日本人男性ではお米が心血管死亡リスクを下げる?

日本人は欧米人よりも心血管リスクが低いといわれていますが、その理由は主食の米にあるという、またまたくだらないけど興味深い(?)研究が出てきました。岐阜大学の予防医学からの研究です。これを見ると、どうして病気の予防ができないか、の理由の一つがわかるでしょう。

今回の研究は岐阜県高山市で行われている「高山スタディ」のデータを用いて、主食としての米の摂取量と心血管死亡リスクとの関連を分析したものです。高山スタディに登録時35歳以上の心血管疾患の既往のなかった男性13,355名、女性15,724名を対象としました。ベースライン時の米の摂取量で4つのグループに分けました。下の表は男女別の4つのグループの特徴です。(表は原文より改変)

米の摂取量
男性 女性
Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4
年齢(歳) 54.3 (12.5) 55.9 (13.2) 51.7 (10.7) 54.1 (11.6) 53.3 (11.9) 54.7 (13.0) 58.7 (14.2) 53.9 (12.2)
BMI (kg/m 2 ) 22.5 (2.8) 22.4 (3.0) 22.6 (2.6) 22.4 (2.7) 22.0 (2.7) 22.0 (2.9) 21.9 (3.1) 22.0 (2.9)
糖尿病の病歴 (%) 7.9% 6.8% 4.9% 4.3% 2.9% 2.9% 3.3% 1.6%
高血圧の病歴(%) 20.7% 19.7% 18.4% 16.9% 15.7% 18.1% 20.0% 15.6%
身体活動スコア(METs・h/週) 24.8 (38.4) 26.6 (40.0) 30.1 (42.3) 29.8 (44.5) 19.9 (28.9) 20.1 (29.7) 17.2 (28.4) 20.2 (30.6)
喫煙状況 (%)
一度もない 24.7% 27.2% 23.3% 24.8% 79.6% 83.3% 84.4% 82.8%
以前 26.4% 26.1% 23.6% 23.9% 4.9% 4.5% 4.4% 3.8%
現在(30年未満) 24.4% 22.6% 28.4% 24.7% 14.0% 10.7% 8.9% 11.3%
現在(30年以上) 24.3% 25.1% 23.7% 27.0% 1.6% 1.5% 2.3% 2.1%
アルコール摂取量(g/日) 54.5 (46.9) 42.5 (44.9) 43.2 (35.4) 27.7 (32.4) 12.2 (23.2) 6.7 (13.1) 5.6 (14.4) 6.4 (13.6)
総エネルギー摂取量(kcal/日) 2668 (934) 2557 (1157) 2775 (463) 2486 (768) 2488 (822) 1859 (431) 1849 (984) 2334 (561)
炭水化物摂取量(g/日) 328 (118) 345 (149) 397 (66) 388 (103) 334 (114) 266 (61) 278 (137) 374 (77)
食物繊維摂取量 (g/日) 18.4 (10.3) 16.7 (10.0) 16.0 (6.4) 13.6 (6.9) 21.8 (10.8) 15.2 (5.6) 14.3 (9.5) 15.4 (6.6)
塩分摂取量(g/日) 16.4 (6.9) 14.6 (7.4) 14.1 (4.4) 11.6 (5.4) 16.9 (6.5) 12.1 (3.7) 11.2 (6.6) 12.1 (4.6)
コーヒーの消費量
なし 18.6% 23.5% 16.1% 21.1% 18.0% 23.3% 36.9% 27.4%
1日1杯未満 36.1% 37.5% 38.9% 42.7% 36.4% 40.7% 37.3% 42.2%
1日1杯以上 45.3% 39.0% 45.0% 36.2% 45.6% 36.0% 25.8% 30.5%
平均 (標準偏差) またはパーセンテージ

男性は米の摂取量が少ない群で、糖尿病や高血圧の既往者が多く、身体活動量が少なく、飲酒量や食物繊維および塩分の摂取量が多い傾向があり、女性の米の摂取量が少ない群は、教育歴が長く、アルコールやコーヒーおよび食物繊維や塩分の摂取量が多い傾向がありました。いつものように、米の摂取量でグループに分けたときに、最も少ない群と最も多い群とでは全く特徴の異なるグループになってしまっています。当然今回も食事関連のデータは食事アンケートという非常に質の低いデータによるものです。

