日本糖尿病学会は2016年に高齢者の血糖コントロールについて目標値を示しました。(図はここより)
学会の言い分としては、「超高齢社会を迎え、高齢者糖尿病は増加の一途を辿っている。高齢者には特有の問題点があり、心身機能の個人差が著しい。それに加え、高齢者糖尿病では重症低血糖を来しやすいという問題点も存在する。重症低血糖は、認知機能を障害するとともに、心血管イベントのリスクともなり得る。」ということです。
もちろん、インスリンやSU薬を使用すれば、高齢者では低血糖を起こしやすいかもしれません。しかし、糖尿病の進行やインスリン分泌能力の残存の程度によっても違いはありますが、そもそも糖質制限をすればこのような薬をほとんど、あるいは全く使用しなくても血糖をコントロールできることが少なくありません。
この目標値があるために、インスリンやSU薬などを使っていない場合でも、HbA1cが7までは許容されてしまいます。
(28.7×HbA1c)-46.7=平均血糖値
(または目安としてもっと簡単な式では (HbA1c-2)×30)
なのでHbA1cが7では平均血糖値はおよそ154です。(本当はこれはただの平均値であり、実際には個人差が大きいです。7%のHbA1cで123〜185mg/dLと言われています。)平均値が150を超えるような血糖値を放っておいていいのでしょうか?
今回の研究では、ベースラインの糖尿病および血糖値の状態と心血管疾患のリスクが高い高齢者の認知機能の変化との間の関連を2年間で調べています。
対象はメタボリックシンドロームの少なくとも3つの基準を満たした太りすぎまたは肥満(BMIが27~40)の地域在住の成人(55〜75歳)6,874人です。参加者の合計20.9%が糖尿病なし、48.6%が前糖尿病、14.8%が5年未満の期間の糖尿病、15.6%が5年以上の期間の糖尿病でした。全体の平均年齢は64.9歳で、48.5%が女性でした。HbA1c7.4以上をコントロール不良と定義しています。(図は原文より)
上の図は認知機能検査の2年間での変化です。細かいことは省略しますが、ほとんどの検査で5年以上の糖尿病の人は2年間で大きく認知機能検査の結果が低下しています。
ベースラインのHOMA-IRやHbA1cとグローバル認知機能などは逆相関の関係が認められました。つまり、HOMA-IRやHbA1cが高いほど、グローバル認知機能などは低下するのです。さらに、コントロール不良な糖尿病は、音声の流暢さと逆相関していました。また、インスリンによる治療は、グローバル認知機能や他の認知機能検査に逆相関していました。
糖尿病のない人と比較して、65歳以下で前糖尿病および5年未満および5年以上の糖尿病の人ではグローバル認知機能のスコアの大幅な低下が見られました。
この研究ではコントロール不良がHbA1c7.4ですが、やはり多くの高齢者は5年以上の長期の糖尿病が多いと思います。そのような高齢者の糖尿病の血糖コントロールの目標を7%という緩い数値で良いのでしょうか?さらに、そもそもHbA1cを血糖コントロールの指標として用いて良いのでしょうか?こんな適当な、曖昧な数値を用いて糖尿病をコントロールできるのでしょうか?糖質制限をしているHbA1cと糖質過剰摂取のHbA1cとでは全く意味が異なるでしょう。
糖質制限なら低血糖にほとんどならず、安全な血糖管理ができると思います。たとえ、低血糖になったとしても、糖質制限によりケトン体がたっぷり体内にあれば、脳のエネルギーは保障されています。
高齢者の血糖コントロールを緩くすることは、薬によるコントロールが大前提であり、薬のコントロールを手放せない医師のための目標値である気がしてなりません。上手くコントロールできないのは患者側の要因というよりも医療側の要因の方が大きいかもしれません。
糖質過剰摂取で平均血糖値が150だとすると、食後は恐らく200を超えているのではないでしょうか?国際糖尿病連合は食後1~2時間でも160未満を目標とするよう推奨しています。糖質過剰摂取をしながら薬で無理矢理血糖値を管理しようとするから、低血糖が起きてしまうのです。
糖尿病は糖質過剰症候群です。糖質を摂取しなければ、大きく血糖値が上昇することはありません。認知機能を守るためにも糖質制限を早い段階から行いましょう。
「Glycemic Dysregulations Are Associated With Worsening Cognitive Function in Older Participants at High Risk of Cardiovascular Disease: Two-Year Follow-up in the PREDIMED-Plus Study」
「血糖調節不全は、心血管疾患のリスクが高い高齢者の認知機能の悪化と関連している:PREDIMED-Plus研究における2年間の追跡調査」(原文はここ)
「糖質を摂取しなければ大きく血糖値が上昇することはありません」について伺います。
私は緩やかな糖質制限(80~100g/日)を始めて5年経ちますが、いまだに空腹時は100超え、ヘモグロビンA1cは6%を超えます。
これは、まだ制限が足りないのか、それともインスリン分泌能力が壊れてるのか、どちらでしょうか?
また、下記のような記事を見かけましたが、肝臓から放出されるブドウ糖は自身の生活習慣ではコントロールできないのでしょうか?
「血液中には小腸から吸収されるブドウ糖と肝臓から放出されるブドウ糖が共存して両方のブドウ糖の濃度が血糖値です」
山下さん、コメントありがとうございます。
これだけの情報ではなかなかコメントが難しいですが、次回の記事にさせていただきます。
ベストな糖尿病対策は糖質制限、と専門医以外は解ってしまっている皮肉な原状。
透析などの糖尿病合併症治療が既得権益になってしまっているのでしょうか?
鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。
糖質制限がベストだと思っている医師はまだまだ少ないと思います。
多くの医師は糖質を大量摂取しているのが現状ですから。