前回の記事「コクランまでも低炭水化物食は効果が無いと・・・ その1」では、コクランでさえ、低炭水化物食と超低炭水化物食をごっちゃにして分析をしてしまっていることを書きました。

その記事に関してコメントをいただきました。

・清水先生、こんばんは。
せっかくのメタアナリシスも糖質制限を定義せずに解析すると意味のない結果になってしまうのですね。この結果が一人歩きしないことを祈るばかりです。

・この手の研究ではいつも糖質量が問題になります。
いっそのこと、糖質量ではなく糖代謝か脂肪酸代謝かと言う比較、すなわちケトン体値での比較にすれば良いと思いますがいかがでしょう。糖質量はその時の参考値程度にとどめれば研究者自身も違いに気づくはずです。このような研究はないのでしょうか。

・日常的に糖質制限をしている者と一般人(!?)では、糖質過剰摂取や糖質制限に対する認識が別世界なのではないでしょうか?

誤解のないように言っておきたいのは、低炭水化物食は体重減少が得られない、ということを言っているわけではなく、エネルギー摂取量の45〜65%を炭水化物で摂る「バランスの取れた炭水化物食」と比較して差がない、と言っています。糖質を制限しようが普通の割合で摂ろうが、結局は体重減少はエネルギー(カロリー)制限によって起こるんだよ、だから低炭水化物食、糖質制限は優れた利益のある食事ではないんだよ、という内容になってしまっています。(図は原文より)

低炭水化物食と超低炭水化物食をごっちゃにして分析、と書きましたが、サブグループの分析としては、超低炭水化物食、低炭水化物食、超低炭水化物食→低炭水化物食に増加させる、という3つに分けて分析はしています。当然、超低炭水化物食だけの分析の方が体重減少差は大きくなっています。超低炭水化物食の部分を抜き出してみましょう。

上から順番に見てみましょう。「Effects of low-carbohydrate and low-fat diets: a randomized trial」では、超低炭水化物(40g/d未満)または低脂肪食(脂肪30%未満、飽和脂肪7%未満)で、両方のグループは、試験を通して定期的に食事療法のカウンセリングを受けました。エネルギー制限の指示はありませんでした。しかし、自己申告のエネルギー摂取量はどちらのグループも30%前後も減少していました。

そして、超低炭水化物食は40g未満であったはずなのに、実際にはベースライン242g→3か月97g→6か月93g→12か月127gと、2~3倍もの炭水化物を摂取していました。そんなんでも3か月後には体重が5.7kg減少し、6か月後でも5.6kgの減少と維持され、12か月後でも5.3kg減を維持しました。低脂肪食との差は3.3kg(6か月後)、3.5kg(12か月後)でした。

2番目の研究、「A randomized trial comparing a very low carbohydrate diet and a calorie-restricted low fat diet on body weight and cardiovascular risk factors in healthy women」では、超低炭水化物グループは炭水化物20g/日を最大量とする自由な食事に従うように指示され、2週間のダイエット後、尿中ケトン体の自己検査でケトーシスが引き続き示された場合にのみ、炭水化物の摂取量を40〜60g/dに増やすことが許可されました。低脂肪グループは、55%の炭水化物、15%のタンパク質、および30%の脂肪の、カロリー制限された適度に低脂肪の食事を指示されました。

超低炭水化物食グループはエネルギー制限を指示されてもいませんでしたが、両方のグループでエネルギー摂取量は約450kcal減少しました。低炭水化物食グループの炭水化物量はベースラインで188.92g→3か月後で41.13g→6か月後で96.98gと、6か月後ではやはり指示された量とはかけ離れていました。

それでも、体重は超低炭水化物のグループは、3か月後に平均7.6kg減少、6か月後に8.5kg減少でした。低脂肪食を摂取したグループは、3か月後4.2kg減と6か月3.9kg減で、その差は4.6kgでした。

ケトン体のβ-ヒドロキシ酪酸は超低炭水化物で100μmoL/L(ベースライン)→413(3か月後)→146(6か月後)となっていました。ちなみに低脂肪でも6か月後のケトン体は109でした。

