カルシウムサプリは骨には行かず血管を石灰化させるかもしれない

骨と言えばカルシウム。骨粗しょう症の予防、改善にカルシウムをたっぷり摂りましょう。これを本気にしてカルシウムサプリを摂っている人、特に閉経後の女性はいるでしょう。しかし、カルシウムをたくさん摂っても骨密度に与える影響はわずか、または全くないという研究が多くあります。

カルシウム不足は良くないと思いますが、過剰摂取も有害でしょう。さらに対になるマグネシウムとのバランスを欠いた、カルシウム摂取の推奨は問題です。カルシウムとマグネシウムの比率が高くなると、つまりカルシウムが多すぎると様々な疾患のリスクを上げると考えられています。

人間の体は一定に保つようにホメオスタシスというものがありますが、これは人類の進化の過程で摂取されてきた範囲の量によって起こると思いますが、サプリメントは人類がこれまでに一度の摂取量で経験したことのない量が含まれている可能性があります。それを吸収した場合、血中濃度が崩れ、ホルモンなどのバランスが崩れ、さらにはホメオスタシスが崩れる結果を招く可能性があります。

ホメオスタシスには腎臓の働きは重要です。腎臓の主な役割は、カルシウムのバランスを保つために排泄と再吸収を行います。しかし、大量に吸収されたカルシウムを十分に排泄できるかは疑問です。

骨のためと思い、カルシウムサプリを摂取すると、余分なカルシウムはどこに行くのでしょうか?適度な量のカルシウムは骨に行くのかもしれませんし、一部は尿中に失われます。しかし、高カルシウム摂取が長期間続くと、余分なカルシウムは、骨ではなく、軟部組織や既に存在するアテローム性動脈硬化プラークに沈着する可能性があります。つまり、カルシウムサプリが動脈硬化、動脈および心臓弁の石灰化を促進している可能性があるのです。

カルシウムサプリは、ビタミンDの有無にかかわらず、心筋梗塞と脳卒中のリスク増加と関連しています。(ここ参照)

カルシウムサプリ摂取後は8時間にわたり血中のカルシウムが増加します。(ここ参照)これは食事からのカルシウムでは通常は起きないと思われます。正常な人の尿中カルシウム排泄は約4 mg/kg 体重/日に制限されているそうです。そうであるならば、腎臓は高カルシウム摂取中に高カルシウム血症を低下させる十分な能力を提供しません。腎機能が低下した高齢者などではさらにカルシウムの排泄が悪くなるでしょう。軽度の慢性腎臓病の人では血中のカルシウムが正常範囲でも摂取量と排泄量のバランスはプラスバランスとなるでしょう。余分なカルシウム は、動脈や心臓弁などに取り込まれるのではないかと思います。

以前の記事「カルシウムサプリメントによる大動脈弁の石灰化」で書いたように、カルシウムサプリは大動脈弁の石灰化のリスクを増加させる可能性があり、またマグネシウムのバランスが重要である可能性が高いと思います。

さらにカルシウムの増加は血液の凝固能を亢進させます。そうするとさらに血管に悪影響があります。(ここ参照)

何も考えず、骨に良いと思い、カルシウムサプリと摂っている人もいると思います。しかし、マグネシウムとのバランスを欠いた、そして急激に血中濃度の上がるサプリでカルシウムを摂取することは十分に注意した方が良いでしょう。

 

「Risk of high dietary calcium for arterial calcification in older adults」

「高齢者の動脈石灰化に対する高カルシウム食のリスク」(原文はここ

3 thoughts on “カルシウムサプリは骨には行かず血管を石灰化させるかもしれない

  1. カルシウム摂取で骨を強く、コンドロイチンやプロテオグリカンで軟膏再生、コラーゲンで美肌、ブルーベリーで視力、セサミンで若さ、マカで活力、、、
    イメージにすがって思わず購入してしまう、人間の性?

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      企業はお金儲けが目的なので、思わず買ってしまうように宣伝するのは当然でしょう。

  2. カルシウムサプリメントで効果があるかどうかわかりませんが、食品で多めに摂取する場合は、必ずビタミンK2(メナキノン)を一緒に摂取してください。
     これがカルシウムを骨や歯に運びます。
     これがないと、不要なところにカルシウムが運ばれて行ってしまいます。
     グラスフェッドの家畜の脂肪に含まれていますが、こんなものは手に入りませんし、日本には納豆があります。
     納豆にメナキノンが豊富に含まれています。 
     K1ではなく、K2です。
     骨を強くする、あるいは骨粗鬆症を防ぐ栄養素は、最低でもカルシウム、マグネシウム、ビタミンA、K2、D が必要です。
     Aは、コレステロールを多く含む食品です。

      参考書籍「VITAMIN K2 AND THE CALCIUM PARADOX」Rheame Bleue」

     それからビタミンDについて、悪く言わないでください。
     原料は、コレステロールですから。
     ビタミンDをサプリメントでとる場合にも、上の原則は当てはまります。K2を忘れないでください。

     なぜ年とともにコレステロールが増えるのか、考えてみました。それは骨を作り直すのに、ビタミンDが必要だから、と私は考えるようになりました。

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