LDLコレステロールと糖尿病の関連

LDLコレステロールと糖尿病の関連は実に不思議です。糖質制限をすると少なくない割合の人がLDLコレステロールが上昇します。爆上がりする人も珍しくありません。私の上昇しています。しかし、人体の中の代謝は一つだけで独立しているものはないでしょうから、様々な代謝が複雑に絡み合っているのも当然でしょう。

現在の医療では、専門が別れ過ぎていて、ある一面からしか物事をとらえていない傾向が強まっている気がします。だから、血糖値とLDLコレステロール値が繋がっているという発想はないかもしれません。

スタチンの使用と糖尿病の発症リスク増加は有名です。(「スタチンの使用は、はっきりとした糖尿病発症のリスク増加がある!」「スタチンは糖尿病を進行させる」「スタチンはインスリン抵抗性を増加させる」など参照)

スタチンを使っていなくても、以前の記事「低LDLコレステロールは糖尿病のリスクを高める」で書いたように、低LDLコレステロールでは糖尿病のリスクが高くなります。通常のLDLグループと比較して低LDLグループでは2倍以上も2型糖尿病になる可能性が高くなりました。この関係は男性の方が強く2.43倍、女性では1.74倍でした。

家族性高コレステロール血症(FH)では糖尿病発症率が一般の人と比較して低いことが知られています。FHの人が糖尿病を発症する可能性はFHの家系であってもFHになっていない人の0.49倍、つまり半分程度しかありません。(ここ参照)

また一般の人と比較すると、約40%糖尿病発症率が低いのです。(ここ参照)

さらに、甲状腺機能低下症における高コレステロール血症は、主にLDL受容体活性の低下によるものであると考えられています。糖質制限をすると甲状腺ホルモンが低下することが多く、低T3が甲状腺機能低下症と勘違いされる場合もあります。(「糖質制限のときの甲状腺ホルモン低下(低T3症候群)」参照)糖質の摂取量が増加すると、甲状腺ホルモンの要求量を増加させ、T3の増加につながっていると考えられます。つまり、糖質過剰摂取では甲状腺ホルモンが増加し、LDL受容体が活性化し、LDLコレステロール値が低下しやすくなることがあると思われるのです。

また、インスリンはLDL受容体活性を増加させると考えられています。インスリン受容体とLDL受容体は細胞内で複合体を形成しているという報告もあります。(ここ参照)つまり、糖質摂取、脂質摂取、インスリン抵抗性などが血糖値やコレステロール値にお互い影響しても不思議ではありません。インスリン抵抗性が高い場合にはLDL受容体は減少し、血中のLDLコレステロールが高くなると思われます。逆にインスリンの感受性がある場合には糖質過剰摂取でインスリン分泌が増加すれば、LDLコレステロールが低下するのかもしれません。

さらに以前の記事「リポタンパク質のLDLにはインスリン様作用があるかもしれない」で書いたように、インスリンが最もGLUT1の細胞質から細胞膜への移動を促進しますが、LDLでもコントロールと比較するとかなりGLUT1の移動が起きてブドウ糖の取込みを増加させるようです。

糖質と脂質の代謝は非常に重要な代謝であり、全く独立した代謝であるはずがありません。

非常に複雑な人体の代謝の中で、一部の数値だけを改善するような薬はいくつもの代謝に影響を与える可能性があります。現在のLDLコレステロール値の基準値は糖質過剰摂取をしている人のデータに基づいて作られたものにすぎません。人類が進化してきた過程で、糖質過剰摂取をしていたことがないことを考えると、現在のLDLコレステロール値の基準値は決して人間の健康に対して利益を保証しているものではありません。

私は糖質制限をしてLDLコレステロール値が上昇するのは自然な代謝だと思っています。あまりにもLDLコレステロールが悪玉だと決めつけられ、洗脳が深く行われたため、医師も一般の人もLDLコレステロールが増加することを非常に気にします。しかし、糖質過剰摂取をしている人でさえ、LDLコレステロール値と心血管疾患の関係はほとんどありません。(「LDLコレステロール値は役に立たない」「LDLコレステロール値は心血管イベントとは無関係」など参照)

糖質制限を始めた人は、「糖質が必須のものであり、重要なエネルギー源である」ということがウソであったことに気付いて、糖質摂取を大きく制限できていると思います。しかし、相変わらず「LDLコレステロールは悪玉」という洗脳からは抜け出ることができない人がいると思います。

血糖値とLDLコレステロール値は関連していると思います。しかし、全ての人でそれが目に見えてわかるわけではないので、そこが不思議です。糖質制限でLDLコレステロール値が上昇しやすい人の特徴は、以前の記事「糖質制限でLDLコレステロールが大きく上昇する人の特徴」で書きました。痩せ型、もともと中性脂肪が低めでHDLが高めである人の方がLDLコレステロール値が上昇しやすいという結果でしたが、様々なホルモンの感受性の違いもあるでしょう。

LDLコレステロールがどこまで高値であるのが許容されるのかはわかりません。しかし、FHの人でスタチン内服もなく、何も心血管イベントを起こさずに日々過ごしている方はいっぱいいるでしょう。LDLコレステロールが低いほど良いというのは幻想でしょう。

 

「A comprehensive account of insulin and LDL receptor activity over the years: A highlight on their signaling and functional role」

「長年にわたるインスリンとLDL受容体活性の包括的な説明:シグナル伝達および機能的役割のハイライト」(原文はここ

6 thoughts on “LDLコレステロールと糖尿病の関連

  1. 善玉コレステロールと悪玉コレステロールという表現

    勧善懲悪の世界は単純で分かりやすいのですが、クリアカットの割り切り方は短絡的で、どこか胡散臭さがつきまといます。

    それは腸内細菌にも言えるのではないでしょうか。悪玉菌に日和見菌、彼らには彼らの役割があるのだから、それなりに必要だと言う藤田紘一郎「寄生虫」博士。この先生、基本的には糖質制限派の方なのですが、ステーキの食いすぎは悪玉菌がはびこるから、週2回にしとけという。どうなんでしょう?そこはよくわかりません(笑)

    1. やまもと凛太郎さん、コメントありがとうございます。

      腸内細菌についてはまだまだ分からないことばかりです。
      食事が変われば腸内細菌も変化します。
      私は肉で悪玉菌が増えるとは思っていません。

  2. スタチンの毒性を情報提供してくださる清水先生のような医師が多数派なら、
    現在コロナワクチンの有効性を盛んに喧伝されている医療者の御意見にも素直に
    従うことができるのですが、明らかにそうではないので、
    色々こじれているのではないでしょうか。

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      スタチンを悪く言う医師が多数派になるとは思えません。
      LDLの洗脳は医師にも深く行き渡っていますし、医療もビジネスですから。

  3. FHです。
    若い頃は、きっと私は短命なんだろう…と思っていましたが、FHのお陰で今の主治医の先生に会えたし、シミズ先生のブログに辿り着けました。
    今は、絶対長生きしてやろうって思っています 笑
    FHに産んでくれた母に感謝しています(母がFH)

    1. ミホさん、コメントありがとうございます。

      FH=短命のリスクがあると脅されていますからね。糖質制限をすれば普通の寿命だと思います。
      良い主治医に出会えて良かったですね。

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