下の表は米、パン、麺の摂取量で4つに分けたときの日本人男性の心血管疾患死亡率のハザード比です。
摂取量の中央値 (g/日) 死亡者数 多変量調整
HR 95%信頼区間
Q1 153.4 224 1.00
Q2 210.5 257 0.98 (0.81–1.18)
Q3 286.1 127 0.80 (0.63–1.01)
Q4 321.5 171 0.78 (0.62–0.99)
パン
Q1 2.9 175 1.00
Q2 14.3 236 1.14 (0.93–1.40)
Q3 28.7 188 1.09 (0.87–1.35)
Q4 76.7 180 0.92 (0.74–1.15)
Q1 24.8 181 1.00
Q2 43.4 209 1.07 (0.87–1.30)
Q3 61.3 187 1.02 (0.83–1.26)
Q4 109.3 202 1.11 (0.90–1.37)

パンや麺ではなく、米の摂取量の最大の群のみ心血管疾患死亡リスクの低下が認められました。もちろんBMI、喫煙や飲酒や身体活動、糖尿病や高血圧の既往、婚姻状況、教育歴、コーヒーや塩分摂取量で調整をしています。一方女性ではそれぞれの摂取量とリスクの関連は認めませんでした。

さて、考察の中で、この論文の著者は「米には食物繊維やビタミンも含まれています。食物繊維とビタミンB6は、日本人の冠動脈心疾患と心不全との負の関連があると報告されています。」と述べています。しかし、上の表を見てもわかるように、最も米の摂取量が低い群が最も食物繊維を摂取しています。自己矛盾に気づいていません。

さらにビタミンB6に関しては、白米150gに含まれるビタミンB6はわずか0.03mgです。一方豚肉(ロース)100gにはビタミンB6が0.32mgも含まれています。ご飯1杯分のビタミンB6は豚肉ではわずか10g、クルミだとわずか6gと同じなのです。ちょっと調べればわかるのに、こんな恥ずかしい考察をしてしまっています。栄養がわかっていない人が予防医学だなんて…

そしてグループ間で、糖尿病歴や高血圧歴、アルコール摂取量や身体活動などについて大きく心血管疾患に影響すると思われる違いがあり過ぎます。もちろん調整という辻褄合わせは行っていますが、これはさじ加減でしょう。

さらに、最も米の摂取量が多いグループでも摂取量の中央値は1日に320g程度と茶碗に2杯分でしかありません。おそらく過少申告でしょう。

いずれにしても、質の低いデータを使った質の低い研究であり、気にする必要はないかと思います。しかし、日本はお米文化が衰退してきているので、今後もお米のキャンペーンが何度も行われるでしょう。それに惑わされず、糖質制限を続けましょう。

「Rice-Based Diet and Cardiovascular Disease Mortality in Japan: From the Takayama Study」

「日本における米中心の食事と心血管疾患による死亡率:高山スタディから」(原文はここ

7 thoughts on “日本人男性ではお米が心血管死亡リスクを下げる?

  1. こういうデータを見せていただく
    と毎度、大学の先生はお暇なのか?
    それとも研究費を稼ぐ為に
    なりふり構わず「実験データ」を
    公表されていらっしゃるのか?
    そしてご自分はどういう食生活、
    健康状態なのか?
    色々考えてしまいます。

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      恐らくこのような研究は論文を書きやすいからなのではないでしょうか?

  2. 清水先生、こんばんは。
    米は体にいいという思い込みで結論ありきの報告という印象です。
    LDLコレステロールもそうですが、根強いものがあるのでしょうね。

    1. じょんさん、コメントありがとうございます。

      確かに結論ありきですね。
      このような人たちが日本の予防医学を担い、医学部の学生に教えているのです。

  3. この研究の結果が本当だとしても米を食べない人は、代わりに米よりも体に悪いものをたくさん食べているのでしょう。そう言う人との相対的なリスクであって食べなければもっとリスクは減るのではないでしょうか。
    白米摂取が短命につながることは近藤正二博士の著書「日本の長寿村・短命村」で50年も前に明らかにされています。すでに絶版ですが名著です。

    1. 西村 典彦さん、コメントありがとうございます。

      日本でお米を悪く言うと、出世できないし、研究費ももらえないのかもしれませんね。
      この研究では糖質過剰摂取を前提としたものですから、その前提が間違っているとは考えていないのでしょうね。

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