3番目の研究「The Role of Energy Expenditure in the Differential Weight Loss in Obese Women on Low-Fat and Low-Carbohydrate Diets」では、先ほどと同様に、超低炭水化物グループは炭水化物20g/日を最大量とする自由な食事に従うように指示され、2週間のダイエット後、尿中ケトン体の自己検査でケトーシスが引き続き示された場合にのみ、炭水化物の摂取量を40〜60g/dに増やすことが許可されました。低脂肪グループは、55%の炭水化物、15%のタンパク質、および30%の脂肪の、カロリー制限された適度に低脂肪の食事を指示されました。

2か月の時点で、両方の食事グループは、ベースラインと比較して1日あたり約850kcalエネルギー摂取量が減少していました。超低炭水化物食グループの炭水化物摂取量はベースラインで260g→2か月後で48g→4か月後で92gとまたまた、目標値が達成できていませんでした。

それでも、体重は超低炭水化物のグループは、2か月後に平均6.69kg減少、4か月後に9.79kg減少でした。低脂肪食を摂取したグループは、2か月後4.79kg減と4か月6.14kg減で、その差は3.65kgでした。

4番目の研究「A low-carbohydrate diet is more effective in reducing body weight than healthy eating in both diabetic and non-diabetic subjects」では、超低炭水化物(40g/d未満)または低脂肪食で1日500kcalのエネルギー制限を指示されました。

実際のエネルギー摂取量はベースラインで2130kcal、超低炭水化物食3か月後では1313kcal、 低脂肪食3か月後では1593kcalでした。炭水化物量はベースラインで223.2g、超低炭水化物食3か月後では56.8g、低脂肪食3か月後では167.3gでした。

体重は非糖尿病で超低炭水化物食3か月後で5.8kg減少、低脂肪食3か月後で2.8g減少とその差は3.0kgでした。糖尿病では超低炭水化物食3か月後で8.0減少、低脂肪食3か月後で0.8kg減少とその差は7.2kgでした。

5番目の研究「Effect of weight loss plans on body composition and diet duration」は、原文が手に入りませんでしたので省略です。

6番目の研究「Long-term effects of a low carbohydrate, low fat or high unsaturated fat diet compared to a no-intervention control」では、エネルギー摂取量(1553kcal)を同じにした3つのグループ、超低炭水化物食グループ(炭水化物4%、脂質60%)、超低脂肪食グループ(脂質10%、炭水化物70%)、高不飽和脂肪酸グループ(脂質30%、炭水化物50%) です。

実際のエネルギー摂取量は15か月間でどのグループも1670kcal前後でした。炭水化物の摂取割合は、超低炭水化物食3か月後で12.4%でしたが、その後は32.9~39.3%でした。当然体重は、超低炭水化物食3か月後が最も減少が大きく、8.0kg減でしたが、15か月後では2.9kg減と大幅に戻ってしまっていました。低脂肪食では3か月後6.7kg減で、15か月後で2.1kg減でした。当然低脂肪食でも目標の低脂肪は守られていませんでした。

高不飽和脂肪酸グループでは3か月後に6.3kg減で、15か月後で3.9kg減でした。

7番目の研究「Metabolic effects of weight loss on a very-low-carbohydrate diet compared with an isocaloric high-carbohydrate diet in abdominally obese subjects」では、30%のエネルギー制限をして、エネルギー摂取量(女性1433kcal、男性1672kcal)と2つのグループで同じにしました。超低炭水化物食では炭水化物を4%、タンパク質35%、総脂質61%(20%が飽和脂肪)で、低脂肪食では炭水化物46%、タンパク質24%、総脂質30%(飽和脂肪8%未満)としました。超低炭水化物食では研究の最初の8週間、炭水化物の摂取量は20g /日未満に制限されていました。その後、食事のコンプライアンスを促進するために、残りの16週間は炭水化物の摂取量を40g/日未満に増やすオプションが与えられました。

24週間後、両方のグループで体重が大幅に減少し、超低炭水化物食グループで11.9kg減、低脂肪食グループで10.1kg減と有意差はありませんでした。

この研究では炭水化物摂取量は記されていませんが、ベースラインから、超低炭水化物食グループで141.4g/日、低脂肪食で22.2g/日減少したとされています。

この研究ではケトン体が測定されていますが、超低炭水化物食の8週間後に300μmoL/L近くになっていますが、24週間後には130μmoL/L程度まで低下しています。恐らく段々と糖質摂取量が増加してしまったことが推測されます。

