緩い糖質制限は効果もゆるい

前回の記事で質問を頂きました。

「糖質を摂取しなければ大きく血糖値が上昇することはありません」について伺います。
私は緩やかな糖質制限(80~100g/日)を始めて5年経ちますが、いまだに空腹時は100超え、ヘモグロビンA1cは6%を超えます。
これは、まだ制限が足りないのか、それともインスリン分泌能力が壊れてるのか、どちらでしょうか?
また、下記のような記事を見かけましたが、肝臓から放出されるブドウ糖は自身の生活習慣ではコントロールできないのでしょうか?
「血液中には小腸から吸収されるブドウ糖と肝臓から放出されるブドウ糖が共存して両方のブドウ糖の濃度が血糖値です」

これだけの情報ではなかなかお答えするのが難しいですが、とりあえず可能な限り私の考えを書きます。

私自身の考えは、緩い糖質制限は健康な人が行うものであり、症状があったり糖尿病の方はやはりスーパー糖質制限が必要だと思います。1日100gの糖質を例えば3食で割れば、1食あたり30g以上です。糖尿病であれば食後の血糖値が200を超えます。空腹時、特に朝の血糖値が高いのは暁現象で、糖新生が朝方早くに起こり、それに対してインスリン分泌が相対的に少ないか、インスリン抵抗性があるか、筋肉のインスリン感受性が低いか、どれかまたはそのいくつかが考えられます。肝臓に脂肪があればインスリン抵抗性も高くなりますし、肝臓だけでなくすい臓にも脂肪が蓄積し、脂肪膵となり、インスリン分泌やグルカゴン分泌に影響があるでしょう。

また、「インスリン分泌が少し増加するだけで脂肪分解は抑制される」で書いたように、インスリンの作用は分泌量によって異なります。

ブドウ糖の取り込み>>糖新生阻害>脂肪分解阻害>空腹時インスリン

「肝臓から放出されるブドウ糖」はグリコーゲン分解および糖新生のことだと思います。糖新生を阻害できるほどのインスリン分泌能力がなければ、血糖値は上がりやすくなるでしょう。インスリン分泌能力があっても肝臓のインスリン抵抗性が高ければ、糖新生は抑制されない可能性もあります。

また、糖尿病では健康な人よりも肝臓のグリコーゲンは少ないと言われています。肝臓の脂肪が多ければグリコーゲンも少なくなると思います。そして、健康だと肝臓のグリコーゲンは筋肉のグリコーゲンよりも分解されにくいのですが、糖尿病だと脆弱なグリコーゲンで分解されやすくなるとも考えられています。やはり、重要なのは糖新生の抑制だと思われます。

さらにややこしいことに、糖新生は肝臓だけの仕事ではありません。腎臓もかなり糖新生を行っています。インスリンの作用が低下していたり、インスリン分泌が低下している糖尿病では、腎臓の糖新生が大幅に増加します。また、健康であれば腎臓のグリコーゲンは少ないですが、糖尿病だと腎臓のグリコーゲンは非常に多くなり、それが腎障害を起こしている可能性もあります。

空腹時で血糖値が100を超えてしまっているのですから、かなりβ細胞は弱っているか、インスリン抵抗性が高い状態だと思います。空腹時で100を超えればHbA1cは6を超えるのは当然でしょう。

インスリン分泌能力がどうなのかはよくわかりませんが、インスリン抵抗性は肝臓の脂肪など内臓脂肪を減少させること、筋肉のインスリン感受性を上げるために運動をすること、運動で筋肉量を増やすことが必要だと思います。

以前の記事「中途半端な糖質制限では中途半端な結果になる その1」「その2」で書いたように、中途半端な緩い糖質制限だと結果も中途半端です。

いずれにしても、ちゃんと糖質制限をした方が良いと思います。答えになったでしょうか?

 

「Glucose and glycogen in the diabetic kidney: Heroes or villains?」

「糖尿病の腎臓のブドウ糖とグリコーゲン:英雄か悪役か?」(原文はここ

 

6 thoughts on “緩い糖質制限は効果もゆるい

  1. スーパー糖質制限をしている時の朝の空腹時血糖値についてお尋ねします。
    2年半ほどスーパー糖質制限を行っています。かかりつけのクリニックで定期的(年4回)に血液検査を行っていますが、その時の結果としてはHbA1c=5.2%~5.4% 空腹時血糖値80~86mg/dLですが、年に1回別の病院で人間ドックを受けるとHbA1c=5.2%~5.5%とほぼ同じ結果ですが空腹時血糖値が115~127mg/dLと高い状態です。かかりつけのクリニックでは18時過ぎの血液採取、人間ドックでは朝9時の血液採取と言う差が有ります。人間ドックの健診医からは「糖尿病予備軍です」と言われてしまいました。以前の記事で「糖質制限はインスリン抵抗性を増加させる︖その1 その2」書かれていたように生理的インスリン抵抗性の状態なのでしょうか?暁現象で上昇した血糖値が生理的インスリン抵抗性により下げる事が出来ていないのでしょうか?、それともやはり糖尿病予備軍なのでしょうか?

    1. まことさん、コメントありがとうございます。

      HbA1cが高くないのに、暁現象が起きているということですが、次回の記事にさせていただきます。

  2. 先生のような医師のお立場とは違い気ままなことを申し上げれば、糖質100g/日はそもそも糖質制限なのでしょうか?糖質制限の解釈も人それぞれなのですね。

    それにしても、腎臓も糖新生!まだまだ知らないことだらけです。

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      スタンダード糖質制限食は100gでもOKです。100gで改善があるかないかで言えば、あると思います。
      しかし、その改善の程度はやはり少ないと思います。

  3. 先生、わざわざ記事にしてアドバイスいただきまして、ありがとうございます。
    もう一段の制限を加えて、数値の変化を確認してみたいと思っております。
    また、機会がありましたら、結果報告させていただきます。

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