普段からサプリメントを常用している人もいるでしょう。また、がんの診断や治療を機にサプリメントを始める人もいるでしょう。しかし、有効な効果を得られればいいですし、悪くてもなんの効果もないのであれば問題はありませんが、もしかしたら有害な作用があるかもしれません。
今回の研究では、乳がんの患者とサプリメントの関係を分析しています。
上の図は抗酸化サプリメントの使用による(A)無病生存率(つまり再発なしでの生存率)、(B)全生存率と、マルチビタミンの使用による(C)無病生存率、(D)全生存率です。NNは治療(抗がん剤)前も治療中もサプリを使用していない人、NYは治療前は使用せず、治療中サプリを使用。YNは治療前は使用して治療中な使用をやめた人。YYは治療前と中の両方サプリを使用した人です。ほぼどれも違いはありません。
上の図は抗酸化サプリメントのそれぞれの種類単独での生存率です。全体的にどの抗酸化サプリでも治療前と治療中ずっと使用していた人の方が再発率が高く生存率が低い傾向にあります。特にビタミンAは再発が4倍以上高く、全生存率で3倍以上低いようです。ビタミンA、カルテノイド系は他のがんのリスク、骨折のリスクも上げるという報告もあることから、(特に女性は)使用しない方が良いかもしれませんね。(「ビタミンAサプリメントの不都合な真実」参照)
上の図はビタミンB12サプリメントの使用と(A)無病生存率、(B)全生存率と、鉄サプリメントの使用と(C)無病生存率、(D)全生存率です。
治療前と治療中の両方でのビタミンB12の使用は再発が1.83倍増加し、全生存率が2倍以上低下しました。鉄サプリは治療中の使用による再発が1.79倍、治療前と中の両方の使用による再発1.91倍(これは有意差なし)、全生存率の低下も治療中の使用が1.71倍、治療前と中の両方の使用が1.90倍(これは有意差なし)でした。ビタミンB12をずっと摂取している人はそんなにいないと思いますが、長期のサプリの安全性は疑わしいかもしれません。ビタミンB12も鉄も乳がんがわかった時点でやめるべきかもしれません。
治療前と治療中の両方でのオメガ3脂肪酸サプリの使用は再発増加が1.67倍でした。
もちろん、それぞれのサプリ使用者が少なく、それによってこのような結果である可能性もあります。また他の研究では違う結果もあるでしょう。しかし、いずれにしても安全性はわかりません。
サプリは圧倒的に中国製が多いでしょう。中国製の新型コロナワクチンを接種したい日本人は非常に少ないでしょう。医療用の薬が中国製であれば躊躇する人も多いでしょう。しかし、毎日せっせとサプリであれば中国製でも口に入れるのです。医療用の薬と違いサプリは十分な検査がされていないでしょう。アメリカでもサプリ業界のロビー活動でFDAも野放し状態にしています。安全性を確かめる試験もされていないでしょう。主成分がちゃんと適切な量含まれているかどうかもわかりませんし、主成分以外に様々な安全かどうかわからない成分が入っている可能性もあります。吸収されているかどうかもわかりません。(「ビタミンのサプリメントの「ビタミン」はどこから来るの?」「オメガ3サプリメントの品質は怪しい」など参照)
また、吸収されなかった高濃度のサプリ成分は腸管で有害な作用をもたらす可能性もあります。(「鉄のサプリメントとうんこの関係」参照)
いずれにしても、人類の進化の中では考えられないほどの高濃度、大量の単一の栄養素が体内に入ってきたときに人間の代謝、反応がどうなるかはわかっていないでしょう。
足りない足りないと思わされて、そんなに足りないのでしょうか?恐怖や不安を煽るのは新型コロナウイルスの状況と似ている気がします。
サプリが必要かどうかは、リスクを考えてそれぞれが判断すればいいでしょう。私は食事が基本です。
「Dietary Supplement Use During Chemotherapy and Survival Outcomes of Patients With Breast Cancer Enrolled in a Cooperative Group Clinical Trial (SWOG S0221)」
「共同グループ臨床試験(SWOG S0221)に登録された乳がん患者の化学療法中の栄養補助食品の使用および生存転帰」(原文はここ)