食事と健康の関係について普通の医師に聞いても無駄である

我々医師は自分で勉強しない限り栄養については無知です。だから、通常の診療の中で普通の医師に食事と健康、食事と病気の関係について聞いても無駄です。私もまだまだです。それでも私自身は今でこそ、自信を持って患者さんの質問に答えることができますが、10数年前、食事に関して質問を受けたなら、

「バランスの良い食事を心がけてください」

「脂肪分控えめでね」

「コレステロールを摂り過ぎないでください」

「塩分控えめでね」

「カロリーの摂り過ぎで太るんですよ」

「朝ごはんちゃんと食べて、3食キッチリとね」

「汗をかいたらポカリで脱水予防してね」

などとアドバイスしていたでしょう。つまり、普通の医師の栄養の知識なんて所詮、テレビ番組の情報レベルです。その証拠に、多くの医師は昼ご飯をカップラーメンで済ませたり、喉が渇いたときに甘い飲み物やスポーツドリンクなどを飲んでいたり、お腹がポッコリと出ていたり、明らかに肥満であったりします。食事と健康、食事と病気が繋がっていないと思っているとしか思えません。

それはなぜかというと、医学部での授業では栄養学の授業は「ゼロ」なんです。20年以上前も栄養学の授業はありませんでしたし、今の医学部でもありません。全く栄養のことなど学びません。でも医師になり臨床の現場では、患者さんが食事について聞いてきます。知らないと答えると「プライド」が傷つくのか、「アホ」なやぶ医者と思われたくないのか、どこかで聞いたような根拠もわからない知識で答えてしまうのです。恐らく糖質ではなく脂質の摂り過ぎが皮下脂肪や内臓脂肪の増加を招くと本気で思っている医師も多いと思います。

医学部の学生は、医師になったとしても一生で一度も出会うこともないかもしれない、非常に珍しい病気の勉強はたくさんしますが、医療現場では頻繁に出会う「肥満」については、その治療の仕方、予防法はほとんど学びません。全く学ばないわけではありませんが、その内容は恐らく「カロリー制限」と「運動」だと教えられているでしょう。それがほとんど効果がないとは教えられませんが。

医学部教育の大きな問題は、治療至上主義に陥っていて、予防に関する教育がほとんどないことです。予防と言えば先ほどの「カロリー」と「運動」や「バランスの良い食事」レベルの話しかないでしょう。もちろん医師は目の前に来た患者を治すことが仕事なので、治療についての知識は非常に重要です。ビジネス的に考えれば、お客さんが来なければ仕事にならないので、お客さんが来ないような策、つまり予防は必然的に軽視されるのかもしれません。

現在の私の診療での食事に関する発言は、普通の医師とは真っ向から対立します。

「糖質をできる限り摂らないでね」

「脂質とタンパク質はたっぷりね」

「コレステロールは気にしないで良いよ」

「1日1食か2食で十分」

「汗をかいてもスポーツドリンクは必要ないよ。水で十分」

「カロリーなんて気にしなくていいよ」

などと話しているからです。糖質制限をすると、様々な症状に悩んでいて、内科などでも原因がわからず、良くならない方が、次の日から大きく改善し薬も必要なくなる、なんてことが珍しくありません。外来では原因が良くわからない症状で受診される方も多いですが、そのほとんどは食事が間違っているか、どこかで処方された薬の副作用であることが多いです。

2型糖尿病では、アメリカの糖尿病学会ではすでに認められている糖質制限をすれば、多くの人は薬が減らせたり、薬をやめられたり、寛解になることも難しくないのに、それを試してみることすらせずに、選択肢として提示すらせずに、自分がこれまで学んだ、もしくは製薬会社のセールスから(直接または学会や講演会などを通じて)得た治療法、薬物療法を選択します。もちろんガイドラインに沿った治療法なので、誰も文句は言わないでしょう。この方法は寛解に持っていける方法ではなく、糖尿病の進行を少し遅らせる治療であり、また食事療法は軽視され、いまだにカロリー制限で、脂質の摂取を減らせと言われるでしょう。さらに運動を増やせとアドバイスし、患者の状態が悪くなれば、患者の努力が足りないと思うでしょう。

