肥満の人は、脳血流の低下と脳由来神経栄養因子(BDNF)の減少などにより結果、認知機能障害のリスクが高くなります。脳のエネルギーはブドウ糖ですが、認知症では脳のブドウ糖の取込みが低下します。その場合、糖質過剰摂取をしていればケトン体が生成されないので、脳はエネルギー不足に陥ると考えられます。
そんな肥満の人にケトン体サプリメントを飲んでもらったらどうなるでしょうか?
今回の研究は、30〜69歳で、少なくとも腹囲が男性で102cm、女性で88cmより大きいか、BMIが30より大きいか、前糖尿病(糖尿病予備軍)のどれか一つに当てはまる人です。実際の参加者は男性4人、女性10人で、平均年齢55.8歳、平均BMIは33.8でした。比較的若い集団です。朝食、昼食、夕食の15分前に、ケトン体またはプラセボのサプリメントを14日間摂取してもらいました。ケトン体のサプリは0.4g/mLのβ-OHB(βヒドロキシ酪酸)を含んだもので、1日あたり36gのβ-OHB摂取することになります。食事は提供され、炭水化物約50%、脂質30%、タンパク質20%のエネルギーで構成されていました。(図は原文より、表は原文より改変)
全体 | 女性 | 男 | |
---|---|---|---|
年齢(年) | 55.8(12.4) | 59.0(8.2) | 47.8(18.4) |
体重(kg) | 95.1(22.2) | 91.5(25.2) | 104.0(8.8) |
BMI | 33.8(6.9) | 34.1(8.2) | 33.1(1.5) |
胴囲(cm) | 109.2(17.1) | 108.4(20.4) | 111.3(1.7) |
収縮期血圧(mmHg) | 132(18) | 134(19) | 128(17) |
拡張期血圧(mmHg) | 81(11) | 84(10) | 74(13) |
血糖値(mmol/L) | 4.74(0.49) | 4.61(0.32) | 4.96(0.35) |
インスリン(uIU/mL) | 21.58(13.41) | 20.11(14.51) | 25.27(10.78) |
C-ペプチド(pmol/L) | 2324.2(1112.5) | 2404.6(1219.2) | 2123.4(910.2) |
NEFA(mmol/L) | 0.63(0.15) | 0.66(0.15) | 0.54(0.14) |
上の表はベースラインの特徴です。肥満で空腹時インスリンは20以上と高いです。
プラセボ(n = 14) | ケトンサプリ(n = 14) | |
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体重(kg) | −1.08(−1.77〜−0.39) | −0.97(−1.66〜−0.28) |
BMI | −0.46(−0.72〜−0.21) | −0.39(−0.65〜−0.13) |
胴囲(cm) | −0.01(−1.74〜1.71) | −1.2(−2.9〜0.51) |
血糖値(mmol/L) | 0.10(-0.18〜0.38) | 0.21(-0.14〜0.55) |
インスリン(uIU/mL) | −2.38(−23.16〜18.40) | −16.78(−52.48〜18.93) |
C-ペプチド(pmol/L) | 4.77(-647.7から657.3) | −364.5(−962.3〜233.4) |
NEFA(mmol/L) | −0.15(−0.32〜0.02) | −0.11(−0.25〜0.02) |
上の表はプラセボとケトン体のサプリを飲んだ後の平均の変化量です。プラセボでも体重やBMIが低下したのは、3食とも食事を提供されたからでしょう。有意差はありませんがケトン体のサプリの方がインスリンおよびC-ぺプチドが大きく低下している人が多いと思われます。
プラセボ(n = 14) | ケトン体(n = 14) | |||
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前 | 後 | 前 | 後 | |
数字符号置換検査(正しい数字) | 37.1(8.7) | 38.8(7.1) | 38.6(7.4) | 40.9(7.8) |
タスク切り替え(ms) | 208.3(162.7) | 175.1(106.9) | 216.4(142.2) | 185.0(150.4) |
ストループタスク(ミリ秒) | 195.6(104.3) | 185.7(83.5) | 220.1(174.8) | 199.5(103.2) |
数字符号置換検査digit symbol substitution task (DSST)などの詳細は省略しますが、認知機能のテストです。数字符号置換検査はケトン体サプリで大幅に改善しました。その他のテストは有意な変化がありませんでした。
上の図は脳血流の変化です。左側がプラセボ、右側がケトン体サプリです。上から内頸動脈(ICA)、総頸動脈(CCA)、椎骨動脈(VA)の血流を見ています。サプリの前後で、総頸動脈(CCA)、椎骨動脈(VA)の血流が増加していました。
今回の研究ではケトン体サプリによって一部の認知機能検査が改善し、脳血流も増加しています。プラセボと同じ食事をしているのですから、糖質過剰摂取状態です。それでもケトン体を摂取するとこのような有益な変化が起きるのです。日本でもケトン体がもっと手軽に使えるようになると良いですね。糖質制限をして、常にケトン体が出ていればもっと脳にとって有益である可能性が高いと思われます。
認知症は糖質過剰症候群です。ケトン体は脳のエネルギーです。
「Short-term ketone monoester supplementation improves cerebral blood flow and cognition in obesity: A randomized cross-over trial」
「短期間のケトンモノエステルサプリメントは、肥満における脳血流と認知を改善する:ランダム化クロスオーバー試験」(原文はここ)
情報アップデートされない、ケトン体拒絶される医療者
→(バランスの良い食事という名の)糖質過剰摂取推奨
→認知機能低下
→更に旧来の習慣固持
→糖質過剰
→認知機能低下・・・
悪循環ですね。
鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。
誰を信じるかは自由ですから、その医師を信じる人は否定できません。
情報はいっぱいあるので、自分で考えるべきでしょう。
清水先生、こんばんは。
ケトン体サプリメントがあるのは知りませんでした。ケトン体を速やかに補給するためにはMCTオイルを使用するしかないと思っていました。
ケトン体サプリメントを飲んでみたいですね。
じょんさん、コメントありがとうございます。
日本でも是非販売してほしいですね。