α-シクロデキストリンについてコメントをいただきました。
難消化性デキストリンは、各社から販売されています。今回、先生が示された血糖などのデータを見ても糖質制限には全く及ばないですね。
デキストリンの中でもαシクロデキストリン、別名αオリゴ糖は、面白い構造をしていて血糖や中性脂肪、sdLDLコレステロールを低下させるという報告があるようです。
α-シクロデキストリンというものをご存じでしょうか?私は知りませんでした。情報だけを読めばなかなか興味深い物質ですが、一方いつものように眉唾のような気もします。このサイトに書かれていることでは、血糖値上昇抑制効果、LDLコレステロール低減効果、中性脂肪吸収阻害効果、飽和脂肪酸の選択的排泄など様々な作用があるようです。
α-シクロデキストリンは血糖値や脂質に影響を与えるようですが、実際にはどのような報告があるのでしょうか?いくつか見てみましょう。
1日6gのα-シクロデキストリン(α-CD)を12週間飲んだ場合の研究では、次のような変化がありました。(この論文参照)
脂質とリポタンパク質 | プラセボ | α-CD |
---|---|---|
コレステロール(<200 mg / dL) | 180±4 | 180±4 |
中性脂肪(<150 mg / dL) | 97±6 | 100±6 |
LDL-C(<100 mg / dL) | 103±3 | 103±3 |
LDL-p(<1000 nmol / L) | 1038±47 | 1005±45 |
sLDL-p(<1317 nmol / L) | 405±38 | 365±35 |
HDL-C(<40 mg / dL) | 58±2 | 60±2 |
HDL-p(24–49 umol / L) | 35±1 | 35±1 |
小さな危険なLDLであるsdLDLの粒子数はおよそ10%低下しました。その他は変化ありませんでした。中性脂肪も減少していません。
糖代謝 | プラセボ | α-CD |
---|---|---|
体重(Kg) | 74.8±1.9 | 74.7±2 |
血糖値(74–106 mg / dL) | 88±0.9 | 87±0.7 |
インスリン(2.6 − 24.9 mcU / mL) | 7.1±0.5 | 7.3±0.6 |
HbA1C(4.0 − 6.0%) | 5.3±0.4 | 5.3±0.4 |
リポタンパク質インスリン抵抗性指数(%) | 1.6±0.1 | 1.4±0.1 |
HOMA-IR | 1.6±0.1 | 1.5±0.1 |
血糖値もインスリン抵抗性も微妙な変化です。
α-CDに関連する重篤な有害事象は認められませんでしたが、α-CDの約8%が軽度の胃腸症状を訴えたのに対し、プラセボでは3%でした。この系統の薬やサプリはどうしても胃腸症状(腹痛、腹部膨満感など)が多くなる傾向にあります。
次の研究です。(この論文参照)
0、2、5、または10gのα-シクロデキストリンを添加した50gの消化性炭水化物を含む白米を摂取しました。
上の図は血糖値とインスリン値の推移です。確かに食後血糖値はα-シクロデキストリンの量が多くなるにつれて、低下しています。インスリン値も同様にやや低下しているようにも見えます。
上の図は血糖値とインスリン値の曲線下面積です。確かに血糖値は5gと10gで低下しています。しかし、インスリン値は有意な変化ではありませんでした。特に2gでは有意ではないにしても、0gよりもインスリン分泌が多くなっているようにも見えます。
高用量のα-シクロデキストリンは、より大きな満腹感をもたらしましたが、嗜好性の低下および軽度の胃腸症状(腹痛、悪心、膨満)の発生率の増加と関連していました。やはり胃腸症状が出ますね。
次の研究です。年齢の中央値が70歳の高齢者を対象としたものです。(この論文参照)
10gのα-シクロデキストリンと100gの砂糖を混ぜたドリンクを飲みました。
上の図は血糖値とインスリン値の推移です。○がコントロール、●が10gのα-シクロデキストリン群です。やや気持ちばかり血糖値やインスリン値が低いですが、大きな変化ではありませんね。
次の研究では20代の若い人が100gのパン(50gの糖質)と10gのα-シクロデキストリンを一緒に摂取した場合を調べています。(この論文参照)
上の図は血糖値の推移とインスリン値の推移です。赤がパンのみの摂取、青がパンとα-シクロデキストリン摂取、緑はα-シクロデキストリンのみ摂取です。当然α-シクロデキストリンのみは変化しませんが、この研究ではパンとα-シクロデキストリンを一緒に摂取した場合、大きく血糖値もインスリン値も低下しています。そしてピークがかなり遅れていますね。
次の研究を見てみましょう。中性脂肪はどうでしょうか。下の図のような26gの脂質を含んだマクドナルドのソーセージエッグマフィンを食べて、2gのα-シクロデキストリンを摂取した場合の変化を調べています。(この論文参照)
上の図はプラセボとの比較です。血糖値は差がありません。コレステロールは食事による急性変化はほとんどありませんので、やはりプラセボと差がありません。一番下の中性脂肪は1時間と3時間で低下していました。
上の図は3時間での曲線下面積の変化量です。そして、ベースラインでの中性脂肪値で分けています。高中性脂肪血症のある群の方が、α-シクロデキストリンにより中性脂肪の増加は減少しています。一方正常の中性脂肪値の群では差がありませんでした。
次に、うんこを調べてみましょう。(この論文参照)
この研究では1食に2gのα-シクロデキストリンを食事と一緒に摂取して、2日間で12gのα-シクロデキストリンにより、うんこの中の中性脂肪が増加するかどうかを分析しています。
上の図は24時間のうんこの中の脂質含有量です。プラセボとα-CDの間で、24時間にわたっての便中の脂質含有量に差はありませんでした。
上の図は血中の中性脂肪です。これも差がありません。
以上、いくつかの論文をご紹介しましたが、効果はゼロではなさそうです。しかし、やっぱりその効果の程度はショボいですね。個人差も大きいでしょうから、これを使うなら、ご自身で血糖値などは測定した方が良いですね。
糖質制限の方が確実ですし、大きな効果があるでしょう。
サプリメント類摂るだけで健康になれるなら、
人生は容易いです。
鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。
サプリも新型コロナももっと言えば宗教も同じ構図です。
不安や恐怖を植え付ければ(またはそれを持った人であれば)その後のコントロールは非常に簡単でしょう。
清水先生、こんばんは。
αシクロデキストリンについて、詳細にヒトでの効果を確認いただきありがとうございます。
構造的に面白い効果があるように思いました。
白米やパンと併用することで、血糖やインスリンの上昇を抑えるような結果でしょうか。そしてsdLDLのわずかな減少。
通常の難容性デキストリンよりは意味があるのでしょうか。
しかし、やはり基本は糖質制限ですね。
αシクロデキストリンについて興味を持ち、数日間調べている者です。
素人が調べる範囲ですぐヒットする情報は(実験結果も含めて)販売元の出すものであることが多く、都合のいい情報ばかりの中、こちらのサイトに辿り着きました。
海外の実験結果なども紹介してくださり、糖質や脂質に対する効果について自分なりに考え直すきっかけになりました。ありがとうございます。
とはいえ既に注文してしまったので(まだの人は注文する前にこのサイトを読んでから検討してください!)、持久運動機能向上、疲労回復効果などの方面から何らかのメリットがないか調べていこうと思います。
たぐちさん、コメントありがとうございます。
糖質や脂質を抑えるといったサプリのほとんどはこんなもんで、
大して効果は望めないでしょう。
ちょっとの違いを大きく見せるのは製薬会社を含めて企業がよく行うことです。