薬物療法に関するエビデンスは、当然製薬会社がスポンサーとなり、研究費が出るので、多くの研究が行われるでしょう。ネガティブな結果はほとんど論文になりませんでの、メタアナリシスが正しいとは言えず、根拠は誰かの都合の良い内容になります。しかし、食事に関する研究は非常に難しい(ある食品を摂るグループと摂らないグループでランダムにブラインドで分けることはできないし、それを何年も行うことも非常に困難)だけでなく、研究費も出す企業はほとんど無いので、エビデンスがどんどん出てくることは今後も難しいでしょう。

食事も体型も個人の問題であるかもしれません。特に最近は肥満であることは「個性」だとしています。多くの医師はそこに踏み込みたくないのかもしれません。しかし、食事も体型も病気の原因であるのであれば、医師はしっかりと言及すべきです。食事が原因であったり関連する病気は恐らく90%を超えるでしょう。食べたもので体ができているのですから。ほとんどは糖質過剰症候群です。

医師は忙しいですし、そもそも栄養については専門外だから詳しく知らなくても良いと思っている人が多いのではないかと思います。食事や栄養に関しては栄養士に栄養指導を頼めば良いからです。しかし、この栄養士の知識も全くアップデートされていません。厚労省が変わらないから仕方がないかもしれませんが、栄養学が古典栄養学から進歩しないので、栄養指導も効果のないバランスの良い、カロリーを気にした食事となっています。医師は恐らく変わりません。しかし、栄養学がもっと進歩して、変化して、栄養士が医師に間違いを指摘できるレベルまでになってほしいと思っています。

栄養の専門であるはずの栄養士が、バランスの良い食事やカロリー計算が本当に効果的なのか、糖質を50~60%も摂取している人の食後血糖値や体重変化がどうなのか、など自分や患者さんでちゃんと確かめてほしいです。そうすれば、自分たちが学んだ栄養学がどれほど間違っていたのか、どれほど根拠が乏しいのか、どれほど患者さんに有害なのかがわかるからです。

糖質過剰摂取がもたらす有害性を無視した栄養学は存在価値がありません。

「Medical Nutrition Education, Training, and Competencies to Advance Guideline-Based Diet Counseling by Physicians: A Science Advisory From the American Heart Association」

「医師によるガイドラインに基づく食事カウンセリングを進めるための医療栄養教育、トレーニング、および能力:米国心臓協会からの科学的勧告」(原文はここ

コメント

  1. 鈴木 武彦 より:

    『糖質過剰症候群Ⅱ』読むたびに、先生の糖質制限に対する熱意に圧倒されます。

    若干旧著ですが
    『やせたければ脂肪をたくさんとりなさい ダイエットにまつわる20の落とし穴』
    (ジョン・ブリファ、夏井睦/江部康二 監修)も、
    食事と健康、運動の関係が説得力十分に記載されています。

  2. 鈴木 武彦 より:

    「栄養の専門であるはずの栄養士が、バランスの良い食事やカロリー計算が本当に効果的なのか、糖質を50~60%も摂取している人の食後血糖値や体重変化がどうなのか、など自分や患者さんでちゃんと確かめてほしいです。」
    もっともですが、それほど意識が高く、また能力があれば、現代日本では栄養士より、
    医師を目指しそうですね。

    そして医師となった暁にはやはり食事より治療を主眼とするのでしょうね、、、。

    • Dr.Shimizu より:

      鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      栄養士は本当は栄養学の専門家ですが、栄養学が古すぎて問題です。
      つまり学校で得た知識がすでに間違っているのです。
      栄養士が本当の意味でプロになってほしいですね。

  3. 大阪高橋 より:

    前々から知りたかったのですが、糖尿病患者さんでフリースタイルリブレなどを購入して毎日使ってる人は何割くらいいるのでしょうか? 日本の医師や栄養士は、血糖値測定器を買って自分で調べるように強く勧めているのでしょうか?

