食の実施はがん患者の生活の質を改善する-オンライン調査」(原文はここ)
三食バランス良く派と糖質制限派。
体型や活力、(コレステロール値を除いた)
健康診断数値などを比較すれば、一目瞭然
なんですがね〜。
鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。
そんなこと言ったら彼らのプライドが傷ついてしまいます。
感染症の専門家と同様、現実のデータを見ても見ないふりをしているのでしょうかね。
>バランスの悪い糖質制限は有害
この「バランス」が良いとか悪いと言う抽象的な言葉が曲者ですね。
バランスが良いとされているのは多くの人がそう言う食事をしていると言う平均値にすぎません。
単なる平均値が健康に良いとされるのはどう言う理由からでしょうか。
さらには、健康とは何でしょう。長生きする事でしょうか。
「科学者たちが語る食欲 -食べ過ぎてしまう人類に贈る食事の話 -(デイヴィッド・ローベンハイマ―、他著) 」
によると高蛋白食では、短命であるが繁殖力が増し、高炭水化物食では長寿であるが、繁殖力が低下すると記されています。
そして多くの生物の食欲とは蛋白質欲であり、一定の蛋白質量を摂取するまで食べ続けるのだそうです。したがって低蛋白食では自然と量が増え、肥満するのだそうです。
要するに生物は長寿(=高炭水化物食)よりも繁殖(=高蛋白食)を選択するようにできているという事です。
個の存続(寿命)よりも種の存続を優先するのが自然の成り行きと言う事です。
この本を読んで、「健康」と言う言葉を再考しなくてはいけないと言う思いに至りました。
西村 典彦さん、コメントありがとうございます。
言葉の定義も決めないで、その言葉を使っていることが問題なんでしょうね。
健康やバランスという言葉は非常に便利ですが、ちゃんと定義がされていません。