自己申告による食事アンケートのエネルギー摂取量は肥満の人ほど過少申告する

どのような栄養素をどれくらい食べると病気になるとか、健康になるとか、など食事に関する研究はいっぱい行われています。

しかし、そのような研究の食事内容の評価で、多くは食事アンケートが用いられていることが問題です。エネルギー摂取量を推定する食事アンケートには色々なものがありますが、どれも正確だとは思えません。(図は原文より)

上の図はaが短い食事アンケート(short dietary questionnaire:SDQ)と実際の測定された総エネルギー消費量(TEE)の関係です。SDQはA41ページに収まる短く、回答を完了するのに10分もかからないことを目的として開発されたツールのようです。

bは食事摂取頻度調査票(Food Frequency Questionnaire:FFQ)とTEEの関係です。ちなみに1kJ = 0.24kcalです。飲料を含む数十種類のリストされた食品/食品グループ/料理で構成され、摂取の頻度は、「まったくない」、「年に数回」、「月に1〜3回」、「週に1回」、「週に2〜3回」、「週に4〜6回」、「1日1回」、「1日2〜3回」、「1日4回以上」で答えるようになっています。

○は正常体重の女性、●は過体重および肥満の女性です。縦軸は食事アンケートで推定されたエネルギー摂取量とTEEとの差を表しています。マイナスが大きいほど過少申告であることを示しています。

そうすると平均してー4,000kJ(960kcal)前後も過少申告していることがわかります。推定エネルギー摂取量とTEEの差が0以上になっている人はわずかです。さらにエネルギー摂取量が多い人ほど過少申告の度合いも大きくなっています。さらにさらに、過体重および肥満の人ほど過少申告の度合いが高くなっています。

全体ではTEEよりもSDQでは30%、FFQでは34%過少申告でした。正常体重と過体重および肥満の人を分けると、正常体重ではTEEよりもSDQでは22%、FFQでは29%過少申告でしたが、過体重および肥満ではTEEよりもSDQでは43%、FFQでは46%過少申告でした。

悲しいかな人間の性なのか、自分を良く見せたいという無意識の願望の表れなのかもしれません。または、このような研究に参加することで、エネルギー摂取量を減らさなければならないという、見えない社会的圧力を受けて少なめに申告してしまうのかもしれません。または、たくさん食事を摂取する人ほど、食品の種類や分量も増える分、それを覚えていないために正確に申告できないのかもしれません。

以前の記事自己申告による食事アンケートの不正確性」でも書いたように、このような研究は非常に問題を孕んでおり、正確性に乏しいのです。このような研究のデータをもとに、様々な栄養の基準、ガイドラインなどが決められたと考えるとゾッとします。

特に糖質制限に関わる多くの研究では、ほとんどの参加者が過体重または肥満です。その参加者が自分の嗜好に反した食事である糖質制限食を、本当にデザイン通りの方法で摂取しているか、そして本当の摂取した内容を正確に申告しているか、は非常に疑問です。

そして、このような研究が長期間続けられ、そのデータをもとに、糖質制限は長期間では効果が無い、という結論が出され続けています。問題点がわかっているのに、問題だらけの研究をエビデンスと称して採用し、あらかじめ決められているであろう方向へ誤誘導するようにしているのです。

本来なら、全ての食事を提供してその食事の効果があるか無いかを判定すべきですがそれは不可能です。また、以前も書いたように、糖質制限を評価するなら、ケトン体値を何度か測定して、ちゃんと糖質制限が行われていることを確かめるべきです。自己申告だけではなく何か客観的に測定できるデータを調べるべきです。しかし、それらを行うにはお金がかかり過ぎるでしょう。

糖質制限の効果は自分でやっていれば十分にわかります。それが全てです。糖質制限を否定する医師や栄養士のエビデンスは、この記事などで書いたような非常に不正確なデータをもとに書かれた論文ばかりですので、気にする必要はありません。

 

「Dietary intake assessment in women with different weight and pregnancy status using a short questionnaire」

「短い質問票を使用した、体重と妊娠状態が異なる女性の食事摂取量の評価」(原文はここ

2 thoughts on “自己申告による食事アンケートのエネルギー摂取量は肥満の人ほど過少申告する

  1. 「たくさん食べるから太る」「食べる量を減らせば太らない」という思い込みもあるのではないでしょうか。
    それに加えて、ヒトは見栄を張りたがる生き物ですから、「どれくらいの量を食べたか」については、どうしても過少申告してしまいがちになるのではないでしょうか。

    清水先生の言う「自分を良く見せたいという無意識の願望の表れ」は間違いなく絡んできます。

    1. クリードンさん、コメントありがとうございます。

      「たくさん食べてもいないのに太っているのは私のせいではない」と言いたい人もいるでしょうね。

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