    私は糖尿病ではありませんし、糖質制限しているので、わざわざ1万数千円も払って購入する気はなかなか起きないのですが、患者さんや予備軍だと指摘を受けた人は、糖質制限をしたくない人ほど、自分の普段の食事がどのくらい食後高血糖を招き、食前食後の運動や、何を一緒に食べたり飲んだりすればどのくらい抑えられるのかを細かく調べるべきだと思いますね。

    • Dr.Shimizu より:

      大阪高橋さん、コメントありがとうございます。

      糖尿病の患者さんがどれほど血糖値を測定しているかはわかりません。
      それほど多くないと思います。食後高血糖が起きている自覚もない人もかなりいると思います。
      糖質制限をしているのであれば毎回のように測定は必要ないでしょう。
      しかし通常、糖尿病の患者さんは病院で血糖値とHbA1cを測定しているので、それで十分だと思っているのではないでしょうか?
      だから改善しないのですが。

      • 大阪高橋 より:

        糖質たっぷりな美味しい食べ物は腐るほどあって、それらを食べるのが生き甲斐という人も大勢います。それに何より、狩猟採集時代と現代では、地球全体の人口があまりにも違いすぎますので、もし人類がみんな糖質制限をしだしたら、あっという間に食糧難になるはずです。糖質制限否定派がそこまで心配して否定してるようには思えませんが(たいていは糖質制限が流行ると困る業界からの広告費や研究費が目当てでは?)、私は穀物は今後も重要な食糧源だと思いますし(とりわけ貧困層にとっては)、だからこそ糖質をある程度摂っても食後高血糖にならない方法がもっと研究され、広まらないものかなと思っているのですが…。

  4. じょん より:

    清水先生、こんばんは。
    企業の産業医や人間ドックの医師は、伝統的な食事がいいとか、検査値についても古い考えのままです。対応がやっかいです。

  5. ジョガーM より:

    栄養学は日進月歩なのに、医師や管理栄養士の知識はまったくアップデートされていないのは同意です。
    脂質について、いまだに飽和脂肪酸を悪者扱いする方もいます。
    ところで、先生は不飽和脂肪酸のうち、オメガ6含有量た高いとされる「大豆油」や「ごま油」「ピーナッツ油」についてはどうお考えでしょうか?
    私は毎日摂取しているので気になっています。
    40代後半で今のところ健康上の問題はありませんが、運動を毎日しているからであって、本当の所はどうなのか分かりません。

    • Dr.Shimizu より:

      ジョガーMさん、コメントありがとうございます。

      実際のところ、抽出法によって違うかもしれません。高温にする製造過程があると、オメガ6が毒性の強いヒドロキシノネナールになってしまいます。
      さらに調理の段階で熱を加えるとヒドロキシノネナールが増加するでしょう。
      しかし、これに関してはオメガ3でも同様で、酸化されるとヒドロキシヘキセナールになってしまい、これも恐らく毒性が強いでしょう。
      だからできる限り精製しないオイルで、できれば調理にも熱を加えないように使うのが良いでしょう。
      また多価不飽和脂肪酸は酸化しやすいので、開封したら早めに使用するのが良いと思います。
      ただ、通常量では十分代謝できるのではないかと思います。しかし、これは糖質制限をしている状態の話です。
      糖質過剰摂取では酸化ストレスが増加するので、体内でも多価不飽和脂肪酸は酸化されやすく、
      ヒドロキシノネナールやヒドロキシヘキセナールが増加するのではないかと思います。
      オメガ3は健康的、オメガ6は炎症性だという考えにはちょっと懐疑的です。
      オメガ3のサプリも酸化しているので、恐らくあまり有益なものではないでしょう。
      そして、糖質制限をしていれば、「オメガ6は本当に炎症を促進するのか?
      で書いたように、ピュアなオメガ6は炎症を増加させないと思います。