難消化性でんぷんはほとんど効果がない

通常のでんぷんはすぐに消化吸収され、血糖値を急激に上げます。しかし、難消化性でんぷん(レジスタントスターチ)を一緒に摂取すると血糖値の上昇を抑えてくれると一般的には考えられています。本当でしょうか?

今回の研究では、消化性でんぷんと難消化性でんぷんである天然バナナでんぷんおよび高アミローストウモロコシでんぷん(難消化性デキストリンと同じ?よくわかりません)を加えたもので、血糖値変動はどうなるかを分析しています。Amiocaという消化性でんぷんの商品を1日26.6g摂取するのと比較して、天然バナナでんぷんとAmiocaを混ぜて40g/日の難消化性でんぷん+26.6g/日の消化性でんぷん、または高アミローストウモロコシでんぷんにより40g/日の難消化性でんぷん+26.6g/日の消化性でんぷんを含む飲み物を、朝食時と昼食時に分けて2回飲みました。

参加者は十分に2型糖尿病がコントロールされていない10人で、平均48.5歳、平均BMI29でした。平均の空腹時血糖値は203mg/dL(!)、HbA1cは9.58、インスリン値は7.4μUI/ mLでした。

毎日の食事摂取量は下の表のようにどれも大きな違いはありませんでした。(表は原文より改変)
消化性でんぷん高アミローストウモロコシでんぷん天然バナナでんぷん
エネルギー(kcal)1711±77.871558±57.191576±106
炭水化物(g)198.9±9.15215.7±14.34194.7±13.89
タンパク質(g)63.28±2.6569.53±6.2364.18±3.24
脂質(g)54.35±1.9664.65±11.1759.58±7.38
食物繊維(g)13.8±0.9814.58±1.4112.65±1.78

この食事で4日間持続的に血糖値を測定しました。(正しくは測定してるのは間質液のグルコース値なので血糖値とは違いますが、以下も血糖値と表します。)

2〜4日目の血糖コントロールに対する難消化性でんぷんを含む食事の効果です。
GCインデックス期間(日)消化性でんぷん高アミローストウモロコシでんぷん天然バナナでんぷん
24時間平均血糖値2164.2(151.3、177.9)180.2(166.7、193.8)178.7(166.4、187.6)
3163.9(154.7、167.2)183.6(175.8、190.1)173.3(170.6、177.1)
4151.3(144.5、162.1)189.2(173.5、200.8)172.8(164.1、179.2)
最大血糖値2241.4±90.08249.8±85.25243.7±68.60
3230.8±83.48244.3±86.98228±71.13
4213.2±83.81260.4±80.31233±82.19
最小血糖値293.50(84.50、119.3)108(88.25、211)110(94.75、181.3)
3105.5(85.76、147.5)106.5(85.50、218.5)96(89.75、143.8)
491(73.75、129)106(81、217)93.50(83、199.8)
高血糖指数23.55(0.97、15.61)3.62(1.20、29.35)3.71(2.25、18.81)
33.03(1.51、14.07)4.82(1.09、27.99)3.19(1.54、16.28)
43.17(0.49、9.79)5.37(2.20、24.16)2.51(1.25、18.69)
低血糖指数20.404(0.002、0.818)0.028(0.0、0.606)0.005(0.0、0.465)
30.061(0.0、0.687)0.061(0.0、0.915)0.392(0.0、0.641)
40.352(0.0、1.20)0.059(0.0、0.836)0.453(0.0、0.775)
最大血糖変動幅2128.1±61.42115.5±44.94115±45.22
3114.2±53.42111.7±50.66109.6±32.20
4109.1±56.11129.5±52.5699.80±31.45
TAR(%)

血糖値が180を超える時間の割合

214.24(0.0、59.20)12.50(0.00、100.4)11.63(4.42、99.57)
36.94(0.00、62.07)17.71(0.00、100.4)9.37(2.60、94.10)
47.98(0.00、61.02)25.52(1.82、100.4)48.09(3.12、100.4)
TBR(%)血糖値が70を下回る時間の割合2000
3000
400(0.00、0.35)0
TIR(%)

