みなさんは治療という言葉を聞いて、どのように思うでしょうか?「治療」の意味は、病気やケガなどを治すこと、または、病気や症状を治癒あるいは軽快させるための医療行為、です。多くの人が求めるのは治癒でしょう。

治癒というのは非常に定義が難しいでしょう。完全に治った状態、根治、完治とでもいう状態です。しかし、ケガをすると傷ができますが、100%完全に綺麗な状態になることは難しく、何らかの痕は残るでしょう。機能面で完全に回復すれば通常は治癒ということになります。

一方病気の治癒というのも難しいです。感染症などは後遺症なく回復すれば治癒と呼べますが、糖尿病や高血圧、脂質異常症などは治癒という状態は恐らく無く、「寛解」という状態になります。

こんなに医療が進化していると言われている現代なのに、患者は増えるばかりで、患者の飲む薬も増えるばかりです。ずっと長年治療しているのに、なんで治癒や寛解にならないのでしょうか?問題は現在の医療で行われている治療の一部が、治癒や寛解を目指していないことです。それは特に慢性疾患と言われている病気について特に顕著です。治さない治療、治らない状態のままでいる治療が行われています。

例えば、糖尿病は糖質過剰摂取が原因ですが、一般的な治療では、食事療法や運動療法、そして糖尿病の薬による治療ということになります。しかし、食事療法はいまだカロリー制限がメインで、糖質過剰摂取のままです。運動では大きな改善は難しいでしょう。糖質過剰摂取という原因をそのまま放置して、薬を飲んでも治癒や寛解は得られません。

原因を取り除かずに、治るわけがないのですが、薬を使用すると、医師も患者も治療している気になります。そして見かけの数値が良くなれば、何となく体の状態が治癒に向かっている気になります。しかし、ほとんどの人はずっと薬や医療から離れられません。しかも、そのうち副作用が出てきたりして、その副作用にさらに薬が処方されてしまいます。

LDLコレステロールが高いとスタチンが処方されてしまいますが、どれほどの人がスタチンから卒業できるでしょうか?スタチンをやめれば再度LDLコレステロールは上昇します。そして、スタチンを飲んでいると筋肉の痛みを感じたり、時には糖尿病を発症したりします。スタチンでよくなるどころか、その副作用に対して別の医療が必要になります。筋肉の症状は10人に1人、糖尿病は50人に1人発症するのに対して、5年間スタチンを飲んでも心臓の発作を防げるのは104人に1人であり、脳卒中は154人に1人しか防げないのです。(ここ参照)そもそもLDLコレステロールが高いことが本当に不健康だとは思えません。LDLコレステロールが高い方が長生きなのですから。(「LDLコレステロールが非常に低いと全原因死亡リスクが高い」「低LDLコレステロールはすべての原因による死亡率を増加させる」など参照)

胃食道逆流症(逆流性食道炎)のPPI(プロトンポンプ阻害薬)も同様です。逆流性食道炎では投与期間の上限は8週間です。しかし、再発・再燃を繰り返す場合の投与日数の制限はありません。再発・再燃を繰り返すのは原因を改善していないからですし、もともと症状がない人でも、PPIを8週間使用すると、その後中止したときに半数近くに、胸焼けなどの胃酸逆流症状が起こるのです。PPIを続けると代償性にガストリンが増加し、胃酸を分泌する細胞を過剰に増加させます。それにより、中止後に胃酸が過剰分泌になるのです。(「PPI(プロトンポンプ阻害薬)の暗黒面 その1 薬を止められなくする仕組み」参照)

PPIは逆流を治療するのではなく、逆流する胃酸の産生を抑えるだけです。人間が生まれつき持っている重要なメカニズムの一つを止めてしまうのです。根本的な原因を全く改善しません。つまり治していないのです。それどころか、がんをはじめ様々な病気のリスクを高めます。(「PPI(プロトンポンプ阻害薬)の長期使用と胃がんのリスク」「PPI(プロトンポンプ阻害薬)は様々な死亡率を上昇させるかもしれない」など参照)

高血圧もずっと薬を飲み続けている人が多いでしょう。薬を飲んでも高血圧は治りません。高血圧になるような状態を維持しつつ、薬で無理矢理正常の血圧に近づけているにすぎません。

今回の研究によると、高血圧の代表的な薬を長期間使用すると、腎臓に悪影響が起こる可能性があります。高血圧は腎臓によって良くないと言われているのに、その治療薬が腎臓に悪さをするなんて何をやっているかわからなくなります。

高血圧ではACEIやARBというレニン-アンジオテンシン阻害剤が処方されることが多いのですが、実は腎保護作用もあると言われています。しかし、一方で腎臓を障害してしまう可能性もあります。(図は原文より)

上の図はレニン-アンジオテンシン阻害剤によるレニン-アンジオテンシン系の長期阻害が、人間の腎臓の細動脈肥大を誘発することを示しています。Aは健康なコントロール、レニン-アンジオテンシン阻害剤を使用していない良性腎硬化症の患者、およびレニン-アンジオテンシン阻害剤の長期使用を伴う良性腎硬化症の患者の腎臓切片の代表的な画像です。レニン-アンジオテンシン阻害剤を長期間使用している患者は、輸入細動脈に顕著な肥大を示しました。Bは傍糸球体領域での輸入細動脈の平均厚さを示しています。レニン-アンジオテンシン阻害剤を長期間使用している患者では、コントロールやレニン-アンジオテンシン阻害剤を使用していない人と比較して著しく厚い腎細動脈壁を示しました。

