LDLコレステロールはいまだに悪玉扱いです。LDLコレステロール値が高いだけで、無条件でスタチンを処方しようとする医師もいっぱいいるでしょう。
今回の研究では、LDLコレステロール値と心血管イベントの発生について分析しています。
対象は年齢の中央値が58歳の冠動脈疾患を示唆する症状があり、冠状動脈コンピューター断層撮影血管造影(CCTA)評価を受けた患者23,143人です。追跡期間中央値4.2年で、その間に、1029人の患者が最初の心血管イベント(心筋梗塞219人、脳梗塞299人、心血管疾患の死亡511人)を経験しました。(図は原文より)
上の図はLDLコレステロール値と冠動脈石灰化(CAC)スコアによって分けたグループの、冠動脈のプラークの有無、プラーク有りでは石灰化プラークと非石灰化プラークの割合を示しています。
全体の10,708人(46.3%)には検出可能なプラークは存在しませんでした。検出可能なプラークは53.7%に認められました。
石灰化プラークのスコアによって分けると、12,341人の患者(53.3%)のCACスコアは0、6,282人(27.1%)ではCACスコアは1から99、4,520人(19.5%)ではCACスコアは100以上でした。CACスコアが0の患者のうち、10,708人(86.8%)には検出可能なプラークがなかったのに対し、非石灰化プラークは1,633人(13.2%)に存在し、閉塞性冠動脈疾患は711人(5.8%)でした。
プラークの有病率は、LDLコレステロール値によって分けると、LDLコレステロール値が77 mg/dL未満では1,363人(56.1%)、77〜112mg/dLでは4,099人(51.5%)、113〜154 mg/dLでは4,428人(52.7%)、155〜189mg/dLでは1935(57.0%)、190mg/dL以上では610人(64.3%)でした。
CACスコア0は190mg/dL以上で46.2%に存在し、77〜112mg/dLで54.9%に存在し、77 mg/dL未満では49.5%に存在しました。また、検出可能なプラークがないのは190mg/dL以上で77.2%、77mg/dL未満では88.6%でした。
LDLコレステロール値が190以上でも77未満でも、CACスコアが0の割合、プラークの存在の割合は違いがないということです。
上の図はCACスコア、LDLコレステロール値による心血管イベントの累積発生率です。LDLコレステロール値がどのようなグループにあっても、CACスコアが0ならば発生率は低く、100以上であれば発生率が高くなっています。
上の図は1000人年あたり心血管イベントの発生率です。先ほどと同様に、CACスコアが0であれば発生率が低く、100以上では発生率が高くなっています。LDLコレステロール値とは関連がありません。有意差は無くても、どちらかというとLDLコレステロール値77未満の方が発生率が高く見えます。
上の図は1000人年あたり心血管イベントの発生率をさらに細かく、プラークなし、非閉塞性プラーク、閉塞性プラークの存在で分けています。当然閉塞性プラークがあれば発生率が高くなるようですが、これはLDLコレステロール値によって差が認められています。しかし、CACスコアが0であれば、プラークなしでも、非閉塞性プラークがあっても発生率は違いがありません。
LDLコレステロールの増加は一般的には心血管疾患の原因であり、プラークを形成すると考えられています。しかし、この研究が示すように、LDLコレステロール値が190であっても、77未満であっても、プラークの存在や閉塞性の冠動脈疾患の存在、CACスコアが0の割合に大きな違いはありません。
LDLコレステロールが原因であれば、当然LDLコレステロール値が高いほど、プラークやCACスコアが高い人の割合が多くなっても良いはずです。しかし、実際にはそうはなっていません。
LDLコレステロール値が高い人たちはLDLコレステロール値を下げるための治療、主にスタチンによる治療によって達成できる非常に低いLDLコレステロールを目標として、薬がずっと処方され続けます。LDLコレステロールが190以上であっても、アテローム性動脈硬化のプラークがない患者が大部分であることを考えると、このような治療によって得られる利益が本当にあるのかは疑わしいものです。
心血管疾患、アテローム性動脈硬化の原因は別にあると考えるべきです。心血管疾患は糖質過剰症候群です。高血糖、インスリン抵抗性など糖質過剰摂取が一番の原因だと思います。
まずは糖質制限をするべきでしょう。
「Association of Coronary Plaque With Low-Density Lipoprotein Cholesterol Levels and Rates of Cardiovascular Disease Events Among Symptomatic Adults」
「冠状動脈プラークとLDLコレステロール値および症状のある成人における心血管疾患イベントの発生率との関連」(原文はここ)
スタチン処方による症候群のほうが
怖そうです。
鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。
スタチンの副作用はほとんどの人は知りませんからね。