一般的にはいまだにLDLコレステロールが「悪玉」だと考えられています。しかし、LDLと心血管疾患の関連は矛盾だらけです。(「もしもLDLコレステロールが高いことがアテローム性動脈硬化症の原因だという仮説が正しいとするならば…? その1」「その2」「その3」「LDLコレステロールを低下させることの有益性の証拠はない!」など参照)
今回の研究では急性心筋梗塞や急性心不全の患者のLDLコレステロールとの関係を分析しています。(図は原文より)
上の図は上の2つが急性心筋梗塞、下の2つが急性心不全です。初回入院時や過去6か月以内のLDLコレステロール値が100mg/dLをHLP(高脂血症)と定義しました。縦軸は死亡率で、横軸は年数です。
1aの図の青い線がHLPあり、赤い線がHLP無しです。そうするとHLPありの方が死亡率が低く、リスク比は0.61と40%近くもリスクが低いのです。
1bの図の線はLDLコレステロール値で分けています。青い線が100~129、赤い線が70~99、緑の線が70以下、オレンジが130以上です。そうすると最も死亡率が低いのは130以上でした。最も死亡率の高いのは70以下でした。あらら。
1cの図も1aと線の意味は同じです。そうすると急性心不全でもHLPありの方が死亡率が低く、リスク比は0.74と26%リスクが低くなりました。
1dの図も1bと線の意味は同じです。結果も同じで、最も死亡率が低いのは130以上でした。最も死亡率の高いのは70以下でした。あらら、あらら。
上の図は併発症による死亡率の増減を示しています。HLPありはHLP無しと比較して、図のAの急性心筋梗塞後(HR 0.76)または図のBの急性心不全後(HR 0.80)の全原因死亡が低下しました。がん(Cancer)、慢性腎臓病(CKD)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、糖尿病(diabetes)、心不全(HF)、または脳卒中(Stroke)は死亡率を増加させました。(CAD:冠動脈疾患、HTN:高血圧を表します。)図の赤い線はHLPと併存症の両方があるか無いかで比較したものです。そうすると、ほとんどの場合HLPが同時にある方がリスクが低下しているのです。例えば図のAのがんがある(青い線の方)場合リスクは1.78ですが、がんとHLP両方がある(赤い線の方)場合はリスクは1.45です。慢性腎臓病がある場合リスクは1.55で、慢性腎臓病とHLP両方がある場合は1.22なのです。
つまりLDLコレステロールは高い方が様々な併存症がある場合に保護的な働きをするのです。
さらに面白いことに、高血圧の有無によるリスク比です。急性心筋梗塞で高血圧ありの場合、リスク比は0.92となっていて、高血圧がある方がリスクが低いのです。さらに高血圧とHLPありの場合はもっとリスクが下がり、0.68まで低下しています。このことは急性心不全にも当てはまり、高血圧ありで0.95で、高血圧とHLPありの場合0.80に低下しているのです。
程度問題はあるかもしれませんが、急性心筋梗塞や急性心不全では高血圧は保護的に働く可能性があります。当然、このような疾患のある人は動脈硬化があるので、ある程度血圧が高くないと、血流が確保できません。血圧は下げれば良いというものではないでしょう。
LDLコレステロールは本当に下げる意味があるのでしょうか?LDLコレステロール値が70未満の人が急性心筋梗塞や急性心不全を起こした場合、130以上の人よりも死亡率が高いという説明はどうやってつけるのでしょうか?
HDLコレステロールが十分に高く、中性脂肪が十分に低ければ、LDLコレステロールなんて気にする必要はないでしょう。糖質制限をしてHDLを高く、中性脂肪を低くしましょう。
糖質過剰症候群
「Association between hyperlipidemia and mortality after incident acute myocardial infarction or acute decompensated heart failure: a propensity score matched cohort study and a meta-analysis」
「急性心筋梗塞または急性非代償性心不全後の高脂血症と死亡率との関連:コホート研究と一致した傾向スコアとメタアナリシス」(原文はここ)
「HDLコレステロールが十分に高く、中性脂肪が十分に低ければ、LDLコレステロールなんて気にする必要はないでしょう。糖質制限をしてHDLを高く、中性脂肪を低くしましょう。」
シンプルな真理だと思いますが、専門家や
コレステロール降下薬品メーカーは、患者の健康とは別の目的で否定するんでしょうね。
鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。
糖質過剰摂取が中性脂肪を増加させるということさえ知らない人が多いですからね。
企業も薬が売れてなんぼの世界ですから。