アメリカ心臓協会はさらに糖質制限を推奨する方向へ

以前の記事「アメリカ心臓病学会は中性脂肪を減らすためのライフスタイル介入として糖質制限を提唱 その1」で書いたように、アメリカの心臓病学会はすでに糖質制限を認めています。

それに続いてアメリカ心臓協会は2型糖尿病の人に対する声明を今年出しました。

今回の声明では、2型糖尿病の心血管疾患の危険因子の管理について書かれていますが、そこにも糖質制限が登場しています。アメリカ心臓協会はさらに糖質制限を推奨する方向へ向かっているように見えます。

Nutrition
For adults with T2D, a tailored nutrition plan is a key component for cardiovascular risk reduction, and a heart-healthy dietary pattern is recommended to improve glycemic control, achieve weight loss when needed, and improve other atherosclerotic CVD (ASCVD) risk factors. The ADA recommendations support various healthy dietary approaches to achieve glycemic control and weight management, although the effects of dietary interventions on CVD outcomes in individuals with T2D has not been widely studied. The Mediterranean, Paleolithic, low-carbohydrate, high-protein, vegetarian, and nut-enriched diets have demonstrated benefits on glycemic control and weight loss in T2D, with the Mediterranean diet producing the greatest improvements in glycemic control and a 29% CVD reduction over 4.8 years. Very low–energy diets can lower A1c, BMI, cholesterol, and BP. Very low–carbohydrate versus moderate carbohydrate diets yield a greater decrease in A1c, more weight loss and use of fewer diabetes medications in individuals with diabetes. For those who are unable to adhere to a calorie-restricted diet, a low-carbohydrate diet reduces A1c and triglycerides. Very low–carbohydrate diets were effective in reducing A1c over shorter time periods (<6 months) with less differences in interventions ≥12 months. For individuals using very low–carbohydrate dietary approaches, it is important for health care professionals to maintain medical oversight and adjust diabetes medications to prevent hypoglycemia. Overall, weight loss of 5% to 10% is associated with A1c reductions of 0.6% to 1.0% and reduced diabetes medications. Thus, the ADA recommends an individualized nutrition plan focusing on total calorie and metabolic goals, using a medical nutrition program as needed to achieve goals.

栄養

2型糖尿病の成人の場合、心血管リスクを軽減するための重要な要素は調整された栄養計画であり、血糖コントロールを改善し、必要に応じて体重を減らし、その他のアテローム性動脈硬化症の心血管疾患リスク要因を改善するために、心臓の健康的な食事パターンが推奨されます。 ADAの推奨事項は、血糖コントロールと体重管理を達成するためのさまざまな健康的な食事アプローチをサポートしていますが、2型糖尿病患者の心血管疾患の結果に対する食事介入の影響は広く研究されていません。地中海式、旧石器時代食(パレオダイエット)、低炭水化物、高タンパク質、ベジタリアン、ナッツを豊富に含む食事は、2型糖尿病の血糖コントロールと体重減少に効果があり、地中海式ダイエットは血糖コントロールを大幅に改善し、4.8年で心血管疾患を29%減らします。 非常に低エネルギーの食事は、HbA1c、BMI、コレステロール、および血圧を低下させる可能性があります。中程度の炭水化物食に対して超低炭水化物食とでは、糖尿病患者のHbA1cが大幅に減少し、体重が減少し、糖尿病治療薬の使用量が少なくなります。カロリー制限食を遵守できない人のために、低炭水化物食はHbA1cと中性脂肪を減らします。超低炭水化物食は、短い期間(<6か月)でHbA1cを減らすのに効果的でしたが、12か月以上の介入では違いが少なくなります。超低炭水化物の食事療法を行っている人にとって、医療専門家は、医学的監視を維持し、低血糖を防ぐために糖尿病治療薬を調整することが重要です。全体として、5%から10%の体重減少は、0.6%から1.0%のHbA1cの減少と、糖尿病治療薬の減少に関連しています。したがって、ADAは、目標を達成するために必要に応じて医療栄養プログラムを使用して、総カロリーと代謝の目標に焦点を当てた個別の栄養計画を推奨しています。

相変わらず、地中海食推しが強いですが、糖質制限についての記述が最も多くなっています。ただこれまでと同様、短期間は効果があるけど、長期では効果が少なくなるという内容になってしまっています。根拠となるエビデンスが変わらなければこのような内容が続いてしまいます。どうして長期では効果が少なくなるかというと、まずはちゃんとデザインされたとおりに食事が守られていない場合が多いこと。さらに、多くの研究で糖質制限食を行っている人では、自分がやりたくて自発的にやっているわけではなく、仕方がなくやらされているのだと思います。そうすれば、時間とともに糖質制限が緩んできても無理はありません。そうなれば自然と糖質制限の効果は少なくなるでしょう。

しかし、いずれにしても様々な声明、ガイドライン等に糖質制限について推奨する内容が盛り込まれるのが当たり前になってきました。

長期の糖質制限でケトン体を測定して、維持している研究もあるので、そのような研究が根拠となればもっと内容が変わって、一番推奨される食事になると思われます。しかし、エビデンスを選ぶ側がなるべくそうしたくないのかもしれません。仕事が無くなってしまいますから。

それにしても、新型コロナウイルスに関してもそうですが、日本の専門家と言われている人たちは、非常に動きが遅く、誰のための利益を守っているのかわかりませんね。

 

「Comprehensive Management of Cardiovascular Risk Factors for Adults With Type 2 Diabetes: A Scientific Statement From the American Heart Association」

「2型糖尿病の成人の心血管危険因子の包括的管理:アメリカ心臓協会からの科学的声明」(原文はここ

2 thoughts on “アメリカ心臓協会はさらに糖質制限を推奨する方向へ

  1. 健康的な生活は誰にとっても人生の基盤。
    糖質制限スタンダード化の勢いは誰にも止められませんね。。

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      人体のメカニズムを考えれば、糖質制限が良いのは当然だと思います。
      しかし、その勢いを止めようと必死な人、業界は多いでしょう。

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