血糖値が70~180の範囲にある時間の割合

281.95(21.79、100.4)88.03(0.00、100.4)88.72(0.00、96.96)
384.03(38.20、100.4)81.77(0.00、100.4)90.97(6.24、97.75)
492.36(39.33、100.4)74.83(0.00、95.40)0(0.00、100.3)
24時間平均血糖値で見ると、期待に反して有意に難消化性でんぷんを含む2つのグループの方が消化性でんぷんだけのグループよりも高くなっています。それ以外ほとんど有意な差はなりません。どのグループも低血糖はほとんどありませんでしたが、180以上の高血糖の時間は4日目では消化性でんぷんだけのグループの方が少なく見えます。
パラメータ消化性でんぷん高アミローストウモロコシでんぷん天然バナナでんぷん
血糖値(mg/dL)−14.41±32.35−1.00±34.47−36.47±36.86
インスリン(µUI/mL)−4.0(−7、0.5)−1.0(−6.0、4.0)0.0(-3.5、1.5)
中性脂肪(mg/dL)−11.00(-490.0、18.00)−32.0(−98.5、−5.5)−24.00(−389.0、13.0)
コレステロール(mg/dL)−4.94±32.99−0.94±33.55−10.76±44.81
GLP-1(pM/L)−4.496±15.035.379±22.09
HOMA-IR−1.91±2.20.28±5.77−1.88±3.03

上の表は空腹時パラメーターのベースラインからの変化に対する難消化性でんぷんの影響です。天然バナナでんぷんでのみ消化性でんぷんと比較して空腹時血糖値が低下しました。高アミローストウモロコシでんぷんは何ともしょぼい結果でした。

生まれて物心ついたころからこれまでの食事を変えることは難しい人もいるでしょう。その時にできる限りこれまでの食事に近いものを維持するために、食べる順番やGIを気にしたり、オートミールや難消化性でんぷんなどを取り入れてどうにかしようとすることもあるでしょう。しかし、その結果は期待に反してそれほど大きなものではないことが多いと思います。(「オートミールってどうなの?」「糖尿病の低GI/低GL食はほとんど効果がない」など参照)ちょっと変えたくらいで2型糖尿病をはじめ糖質過剰症候群は改善しません。中途半端な糖質制限では結果も中途半端です。

難消化性でんぷんなどを摂取するにしても、自分で食後血糖値がどうなるかを確認する必要があります。「トクホ」のお茶などに含まれている難消化性デキストリンなどは本当に眉唾であり、恐らくほとんどまたは全く効果が無いでしょう。(裏ではお金が動いているのでしょうね?)自分で調べたことがある方は教えて下さい。

確認もせずに自分の中だけで健康に良いことをしているつもりになっていても、実際には全く効果が無いことを続けていると、糖質過剰摂取の悪影響はどんどん進行します。

糖質制限をしない状態で血糖値やインスリン分泌のコントロールはかなり困難でしょう。基本は糖質制限です。

 

「Resistant Starch Consumption Effects on Glycemic Control and Glycemic Variability in Patients with Type 2 Diabetes: A Randomized Crossover Study」

「2型糖尿病患者の血糖コントロールと血糖変動に対する難消化性でんぷん消費の影響:無作為化クロスオーバー試験」(原文はここ

3 thoughts on “難消化性でんぷんはほとんど効果がない

  1. 「食べる順番やGIを気にしたり、オートミールや難消化性でんぷんなどを取り入れてどうにかしようとする」
    これで利益になるのはこれらの食品を売る側だけではないのでしようか。(あと、製薬会社とか)

    消費者も、食べてる瞬間は食欲も満たされて「健康的」と信じる事ができますが。

  2. 清水先生、おはようございます。

    難消化性デキストリンは、各社から販売されています。今回、先生が示された血糖などのデータを見ても糖質制限には全く及ばないですね。

    デキストリンの中でもαシクロデキストリン、別名αオリゴ糖は、面白い構造をしていて血糖や中性脂肪、sdLDLコレステロールを低下させるという報告があるようです。

    1. じょんさん、コメントありがとうございます。

      αシクロデキストリンは私は良く知りません。様々な報告は人間?ネズミさん?
      いくつかの論文を見てみたいと思います。近いうちに記事にします。

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