血糖値スパイクとがん死亡率

HbA1cは過去1~2か月くらいの平均血糖値と考えられており、たとえそれが高くなくても、その中身、つまり血糖値の変動はわかりません。非常に高血糖と低血糖の波を繰り返しているかもしれません。その場合、1,5-AGという検査があります。これは食後高血糖、血糖値スパイクの指標となる検査です。

個人差はありますが、血糖値が160~180mg/dlを超えると通常は尿に尿糖が出ます。1,5-AGは構造が非常にブドウ糖に似ており、尿糖が存在すると、尿細管における再吸収は競合して阻害されて尿中に排泄されるため血中濃度は低下します。つまり、1,5-AGが低いということは、血糖値スパイクが起きている時間が長いということです。逆にこの値が高いと血糖値スパイクがあまり起きていないと考えられます。糖質制限をしていると測定する必要もないと思いますが。また、1,5-AG値は糖尿病の薬や漢方薬などにも影響を受けるので注意が必要です。

今回の研究では耐糖能が正常な日本人の1,5-AGを測定して、4つの群に分けて、がんによる死亡率を分析しました。対象は1994年から2012年の間に75gOGTT(経口ブドウ糖負荷試験)を受けて、空腹時血糖および2時間値が正常な6,783人です。2013年8月まで死亡率を追跡しました。第1グループの1,5-AGの平均値は28.4、第2グループは21.0、第3グループは16.8、第4グループは11.3です。ちなみに基準値は14μg/mL以上とされています。(表は原文より改変)

モデル3
男性
 第1四分位1
 第2四分位1.96(1.16〜3.38)
 第3四分位1.54(0.89〜2.70)
 第4四分位2.55(1.56〜4.31)
女性
 第1四分位1
 第2四分位1.04(0.59〜1.82)
 第3四分位1.12(0.64〜1.93)
 第4四分位1.45(0.87〜2.44)

上の表はHOMA-IR、HbA1cなど様々な調整を行ったモデルです。女性では有意ではなりませんでしたが、男性では最も低いグループでは2.55倍もがんの死亡率が高くなりました。

モデル3
男性1.35(95%CI 1.09〜1.66)
女性1.15(95%CI 0.88〜1.51)

1,5-AG値が10µg/mL低下したときのがん死亡率は日本人の男性では35%増加することになります。

つまり、たとえ空腹時血糖値やOGTTが正常であっても、血糖値スパイクが頻繁に起きている場合は非常にがんによる死亡リスクが高くなるのです。血糖値スパイクを起こすのはもちろん糖質です。糖質過剰摂取により血糖値スパイクが起きるのです。今回の研究では女性では有意な結果が出ませんでしたが、だからといって血糖値スパイクが女性に関係ないわけではないでしょう。

がんは糖質過剰症候群です。いくら空腹時血糖やOGTTで正常であっても、糖質過剰摂取による有害な影響を受けていないわけではありません。糖質制限でがんをできる限り予防しましょう。

 

「Association between a biomarker of glucose spikes, 1,5-anhydroglucitol, and cancer mortality」

「グルコーススパイクのバイオマーカーである1,5-AGとがん死亡率との関連」(原文はここ

2 thoughts on “血糖値スパイクとがん死亡率

  1. 知るほど、糖質過剰摂取は人間本来の機能に会わない、と感じます。
    また、実感もしております。

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      糖質過剰摂取は初期設定にはありませんでしたからね。

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