CとDはレニン細胞(レニンを分泌する傍糸球体細胞)が人間の腎細動脈肥大に関与していることを示しています。コントロールやレニン-アンジオテンシン阻害剤を使用していない人と比較して、レニン-アンジオテンシン阻害剤の長期使用では腎臓切片のレニン陽性領域は広範でした。(コントロール:307.3±74.7μm2 、レニン-アンジオテンシン阻害剤なし: 677.8±313.4μm2 、レニン-アンジオテンシン阻害剤の長期使用:1347± 529.9μm2)

Eは、レニン-アンジオテンシン阻害剤の長期使用の前に腎生検を受けて、レニン-アンジオテンシン阻害剤の長期使用後にも腎生検を受けた2人のIgA腎症の患者のものです。薬を使用する前の腎臓の輸入細動脈に異常は2人とも認められませんでした。しかし、長期使用後に顕著な輸入細動脈肥厚と広範なレニン陽性領域を示しました。

つまり、人間にとってレニン-アンジオテンシン阻害剤は、レニン-アンジオテンシンの低下をもたらすことにより腎臓でのフィードバック反応で、レニン細胞の増殖、レニン分泌刺激および腎臓の細動脈の求心性肥厚をもたらすと考えられます。腎臓の動脈壁が肥厚して内腔が狭くなれば、血液が流れにくくなってしまい、虚血をもたらし、腎障害を起こす可能性があります。

日本人の悪性腫瘍のために腎摘出された92の腎臓の組織を分析した研究でも同様です。(この論文参照)高血圧でレニン-アンジオテンシン阻害剤であるARBまたはACEI治療されていた群、ARBまたはACEIを含まないカルシウムチャネルブロッカーで治療された高血圧患者の群、および対照としての正常血圧群の3つのグループに分けました。

切除された腎臓の輸入細動脈の内径/外径比は、ARB使用高血圧グループで0.3894±0.05、カルシウムブロッカーグループで0.4590±0.02、正常血圧グループで0.5298±0.04であり、2つの高血圧群のデータは、正常血圧群よりも統計的に低く、ARB使用高血圧グループは最低であり、2つの高血圧グループ間でも統計的に有意な差が示されました。つまり、ARB使用高血圧グループが最も血管の内腔が狭いことを示しています。

上の図は3つのグループの細動脈の内径/外径の比率のすべてのデータとeGFRの関係を示しています。3つのグループの細動脈の内径/外径の比率はeGFRと有意に相関していました。つまり、レニン-アンジオテンシン阻害剤を使用している人の方が血管が狭く、eGFRが低くなっていたのです。

高血圧の人で、薬を飲んでいればいつか良くなり、薬をやめられる日が来ると思っている人もいるかもしれません。そうでなくても、薬を飲んでいればそれ以上に悪くはならないと思っているかもしれません。しかし、現実には薬の副作用が体を蝕むだけでなく、原因を改善しないために、その裏では様々な有害なことが進行している可能性があります。

糖尿病も高血圧も初期の状態で対応すれば、つまり原因となる糖質過剰摂取を取り除けばすぐに寛解します。薬も必要ありません。それを不可逆的な変化をもたらすまでずっと薬で「治療」することにより、慢性的な疾患に移行し、薬や医療から離れられなくなるのです。

今の糖質過剰摂取の食事を続けながら、ずっと医療に頼った生活を送るのも、個人の自由で、それを選択することは構いません。しかし、ちゃんと治したい、治癒や寛解の状態になり、薬や医療から離れたいと思っているのであれば、食事を初期設定に戻すことが非常に重要なカギになります。

たくさんの薬を飲んでいることに悩んだり、愚痴をこぼしたりしている患者がいますが、お腹周りにはたくさんの脂肪が付いていることは珍しくありません。何が悪いのかは明らかです。食事が間違っているのです。

糖尿病も高血圧も糖質過剰症候群です。治さない治療を受け続ければ、治らない病気となってしまいます。

 

「Inhibition of the renin-angiotensin system causes concentric hypertrophy of renal arterioles in mice and humans」

「レニン-アンギオテンシン系の阻害は、マウスとヒトの腎細動脈の求心性肥大を引き起こす」(原文はここ

4 thoughts on “治さない治療”
  1. 先生の御説全くの正論だと私も思います。                     しかし現代の医療システムでは少数派、更には異端視されてしまう状況が異常ですね。

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      少数派が私は好きです。ガイドラインなどを守っていたら、さらに良い医療を見つけることさえできません。

  2. お正月に食べ飲み過ぎて胃痛になり、消化器科に行きました。
    内視鏡検査なし、血液検査の結果も出ていないまま、何の説明もなく、PPIを処方されました。
    どこかで聞いた事のある薬だと思い、飲まないで、調べていた所、先生のブログに危険とありました。
    2週間後に血液検査の結果を聞きに行くと、症状がなくなったのに、薬を処方すると言うので断った所、強い口調で「リバウンドする!」
    とすごまれ、薬を飲んでいなかった。と言えませんでした。
    危うく依存症になる所でした。
    先生情報をありがとうございました。

    1. みこさん、コメントありがとうございます。

      症状が改善して良かったですね。
      一時的なPPIは問題ないと思います。
      しかし、症状もなくなったのに、リバウンドする、というセリフはすごいですね。
      これまでもそのように恫喝して、長期に飲ませていたのかもしれませんね。
      そして、数週間続けてもらえばやめられなくなる可能性が高くなりますからね。

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