食物繊維の増加はうんことおならを増やす

食物繊維は腸内細菌のエサです。しかし、それは我々のほとんどが雑食だから、それに応じて腸内細菌の力関係のバランスにおいて、食物繊維をエサにする腸内細菌が優勢になっているからです。糖質過剰摂取では、超悪玉菌が増加するでしょう。野菜や果物を食べずに、肉食の人ではその食事に適した腸内細菌バランスとなるでしょう。

今回の研究では、野菜などの植物ベースの食物繊維の多い地中海式の食事(FMD)と、高脂肪で食物繊維が非常に少ない、いわゆる西洋型食(WD)とを比較しています。西洋型食と言ってもそれなりな糖質少なめです。対象は胃腸症状または胃腸障害の病歴のない18人の健康男性(18〜38歳)です。地中海式の食事は、19%の脂質、62%の炭水化物、16%のタンパク質、54.2gの繊維が含まれていました。高脂肪西洋型食には、脂質51%、炭水化物27%、タンパク質21%が含まれ、繊維は4.7gでした。それぞれの食事は2週間続けました。(図は原文より)

上の図は様々な胃腸症状です。オレンジが西洋型食、緑が地中海食です。地中海食の方が、鼓腸(腸の中にガスが異常なほどにたまってしまっている状態)と腹鳴が有意に増加しました。

 

上の図はおならやうんこの違いです。西洋型食と比較して、地中海食は、毎日の排便回数には差がなく、より多くの便の排出とより柔らかい便に関連していました。うんこの量は西洋型食で1日およそ100gであるのに対し、地中海食ではおよそ200gです。また食物繊維を多く摂ると腸内細菌は非常にその量が多くなるのかもしれませんし、その食物繊維の残渣も多く、うんこが多いのでしょう。

地中海食の方が、おならの回数は平均して7回多く、1回のおならのガスの量は50%以上多くなっていました。腸内細菌が食物繊維を発酵して、ガスを多く作ると思われます。ほとんどのおならのガスは無臭の水素、メタン、二酸化炭素です。肉などのタンパク質消化の副産物である硫化水素ガスがおならの匂いとなります。

食物繊維をエサにして短鎖脂肪酸を作りだし、一部は体内に入りますが、腸管の細胞のエネルギーとなるでしょう。

食物繊維を大量に摂る地中海食と糖質少なめで脂質多めで食物繊維が非常に少ない西洋型食で、腸内細菌のコアメンバーは食事によってあまり影響を受けなかったようですが、その他は大きく違っていて、短鎖脂肪酸の酪酸生産菌の存在量は地中海食の方が多くなっていました。

しかしたった2週間で腸内細菌の勢力図は変化してしまうのですね。

尿を調べると、いくつもの代謝物が地中海食後に有意に増加することが確認されましたが、TMAO(トリメチルアミンN-オキシド)は1.5倍に増加していました。TMAOと言えば一般的には心血管疾患のリスクと関連していると考えられます。(この論文参照)通常肉をたくさん食べると増加すると考えられていますが、食物繊維豊富な地中海食で1.5倍増だったのは意外かもしれません。(私はTMAOは関連していないと思っていますが)

西洋型食の後にはカルニチンやチラミン、コルチゾール、プロスタグランジンの代謝物などが増加していました。ここらの関連はよくわかりません。

我々はうんこやおならをたくさんするために食事をしているわけではありません。便秘の人は食物繊維摂取量が少ないからと言われていますが、食物繊維を増やせばうんこが増えてしまい、余計に詰まってしまうでしょう。お腹がよく張ってしまう人は食物繊維が多すぎるのかもしれません。

最初の著書では野菜を含めて食物繊維はたっぷり摂ることを推奨していましたが、現在は考えを改めています。食物繊維は腸内細菌のエサであることは間違いないと思っていますが、食物繊維が少なければ少ないなりの腸内細菌のバランスとなり、その腸内細菌たちが働いてくれているのではないかと思っています。

私自身は毎日快便です。野菜も好きなのでたくさん摂っています。肉食にしてしまうとどうしてもバラエティーが乏しくなってしまう気がしてしまいます。

海外では炭水化物という言葉はあっても、糖質という言葉はありません。そのせいもあり、炭水化物制限は食物繊維が少なくなるという誤解を与えています。しかし、日本では糖質という言葉が確立して、炭水化物とは違うことが認知されてきています。糖質を制限しても食物繊維は別に摂取することは十分に可能です。だから「糖質制限をすると食物繊維の摂取量が減ってしまう」ということを言っている人は、海外の記事や論文を考えもしないでそのまま引証してしまっているのでしょうね。

食物繊維が健康的かどうかは不明です。でも私の腸内細菌は親からもらって、その後様々な状況で現在のバランスとなっています。現在の腸内細菌は食物繊維を欲しがっている気がしますので、野菜はこのまま摂り続けると思います。

食物繊維と便秘の関係については次回以降で書きたいと思います。

 

「Differential Effects of Western and Mediterranean-Type Diets on Gut Microbiota: A Metagenomics and Metabolomics Approach」

「腸内細菌叢に対する西洋型および地中海型の食事の異なる効果:メタゲノミクスおよびメタボロミクスアプローチ」(原文はここ

6 thoughts on “食物繊維の増加はうんことおならを増やす

  1. 森永製菓の「糖質90%オフのど飴」イヌリン
    という食物繊維が含まれていて、
    今回のブログのような効果が実感できます。

  2. 切り干し大根とひじきともずくとしいたけと、キクラゲ、わかめを日々食べています。乾物で貯蔵ができます。
    これが地中海食だとは思ってなかった。

    1. たかほんさん、コメントありがとうございます。

      切り干し大根とひじきともずくとしいたけと、キクラゲ、わかめは地中海食?

  3. おはよう御座います。
    いつもありがとうございます。

    上記の飴、一粒でもガス・排便に、
    (仕事中困るぐらい)効果的面ですよ。
    糖質ほぼ無いですし。
    森永関係者ではありませんが。

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