LDLコレステロールは一般的には多くの心血管疾患の原因であるかのような「悪玉」と思い込まされています。LDLコレステロールは低ければ低いほど良いと思っている人もいるかもしれません。
以前の記事「LDLコレステロールが非常に低いと全原因死亡リスクが高い」でも書いたように、LDLコレステロールが非常に低いことは死亡率を増加させます。
今回の研究では、アメリカで1999〜2014年の国民健康栄養調査(NHANES)の19,034人のデータを使用して、LDLコレステロール値と全原因死亡率との関連を評価しました。(図は原文より、表は原文より改変)
上の図は様々な調整を行ったときの全原因死亡のリスクを示しています。もっとも調整されたCの図を見ても、LDLコレステロール70mg/dL未満が最もリスクが高いことがわかります。
上の図は全原因死亡のリスクのグラフです。LDLコレステロールは130を基準としてみると、それよりも高くなってもほとんどリスクは増加していません。しかし、低くなればなるほど死亡率が高くなります。
高血圧 | |||
なし | <70 | 57 | 1.406(1.015–1.946) |
70〜99 | 165 | 1.038(0.839–1.283) | |
100〜129 | 249 | 1 | |
130〜159 | 187 | 0.826(0.668–1.021) | |
≥160 | 112 | 1.047(0.841–1.304) | |
あり | <70 | 104 | 1.416(1.107–1.813) |
70〜99 | 232 | 1.184(0.980–1.431) | |
100〜129 | 255 | 1 | |
130〜159 | 163 | 1.026(0.829–1.270) | |
≥160 | 92 | 1.114(0.878–1.414) | |
糖尿病 | |||
なし | <70 | 91 | 1.290(1.007–1.652) |
70〜99 | 303 | 1.186(1.013–1.389) | |
100〜129 | 413 | 1 | |
130〜159 | 302 | 0.924(0.786–1.087) | |
≥160 | 177 | 1.058(0.889–1.259) | |
あり | <70 | 70 | 1.554(1.101–2.194) |
70〜99 | 93 | 0.911(0.669–1.241) | |
100〜129 | 90 | 1 | |
130〜159 | 50 | 0.890(0.598–1.323) | |
≥160 | 27 | 1.286(0.845–1.958) | |
心血管疾患 | |||
なし | <70 | 97 | 1.341(0.971–1.852) |
70〜99 | 333 | 1.161(0.956–1.410) | |
100〜129 | 455 | 1 | |
130〜159 | 341 | 1.037(0.862–1.248) | |
≥160 | 189 | 1.092(0.872–1.369) | |
あり | <70 | 73 | 1.412(1.024–1.946) |
70〜99 | 102 | 0.869(0.650–1.161) | |
100〜129 | 102 | 1 | |
130〜159 | 50 | 0.807(0.560–1.162) | |
≥160 | 39 | 1.088(0.747–1.586) | |
がん | |||
なし | <70 | 122 | 1.394(1.116–1.741) |
70〜99 | 312 | 1.148(0.981–1.343) | |
100〜129 | 395 | 1 | |
130〜159 | 290 | 0.940(0.795–1.110) | |
≥160 | 168 | 1.077(0.901–1.286) | |
あり | <70 | 35 | 1.391(0.926–2.090) |
70〜99 | 76 | 1.000(0.726–1.376) | |
100〜129 | 103 | 1 | |
130〜159 | 61 | 0.898(0.630–1.278) | |
≥160 | 34 | 1.243(0.851–1.817) |
上の表は併存している疾患の有無での全原因死亡リスクを示しています。LDLコレステロールが悪さをしていると思い込まれている心血管疾患でさえ、LDLコレステロールが70未満が最もリスクが高くなっています。
心血管疾患の死亡率に関連するLDLコレステロール値との解析を見てみると、やはりLDLコレステロールが70未満では死亡リスクが高くなっています。
心血管疾患の死亡リスクのグラフでは、全原因死亡のグラフよりはU字型を示しています。しかし、これでLDLコレステロールは低いほど良いと言えるのでしょうか?
心血管疾患は糖質過剰症候群です。コレステロールが原因ではありません。以前の記事「LDLコレステロール値は役に立たない」で書いたように、LDLコレステロールが低くても冠動脈疾患を起こす人はいっぱいいます。
しかも、「急性心筋梗塞や急性心不全ではLDLコレステロール値が高い方が死亡率が低い」で書いたように、LDLコレステロールが高い方が急性の心疾患の死亡率が低いのです。
HDLコレステロールが十分に高く、中性脂肪が十分に低ければ、LDLコレステロールなんて気にする必要はないでしょう。LDLは質を考えましょう。LDLコレステロールは低いのに中性脂肪は非常に高い人がいますが、その方がリスクが高いと思います。糖質制限をしてHDLを高く、中性脂肪を低くしましょう。
「Association between low density lipoprotein cholesterol and all-cause mortality: results from the NHANES 1999-2014」
「LDLコレステロールとすべての原因による死亡率との関連:NHANES1999-2014の結果」(原文はここ)