8番目の研究「Visceral adiposity and metabolic syndrome after very high-fat and low-fat isocaloric diets: a randomized controlled trial」では、エネルギー摂取量を2090kcalとして、超低炭水化物食グループは炭水化物を10%(50 g)、タンパク質17%(90 g)、脂質73%(170 g)、低脂肪食グループは炭水化物53%(275g)、タンパク質17%(90 g)、脂質30%(70 g)でした。

12週間の平均炭水化物摂取量は超低炭水化物食56.1g、低脂肪食で281gでした。体重減少量は超低炭水化物食で11.9kg、低脂肪食で12.2kgと差はありませんでした。

9番目の研究「Carbohydrate restriction has a more favorable impact on the metabolic syndrome than a low fat diet」では、超低炭水化物食の主な目標は、炭水化物を低レベルのケトーシスを誘発するレベルに制限することでした。尿検査で、ケトーシスを毎日監視しました。 脂質の種類やコレステロールに制限はありませんでした。低脂肪食では飽和脂肪酸を10%未満、コレステロールを300mg未満に制限されました。

12週間後では、超低炭水化物食で1,504kcal、炭水化物12%(45g)、脂質59%(100g)、タンパク質28%(105g)、低脂肪食では1,478kcal、炭水化物56%(208g)、脂質24%(40g)、タンパク質20%(72g)でした。体重減少量は超低炭水化物食で10.1kg、低脂肪食で5.2kgと4.9kgの差がありました。

ケトン体値は超低炭水化物食で77(μmol/L)(ベースライン)→212(12週間後)、低脂肪食 103(ベースライン)→94(12週間後)でした。

不思議なことに、8番目と9番目について、上の図では体重減少量の差ではなく、実際の平均体重の差を比べてしまっています。意図的でしょうか?

7番目と8番目では食事による差が出ませんでしたが、それ以外では3~5kg程度、超低炭水化物食の方が体重減少が多くなりました。

これらの研究を見てわかることは、多くの研究で、ちゃんとデザインしたようにうまくできていません。炭水化物量をしっかりと制限できていない研究が多いのです。恐らくその原因は、我々は自ら糖質制限をしようと思って行っていますが、研究の参加者は糖質制限をやらされています。3か月程度なら続けられたとしても、その後どんどん糖質制限が緩んで、糖質量が増加してしまっていると考えられます。

こうしてみると、ちゃんとできていないにも関わらず、1日糖質量50g以下のような糖質制限食では体重減少が大きく認められ、低脂肪食よりも大きな体重減少が起きていると考えられます。(ただし、多くの研究はエネルギー制限にもなってしまっています。恐らく、糖質制限をすると制限しなくてもそれまでよりもエネルギー摂取量が減る人は多いと思いますが。)

9番目の研究のように、12週間後でもケトン体がある程度高い状態で行えた研究では、その差が5kg近くにもなっているのです。

いただいたコメントにあるように、いくつかはケトン体を測定しています。しかし、多くの研究ではケトン体までは測定しないでしょう。やはりお金がかかるからではないでしょうか?

糖質制限の研究で、糖質制限が利益があるという結果が出ても、患者さんや一般の人以外は得をしません。本当はこれで良いのですが、医療もビジネスです。医療業界、製薬会社などが利益にならない研究に対して誰が資金を出すでしょうか?

糖質制限は自ら自発的に行えば、ずっと一生続けられる食事ですし、体重も正常に向かいます。ケトン体がしっかりと産生されるレベルの糖質制限をすることが重要だと思います。中途半端では結果も中途半端でしょう。

One thought on “コクランまでも低炭水化物食は効果が無いと・・・ その2”
  1. 糖質制限は今後も緩やかに普及していくとは思うのですが(正しいやり方で続けている人は健康状態が良くて止めないので)、爆発的に普及するためにはやはり、血糖値測定器が体温計や体重計並みに一般家庭に普及する必要があると思います。糖質制限を普及させたくない勢力がどんなに頑張っても、血糖値スパイクが健康に悪いことまでは否定できないでしょうから。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。